↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社会の裏側  作者: トビー
PR
56/59

ポリトス・エイドリスの旅立ち ― イサクの勝利

第56話を読みに来てくださって、ありがとうございます!


今回もここまで読んでくださった皆さん、本当にありがとうございます。

いよいよ物語も少しずつ大きく動き始めました。


それでは、第56話をどうぞ!

最後まで楽しんでいただけたら嬉しいです。

翌日、朝は冷たく、空もどこか灰色がかっていた。


ポリトス・エイドリスは、飛行機に乗り込もうとする直前で足を止め、振り返ると、空港をしばらくじっと見つめた。この日、南アフリカへ向かう最初の便だった。


彼は目を閉じると、そのまま機内へと入っていった。席に座り、ワイヤレスイヤホンを耳につける。やがて飛行機のドアが閉まり、しばらくすると機体はゆっくりと離陸した。


ポリトスは窓の外を眺め続けていた。眼下に広がる地上が、少しずつ、少しずつ、自分から遠ざかっていくのを、ただ静かに見つめていた。


「うああああああ……!」


突然目を見開き、ザックはベッドから勢いよく起き上がった。シャツは汗で身体に張りついており、乱れた呼吸を何度か繰り返したあと、彼は浴室へ向かった。軽くシャワーを浴びると、温かいミルクを一杯用意した。


「よし……悪いな、俺の大切なスーツ」


ザックは仕方なく、いつものフォーマルな服装を変えることにした。代わりに、黒く粗い質感のコートに濃い黒色のゆったりとしたズボンを合わせ、さらに黒いウールの手袋を身につける。普段とは明らかに違う服装だった。


「これで最後の仕上げだ!」


真ん中で分け、両側へ流していた黒髪を帽子の中へ収めるように、ザックは黒いウールの帽子をかぶった。帽子は彼の髪全体だけでなく、耳までしっかりと覆っている。それでも、帽子の下から短い髪を二束だけ垂らし、右側に一束、左側に一束と残した。


「これでいい」


「よし……まだハリーから『プライド』についての情報は手に入ってない……今はクラトロス・アーチェリーだけに集中しないとな」


ザックの声ははっきりと大きくなり、そのまま続けた。


「なら……次に俺が向かう場所は、裁判所だ」


ザックは裁判所の大理石の階段を、速く、それでいて一定のリズムを崩すことなく上っていた。その間も、彼の目はあちこちへと動き続けていた。


やがてリサの部屋までたどり着くと、ザックは扉をノックしてから中へ入った。


「リサ……どうだ、何か進展はあったか?」


リサは椅子から立ち上がると、手にしていた書類を机の上に置いた。


「ザック? どうしてここに?」


二人は短く抱き合って挨拶を交わしたあと、リサの机を挟むようにして、それぞれ腰を下ろした。


「なあ……ここにコーヒーを一杯頼めるか?……俺はミルクのほうが好きなんだけど、仕方ないよな……ここじゃ出してないって分かってるし」


リサは携帯電話を手に取り、職員用の注文窓口へ電話をかけた。ほんの少しすると、職員が一人、コーヒーを二杯持って部屋までやって来た。


二人はそれぞれ自分のカップを手に取った。


「ザック? その格好、どうしたの?……というか……服装を変えたのね。でも、正直、私は好きよ……その……二本の髪の束……それがあるだけで、他の人とは違って見えるもの……というか、ウールの帽子をかぶってる人なんて、ほかにもいるでしょう?」


そう言いながら、リサは額に手を当て、ザックのどこか奇妙な格好を真似するような仕草をした。


「はあ? ははは、まあ……たまには服装を変えてもいいだろ……そもそも今日は寒いからな、なあ……あ……いや、リサ」


二人が会話を続けている間も、ザックの意識はその会話に向いていなかった。開いた扉の向こうに見える廊下へと視線を向け、職員たちが何度も行き来する様子をじっと目で追っていた。


だが、彼が探しているものは、まだ見つかっていなかった。


ジェフリーは、まるでまだ眠りから完全には覚めきっていないかのように、ひどくゆっくりと目を開けた。部屋の近くから騒々しい音が響いており、特にその音が聞こえてくるのはキッチンからだった。無秩序な音楽に混じって、油がパチパチとはねる音まで聞こえてくる。


ジェフリーはベッドから起き上がると、ほとんど無意識のうちにキッチンへ向かった。そこではハリーがジャガイモを揚げており、その隅では フィールド 自慰をする 一方、シャギーは静かに座り、投稿を眺めながら、その閲覧数が少しずつ増えていくのを見ていた。その間も、電子タバコを吸い続けている。


「はああああああ?」


三人の姿を目にした瞬間、ジェフリーの目が大きく見開かれた。彼はすぐにキッチンから出ていくと、浴室へ向かって身体を洗い、別のジャージに着替えてから、再びキッチンへ戻ってきた。


そして音楽を止めると、シャギーの首の後ろを掴んだ。


「はあ? おい……離せよ、痛いって!」


ハリーは何もせず、ただ起きていることを眺めていた。

一方、フィールドは介入しなかった。「おおっ、おおっ」彼は絶頂に達しようとしていた

しかし、ジェフリーはフィールドの首の後ろも掴むと、二人まとめてキッチンの外へ連れ出した。

「おい……何やってんだよ? 俺たちを放せ、このクソ酔っぱらい!」

二人はいつものように、身体を無茶苦茶に動かしながら悪態をつくだけで、起きていることに対してまともな反応を示すことすらできなかった。

その朝三度目となるキッチンへジェフが戻ってくると、彼はハリーに尋ねた。

「料理は終わったか?」

ハリーは三皿のフライドポテトを両手に抱え、ふらつきながら、ゆっくりと歩いていた。

「うん、終わった……お前の人生で一番うまいガーリックフライドポテトだぞ……でも、見てのとおり三皿ある……一皿は俺、一皿はシャギー、一皿はフィールド……だから、お前はその匂いだけ楽しんでくれ」

ハリーはそのままゆっくりと歩き続け、部屋へたどり着いた。

「はあ?」

そこでは、二人の仲間が同じベッドの脚に縛りつけられていた。

「ハリー……ポテトを一皿くれ……ここに置いてくれ」

フィールドの顔には、もう我慢の色など微塵もなかった。ロープは彼の腰とベッドの骨組みをつないでおり、そのため手足を動かすことはできた。シャギーも同じ状態だった。

ハリーはフィールドの皿を彼の近くに置き、それからシャギーの皿もそばに置くと、自分も床に座り込み、そのまま食べ始めた。

「昨日……お前ら、俺の酒を飲んだだろ……別に何かするつもりはない……でも、俺はまた一本買ってくる。もし俺が正気に戻ったとき、それが空になってたら……後悔することになるぞ」

ジェフリーの言葉は、三人にとってまるで雷が落ちたような衝撃だった。ジェフが彼らの前でここまで真剣な態度を見せたのは、これが初めてだった。

「おい……もし、お前が自分で気づかないうちに全部飲み切ってたらどうする? つまり、お前が酔っぱらって何も気づかないまま飲み切ったってことだ……俺たちが飲み切ったのか、それともお前自身が飲み切ったのか、どうやって分かるんだ?」

フィールドの質問には筋が通っていた。起こり得る一つの可能性を想定しているのだ。

しかし、ジェフリーの答えは、その議論を終わらせた。

「俺は一本を飲み切ることはない……毎日……ある程度の量を飲むと意識を失うんだ……だから、俺の酒に誰かが手をつけたかどうかくらいは分かる」

フィールドもハリーもシャギーも、なぜ自分たちが今こんな目に遭っているのか、その理由が分からなかった。彼らにできるのは反抗することくらいだったが、それを口に出そうとしたのは、シャギーがようやく声を上げたときだった。

「おい……なんで俺たちを縛ってるんだ?……なんか、俺たち囚人みたいじゃないか」

ジェフはためらうことなく答えた。

「お前ら……うるさいんだよ!」

三人の顔に、一斉に不満の色が浮かんだ。

その一方で、ハリーは食事を終えた。

「酒、また買うのか?……っていうか、昨日と同じやつ?」

ジェフは一言も答えず、ハリーのほうへ振り向いた。

「それ、ものすごくまずいぞ……何がそんなに気に入ってるのか分からないけど……まあ、いい。お前の酒なんて完全に忘れさせてくれるものを、俺は知ってる……頭の上から激辛ソースをぶっかけられたみたいな感じだ……別の次元に浮かんでいくような感覚になるぞ……ポテトを食いながら、そのまま浮かぶんだ。想像してみろよ!」

その言葉を聞いたジェフの表情は、本人にも理由が分からないまま、少しずつ和らいでいった。

彼はしばらく黙っていたが、やがて小さな声で尋ねた。

「……それは何だ?」

ハリーとシャギーの顔には大きな笑みが浮かんだ。一方、フィールドは眉をひそめ、苛立ったように息を吐いた。

そしてハリーが答えた。

「いいぞ……まず、俺の友達を解放して」

その瞬間、フィールドが立ち上がると、身体に巻きついていたロープが床へ落ちた。どうやら、すでにロープをほどいていたらしい。


「はあ? どうやって……?」


フィールドは少しだけ笑うと、彼に答えた。


「トポロジーだ……ドキュメンタリー番組から得た知識を甘く見るなよ!」


そう言うと、フィールドは自分のロープをほどいたのと同じように、今度はシャギーのところへ真っ直ぐ向かい、彼のロープもほどこうとした。その一方で、ハリーはフィールドの皿を手に取ると、その中身を食べ始めた。


ザックはリサとともに、長く続く大理石の階段を下りてカフェテリアへ向かった。二人は同じテーブルに腰を下ろし、リサがウェイターと話している間も、ザックの視線はあちこちへと動き続けていた。ほどなくして料理が運ばれてくると、二人はそれぞれゆっくりと食事を始めた。


「リサ……クラトロス・アーチェリーのこと、覚えてるか?」


食事中にする質問としては、少し唐突だったのかもしれない。それでもリサは姿勢を正すと、ザックに答えた。


「もちろん……検察官よ。ここでかなり長く働いている人ね」


「どこにいる? 今日はまだ見かけてないんだ」


「はあ? 私が知るわけないでしょ?……あの人はかなり上の立場の検察官だから、今は何かの事件を担当してるのかもしれないわ。あなたも知ってるでしょうけど、あの人は私の依頼人の事件を担当している検察官でもあるのよ。たぶん今は、アスコ・マイコタの事件を調べてるんじゃないかしら……でも、何も立証できないでしょうね。少なくとも、そう願ってるわ。私のほうも、事件について少し進展があったの。裁判である人物を証人として呼ぶつもりで、もう訴えも起こしてあるわ。その人が真実を話してくれれば、私たちにとってかなり大きな助けになる」


ザックの目が突然大きく見開かれた。


その瞬間、クラトロスが大理石の階段を下りてきた。髪は完璧に後ろへ撫でつけられており、拳を固く握りしめたまま、ザックをじっと見つめながら、ゆっくりと歩いていた。やがてウェイターを抱きしめて挨拶を交わすと、そのままテーブルの椅子に腰を下ろし、料理が運ばれてくるよりも前に、テーブルの上へ金を置いた。


「あり得ない!……この男が……殺人犯だって?」

最後まで第56話を読んでくださって、本当にありがとうございました!


ここまで物語を追いかけてくださっている皆さんには、心から感謝しています。

もし少しでも「続きが気になる」「これからも読んでみたい」と思っていただけたなら、ぜひお気に入りに追加していただけると嬉しいです。


そして、よかったら感想やレビューも残していってください。

皆さんからいただく言葉は、これからもこの物語を書き続けていくための大きな力になります。


この物語をここまで読んでくださったこと、そして出会ってくださったことに、本当に感謝しています。

これからも一緒に、この物語の続きを見届けていただけたら嬉しいです。


それでは、また次の話でお会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。