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社会の裏側  作者: トビー
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7/59

手を引く

皆さん、小説の第7話へようこそ!

物語はさらに加速し、新たな展開へと突入していきます。張り巡らされた伏線と、これからの展開にどうぞご期待ください。

皆さん、読書をお楽しみください!コメント欄で皆さんの感想や予想をぜひシェアしてくださいね!

月の初めの太陽は、街の空を包み込む重苦しい灰色の雲の隙間から、ためらいがちに光を漏らしていた。外では、あと2日もすれば始まる公式の春休みを控えて、どこか浮き足立った空気が漂い始めている。しかし、若き捜査官ザック・レスターの部屋の中だけは、あの瞬間――検事の冷たくなった遺体を目撃したあの瞬間のまま、完全に時が止まっていた。


ザックはベッドの端に腰掛け、深い沈黙の中に沈んでいた。部屋は冷え切り、閉め切られたカーテンが昼の光を遮っている。時間の感覚などとうに失せていた。ただ虚空を見つめる彼の脳裏には、あの光景が何度も、幾度も不気味に再生され続けていた。フレドリックの血の気の引いた顔、荒らされた書斎、そして今なお鼻腔にへばりついて離れない、あの息詰まるような血の臭い。


その静寂を切り裂いたのは、スマートフォンの着信音だった。ザックは重い視線を画面に落とした。ジェフリーとアイザックからのビデオ通話だった。彼は言葉を発することなく、ただ受け入れボタンを押した。


画面に映し出されたジェフリーの後ろには、広大な邸宅の庭が広がっていた。彼は興奮気味に声を張り上げた。


「ザック! やっと出たな。前もって誘っておこうと思ってさ。あと2日したら5月の連休だろ? 俺とアイザックで別荘でパーティーの準備をしてるんだ。絶対に来いよ!」


アイザックがジェフリーから端末を取り上げ、少し落ち着いたトーンで続けた。


「おいでよ、ザック。この休みくらいは仕事から離れて、少し息抜きが必要だよ」


ザックはカメラに目を合わせようともせず、低く乾いた声で答えた。


「……忙しいんだ。この時期は、どうしても外せない用事がある」


ジェフリーは食い下がろうとした。


「おいおい、冗談だろ! 休みなんだから捜査局だって閉まるはずだ。言い訳はなしだぞ、お前は必ず――」


だが、その言葉が contractual に終わる前に、ザックは非情にも通話終了ボタンを押した。スマートフォンを放り出すと、誰に聞かせるでもなく、本心の混じった悔恨の念を呟いた。


「すまない……今日だけは、無理だ」


それから30分も経たないうちに、ドアを軽く叩く音が響いた。ザックは身動きひとつしなかったが、ドアはゆっくりと開かれ、リサが姿を現した。彼女の手には、焼き立てのフランスパンの香ばしい匂いを漂わせる紙袋が握られていた。彼女は努めて励ますような笑みを浮かべながら入ってきた。


「ここ数日、まともなものを食べてないでしょ。大好きなフランスパンを買ってきたの。友達の『ガムザ』の実家がモナコから戻ったばかりで、特別に作ってくれたのよ」


彼女は袋を近くのテーブルに置き、ザックの青白い顔を見つめながら近くの椅子に腰掛けた。そして、重苦しい空気を和らげるように、自身のプライベートな話を切り出した。


「昨日、また精神科の先生のところに行ってきたの。ストレスとの付き合い方が、少しずつ上手くなってきた気がする。本当に効果があるのよ、ザック」


ザックからは何の反応もなく、ただ蝋人形のように床を見つめ続けていた。リサはため息をつくと、本題へと静かに話を移した。


「あと2日したら、裁判所が5月の連休を記念して貸切ホールでパーティーを開くの。騒がしいものじゃなくて、同僚たちの落ち着いた集まりよ。あなたを誘おうと思って、早めに来たの。外に出れば、少しは気分転換になるわ」


「……でも、僕は裁判所の人間じゃない」


「私のパートナーとして一緒に行くのよ。裁判所で働いている必要なんてないわ。私の連れだって言えば十分よ」


ここで、ザックの視線がゆっくりと彼女へと動いた。その瞳には、困惑と不快感が入り混じった色が浮かんでおり、彼は彼女が聞いたこともないような鋭い口調で言い放った。


「おい、ちょっと待てよ」


「パーティーだって? 彼が亡くなってからまだ数日しか経っていないんだぞ。リサ……君は僕よりも前からフレドリックを知っていたはずだ。なのに、どうして今そんな席に行くなんて考えられるんだ?」


リサは狼狽して瞬きを繰り返し、自分の理屈を弁護しようとした。


「ザック、死は誰にでも訪れるものよ。私たちは最終的には彼の死を受け入れて進まなきゃいけない。人生は続いていくのよ」


ザックはベッドから立ち上がり、その瞳には深い失望の色が渦巻いていた。


「この街の他の誰からなら、そんな言葉を聞いても驚かなかったさ……。だけど、君からだけは聞きたくなかった」


彼はドアを指差し、押し殺した怒りを込めて続けた。


「僕はどこにも行かない。明後日のパーティーには一人で行くがいいさ。それか、あのブライデンとかいう男でも連れて行けばいい。とにかく、僕を一人にしてくれ」


リサの顔に明らかな不快感が走った。彼女は立ち上がり、非難と心配が入り混じった視線を彼に向けた後、出口へと向かった。そして、きっぱりとした口調で言った。


「あなたの状態、本当に酷いわよ、ザック。忠告しておくわ。一刻も早く精神科医に診てもらいなさい」


彼女はドアを激しく閉めて去っていった。部屋が静まり返った瞬間、ザックの血管に激しい怒りが駆け巡った。彼は拳で壁を強く殴りつけ、その鈍い音が部屋中に響き渡った。彼は荒い息を吐きながら、自分自身に鋭い声を浴びせた。


「精神科医に行けだと……ふざけるな! 僕の何を知っているっていうんだ! そんなものでどうにかなるか!」


彼は一歩後退し、壁に頭を預けて苦しげに呼吸を繰り返した。そして、疲れ果てたように力なく呟いた。


「すべてを忘れられたら、どれほど楽か……。だけど、忘れたくても……僕にはできないんだ」


彼が部屋の隅へと体を向けたその時、不意にその場で硬直した。


薄暗がりのなかに、二つの人影が並んで立っていたのだ。一人はあのフレドリックの最期の姿に酷似した、背中の曲がった男。そしてその隣には、あの不気味な背中の曲がった女。二人は無言で、恐ろしい沈黙を保ったまま彼を凝視していた。


ザックは慌てて反対側を向き、その光景から逃れるように強く目を閉じた。押し寄せる疲労感に身を任せ、眠りと忘却の世界へ逃げ込もうとベッドに横たわった。


しかし、その瞬間にポケットが激しく震えた。フェリックスからの着信だった。ザックは迷うことなく拒否ボタンを押し、スマートフォンを投げ出して無視しようとした。だが、数秒もしないうちに再び着信音が鳴り響き……それが何度も繰り返された。フェリックスは、ザックの孤独を追い詰めるかのように、執拗に電話をかけ続けていた。


ザックは深い苛立ちとともに、重い体をベッドから起こした。スマートフォンを拾い上げ、限界に達した冷たい声で応答した。


「……何だ、フェリックス」


受話器の向こうから、フェリックスの容赦ない叱責の声が響いた。


「どこにいるんだ、ザック! もう長いこと署に顔を出していないじゃないか。未解決の事件があり、俺たちの手で謎が解かれるのを待っている被害者がいることを忘れたわけじゃないだろうな?」


ザックは深く息を吸い込み、決然とした言葉を口にした。


「僕は、あの事件から手を引く」


回線の向こうで一瞬の静寂が流れた後、フェリックスの信じられないといった叫び声が爆発した。


「何だと!? 突然何を言い出すんだ! 降りるだと? 待て……お前は今どこにいる? 場所を言え、今すぐ行って顔を見て話す!」


ザックにはもう、議論を交わす気力など残っていなかった。「ザック? おいザック、聞いてるのか!」というフェリックスの声を遮るように、ザックの指は機械的に通話終了ボタンを押し、繋がりを完全に断ち切った。


同じ頃、街の反対側にある雑然としたアパートの一室では、ジェルメインが開いたバックパックの前に立っていた。そのバッグの中には重要なものなど何一つなく、代わりに彼は自分の服やマンガ雑誌を慌ただしく放り込んでいた。このうらぶれた家での生活も、ついに終わりを迎えたのだ。


ドアが開き、濃い色のコートをまとった二人の男が入ってきた。一人が部屋の中央へと歩み寄り、冷やかすような笑みを浮かべて言った。


「荷造りに手間取っているようだな、ハリー」


ジェルメインは激しい怒りを燃やして彼らを振り返り、奥歯を噛み締めながら怒鳴り散らした。


「ここでその名前を呼ぶんじゃねえ、このクソ野郎が! 俺はついに自分の二つ名を手に入れたんだ。そっちで呼べ! 分かったか!」


もう一人の男が一歩下がり、おどけたように両手を上げて薄笑いを浮かべた。


「悪かった、悪かったよ……『暴食(グラトニー)』。さあ、早くここを離れようぜ。『傲慢(プライド)』様がお待ちかねだ」


ジェルメインはマンガできちきちになったバッグを乱暴に閉め、それを手に取ってドアへと向かいながら、特異な口調で不満を漏らした。


「クソッタレな仕事だぜ……おかげで腹が減って仕方がない。おさらばする前に、マッシュポテトでも腹いっぱい食いたかったもんだ」


三人は部屋を出て、後ろのドアを固く閉ざした。残されたアパートの部屋は、完全に空っぽになっていた。



皆さん、第7話はいかがでしたでしょうか?

物語の続きがますます気になる展開になってきましたね。これからどんな運命が待ち受けているのか、ぜひご期待ください!

今回のエピソードについての感想や、今後の展開予想をコメント欄で教えていただけると嬉しいです。

それでは、次回の第8話もお楽しみに!またお会いしましょう!

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