剣の最期
皆さん、こんにちは!
そして、今回も読みに来てくださってありがとうございます!
少しずつ物語が大きく動き始めました。
それでは、第35話をどうぞ!
ザックはベッドの上で深い眠りに落ちていた。
あまりの疲労に、まるで外界から完全に切り離されたかのように、深い夢の中へ沈み込んでいる。
しかし、隣のテーブルに置かれた携帯電話だけは、彼を放っておかなかった。
何度も何度も、絶え間なく振動し、着信音を鳴らし続けている。
画面には、発信者の名前が大きく表示されていた。
――フェリックス。
携帯電話は何度も鳴り続け、その振動によって磨かれたテーブルの上を少しずつ移動していく。
そしてついに、端から滑り落ち――
ドサッ。
鈍い音を立てて床へ落下した。
一方その頃。
大勢の客で賑わうカジノの中。
ざわめき声と、あちこちから聞こえてくるチップの音が響く中、ジェイソンは重々しくも自信に満ちた足取りで店内へ入っていった。
そのまま一つのテーブルへ向かい、そこに座っていた二人の男の隣へ腰を下ろす。
一人の男がカードを配りながら口を開いた。
「それじゃあ……始めるか?」
ジェイソンは背もたれに身を預け、余裕のある表情で答えた。
「いいだろう……今日は一勝負だけ付き合おう。こんな素晴らしい日だ、風も暖かくて気分が高揚する……。だが、一回だけだ。ここで誰かを待っているからな」
もう一人の男が気軽に答える。
「はいはい……分かったよ。お前の好きにしな」
こうして、三人の間でカードゲームが始まった。
三人はそれぞれの手札を慎重に確認し、次の手を警戒しながら、ゲームに没頭していく。
だが、そのテーブルから少し離れた場所――同じカジノの、ほんの数卓先。
そこには、バジディオが無言で座っていた。
緑色の瞳が、周囲の様子を正確に追っている。
彼はいつもの「ウィンストン」の煙草を一本取り出して火をつけると、深く煙を吸い込みながら、標的から一度も視線を外さなかった。
その頃。
ロジャーは学校へ戻り、いつもの教室へ静かな足取りで入っていった。
彼が入ってきたことに気づいた教師が振り返る。
「おお、ロジャー……しばらく学校に来ていなかったな」
ロジャーは自分の席へ向かい、椅子の上に鞄を置くと、小さな声で答えた。
「……喪に服していただけです」
教師は事情を察したように頷き、彼の状況を理解する。
そして黒板へ向き直ると、授業を始めた。
しかし、ロジャーの意識は授業には向いていなかった。
視線は教室の右側へと向けられている。
そこには、彼が以前から気になっていた、あの話すことのできない少女が座っていた。
彼女は小さなノートを開き、ペンを手にして、教師の説明を書き留めている。
ロジャーは一瞬たりとも彼女から目を離さなかった。
その仕草の一つ一つを、じっと見つめている。
やがて教師が、彼の様子に気づいた。
「ロジャー?……ロジャー!」
しかし、ロジャーには周囲の声など届いていなかった。
彼の意識は、少女の一つ一つの仕草を見つめ、分析することに集中していた。
その瞬間――
少女がこちらへ視線を向けた。
そして、彼女だけではなかった。
教室にいる全員が、好奇心に満ちた目でロジャーを見つめていた。
後ろの席に座っている生徒たちまでもが、彼へ視線を向けている。
「――っ!」
ロジャーは椅子の上で飛び上がるように身を震わせた。
顔は瞬く間に赤く染まり、何が起きているのか理解しようと必死になる。
教師はペンを置き、不思議そうに彼を見つめた。
「ロジャー……どうした?」
ロジャーは慌てて俯き、どもりながら答えた。
「ぼ、僕がぼんやりしていただけです……すみません、先生」
その頃、同じく賑わいに包まれたカジノでは――
ジェイソンが腕時計へ素早く目をやった。
向かいに座る男がカードを切っている中、ジェイソンは椅子を後ろへ引きながら静かに告げる。
「トイレへ行ってくる。少しだけ待っていてくれ」
二人の男は了承するように頷いた。
ジェイソンは立ち上がり、自信に満ちた足取りでトイレへ向かっていく。
その姿を、バジディオは見逃さなかった。
彼はすぐさま煙草を近くの灰皿へ押し消すと、立ち上がる。
そして、一定の距離を保ちながら、慎重にジェイソンの後を追った。
ジェイソンがトイレへ入ると、焦れたようにソープディスペンサーの前へ立った。
そして携帯電話を取り出し、先ほどの謎めいた番号へ再び電話をかける。
一度。
そして、二度。
しかし――返事はない。
その瞬間。
トイレの扉が開き、バジディオが中へ入ってきた。
そして、静かに扉を閉める。
ジェイソンは携帯電話に意識を向けていたため、しばらくその存在に気づかなかった。
だが、ふと顔を上げる。
そこには、バジディオが立っていた。
一言も発さず、瞬きすらせず、冷たい視線をジェイソンへ向けている。
ジェイソンは苛立ったように携帯電話をポケットへ戻した。
「はあ……? 何だよ、お前。そんなにじろじろ見るなよ」
バジディオは何も答えない。
冷たい視線も変わらない。
そして、ゆっくりと手をスーツのポケットへ入れ――
いつもの灰色の拳銃を取り出した。
「……は?」
拳銃を目にした瞬間、ジェイソンは反射的にバジディオへ飛びかかった。
長年培った格闘技の動きを駆使し、一瞬で相手の隙を突こうとする。
だが――
バジディオのほうが速かった。
パンッ!
乾いた銃声が一発、トイレの中に響き渡った。
放たれた銃弾は、ジェイソンの頭部へ真っ直ぐ向かっていった。
ジェイソンはその場に倒れ、動かなくなった。
バジディオはゆっくりと拳銃をしまう。
そして、何事もなかったかのように、素早く、そして慎重にトイレから立ち去っていった。
そこにはただ――
「剣」と呼ばれていた男、ジェイソンだけが残されていた。
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