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社会の裏側  作者: トビー
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33/59

「剣」の正体

第33話を読みに来てくださって、ありがとうございます!

少しお休みしてしまいましたが、短い休暇を過ごしていました。

待っていてくださった皆さん、本当にありがとうございます。

それでは、第33話をどうぞ!

深い闇が静かなリズバーンの街を包み込んでいた。


その街は、喧騒に満ちたベルファストとはまるで異なる、素朴でどこか田舎めいた雰囲気を漂わせている。冷たい風が人のいない通りを吹き抜けていく。


それは、ザックにとって探偵としての人生で、間違いなく最も重要で、そして最高の夜だった。


家の中では、フェリックスが古びたソファに横たわっていた。

決して寝心地の良いものではなかったが、それでも彼は子供のように深い眠りに落ちており、大きないびきが室内いっぱいに響き渡っていた。


しかし、その音がザックの集中を乱すことはなかった。


ザックは目の前に積み上げられた大量のファイルに没頭していた。

徹夜と疲労の色が青白い顔にはっきりと浮かんでいたが、それでも彼は一瞬たりとも手を止めることなく、できる限り多くの青いファイルに目を通し続けていた。


また一冊のファイルをゆっくりと読み終える。


ザックは冷めたコーヒーを一口飲み、リストから新たなファイルを手に取った。


そして、それを開き、最初のページに目を通した瞬間――


その瞳が、驚愕に大きく見開かれた。


まるで頭を雷に打ち抜かれたかのように、呼吸が止まる。


これは単なる推測でも、一瞬の記憶の蘇りでもない。


それよりも、はるかに奇妙で衝撃的なものだった。


ザックは咄嗟に口元を手で覆い、震える小さな声で呟いた。


「あり得ない……ミスター……ジェイソン……!?」


疲労に満ちていた彼の顔に、衝撃と不安、そして困惑が入り混じる。


ザックはファイルの内容と添付された資料を何度も何度も確認した。


間違いない。


そこに記されている人物は、確かに彼だった。


記憶と過去の出来事が、ザックの脳裏を次々と駆け巡る。


かつて自分に武術と護身術の基本を教えてくれた男。


その男こそが、フレデリック氏によって「C級」のリストに分類された犯罪者だった。


その事実を、ザックの頭はどうしても理解し、信じることができなかった。




朝日が街を照らし始め、近くの農場から雄鶏の鳴き声が聞こえてくる。


それは、新たな一日の始まりを告げる自然な目覚まし時計のようだった。


刑務所内にある狭い面会室では、ブリオロトスが静かに座って誰かを待っていた。


やがて、疲れ切った体を引きずるようにしてアスコが部屋へ入ってくる。


彼は向かいの椅子に腰を下ろした。


二人の間には、面会者と囚人を隔てる鉄格子が立ちはだかっている。


ブリオロトスは彼を見つめながら微笑み、自信に満ちた口調で言った。


「ようやくここに入ることができたよ。聞いた話じゃ、君と同じ姓を名乗っていない人間は面会できないらしいな。警察や探偵なんかは別らしいが」


アスコは冷たい、乾いた口調で答えた。


「来る必要なんてなかった、ブリオロトス。俺はお前に何も求めていない」


ブリオロトスは驚いたように眉を上げた。


「何だ? 赤の他人からそんなことを言われても驚かないが、お前から言われるとな……。まあいい。ここで大丈夫なのか? それだけ教えてくれ。俺はお前のためなら何だってするつもりだ」


アスコはため息をつき、真っ直ぐ彼を見つめた。


「ブリオロトス……本当に俺を助けたいと思っているのなら……」


アスコが言い終えるより先に、ブリオロトスが抑えきれない興奮を滲ませて口を挟んだ。


「すぐに言ってくれ。遠慮するな!」


アスコは真剣な表情で彼を見据えた。


「ザック・レスター。あいつについて、もっと詳しく調べてほしい。そして、あいつが善人なのか悪人なのか教えてくれ。探偵として働いていることは知っている。あいつが腐敗した人間なのかどうか、それだけでも確かめてくれ」


ブリオロトスは頷き、口元に薄い笑みを浮かべた。


「ザック・レスター、か……。分かった。すぐに部下の一人を使って調べさせよう。そんなに難しいことじゃない」




ザックはリズバーンから戻ったフェリックスの車を降りた。


フェリックスは窓を下ろし、声をかける。


「気をつけろよ、ザック。また後で署で会おう」


今回の長い夜のせいで、ザックの目の下にはいつもの隈が以前にも増して濃く刻まれていた。


一睡もせず、青いファイルを読み続け、調べ続けたのだ。


それでも、彼は相棒の言葉を無視することなく、疲れ切った小さな声で答えた。


「ああ……また後で」


フェリックスの車が停まったのは、ザックの家の前ではなかった。


そこは、かつてザックが通い、鍛錬を積んでいた古い武術道場の近くだった。


ザックはゆっくりと、しかし確かな足取りで歩き始める。


青白い顔に浮かんだ視線は、真っ直ぐ前方へ向けられていた。


外の扉を押し開け、中へ入る。


男たちの低い掛け声や、稽古中の叫び声が辺りに響き渡っていた。


しかし、ザックはそれらに一切目を向けなかった。


そのまま真っ直ぐ歩き、目的の事務室へ続く階段を下りていく。


今回は、扉をノックすることさえしなかった。


そのまま押し開け、中へ入る。


そこにはジェイソンがいた。


彼は窓のそばに立ち、外の景色を眺めていた。


金色の朝日が差し込み、事務室の一角を明るく照らしている。


ジェイソンは振り返り、微笑んだ。


「おお……ザック! ずいぶん久しぶりじゃないか。悪いな、まるで君が忙しかった理由を知らないみたいな言い方をしてしまった。ところで……どうした? ずいぶん疲れているように見えるぞ。それどころか、完全に疲れ切っているじゃないか!」


ザックは黙ったまま立ち尽くし、鋭い視線でジェイソンを見つめていた。


まるで、彼の一挙手一投足を分析しているかのようだった。


ジェイソンは再び通りへ視線を向けながら話を続ける。


「こんな素晴らしい日に疲れている必要なんてないだろう? ほら、見てみろ。明るい日差しに、暖かな風、それに太陽の光が……」


ジェイソンは深く息を吸い込み、穏やかな口調で言葉を続けた。


「俺まで高揚した気分になる。……ほら、リラックスしろ。温かいミルクでも頼んでやろう。それから君は風呂に入って休め。何時間も眠っていないんじゃないか?」


ザックは沈黙を破った。


その言葉は、まるで真っ直ぐ突き刺さる矢のようだった。


「今の俺は、あんたをどう呼べばいいのか分からないんだ……。『師匠ジェイソン』と呼ぶべきなのか……それとも、『剣のジェイソン』と呼ぶべきなのか?」


その異名を聞いた瞬間、ジェイソンの目が大きく見開かれた。


無邪気な笑みが消え、その代わりに謎めいた笑みが浮かぶ。


そして、穏やかな口調で言った。


「そうか……真実を知ったんだな。それなら驚くこともない。昔から君には、頑固で優秀な探偵としての素質を感じていたよ」


ザックは感情を一切見せず、真剣な声で答えた。


「心配するな……あんたを警察に引き渡すつもりはない。少なくとも今はな。だが、昔あんたが俺に攻撃と防御の基本を教えてくれた、あの日々のために……それだけのために、教えてくれ。あの犯罪組織について、あんたが知っていることを」


ジェイソンはしばらく黙った。


やがて小さく笑ったが、その笑いはすぐに消え、再び厳しい表情へと戻る。


「悪かったな。……分かった、ザック。明日ここへ来い。俺が知っていることを教えてやる。だが……」


ジェイソンは一拍置いて、静かに続けた。


「君は決して俺を警察に引き渡さない。今も……そしてこれからもな」


その答えは、捜査にとって大きな収穫であり、非常に価値のある情報だった。


それでも、ザックの顔には安堵も満足も一切浮かばなかった。


彼は重い足取りで振り返り、その場を足早に立ち去っていく。


後には、窓の外を見つめ続けるジェイソンだけが残された。




ジェイソンはその窓の前に立ち続け、遠ざかっていくザックの姿を目で追っていた。


疲れ切った足取りで道の向こうへ去っていく、その背中を。


やがて、穏やかだった彼の威厳が消え失せる。


その顔には、狡猾さと悪意に満ちた大きな笑みが浮かび上がった。


ジェイソンはスポーツジャケットのポケットに手を入れ、携帯電話を取り出した。


そして、特定の番号をゆっくりと押していく。


数秒後、電話の向こうから警戒心に満ちた声が返ってきた。


「誰だ?」


ジェイソンの笑みがさらに大きくなる。


そして、取引を持ちかけるような、どこか詐欺師めいた口調で言った。


「俺だ。『剣』だ。ちょっと重要な知らせがあってな。さっき俺の隠れ家に、頭の切れる探偵が訪ねてきたんだ。……いや、『勤勉な探偵』とでも言うべきかな。どうやら、俺たちの世界や、その上にいる連中について少し知りたがっているらしい」


ジェイソンは楽しそうに笑った。


「だが、俺のことはよく知っているだろ? 俺はケチな男じゃない。とはいえ、金を払ってくれるなら、口を閉ざして質問に答えないことを考えてやってもいい。たいした額は要求しないさ。ただ、ほんの少しでいい」


電話の向こうから、威厳と重圧を感じさせる低い声が返ってきた。


「金を払えと? いくら欲しい?」


ジェイソンは迷うことなく、顎を撫でながら答えた。


「車を買い替えたいんだ。できれば……高級なオープンカーが買えるくらいの金額が欲しい」


相手は断固とした口調で答えた。


「分かった。少ししたらカジノへ行け。そこで金を受け取れ」


ジェイソンの顔がぱっと明るくなった。


そして、偽りの感謝を込めた声で答える。


「ありがとう、ありがとう。あ――」


しかし、最後まで言い終える前に、電話は突然切られた。


ジェイソンは携帯電話を手にしたまま立ち尽くす。


そして、その笑みはますます大きくなっていった。

第33話を最後まで読んでくださって、ありがとうございました!

もし今回の話を楽しんでいただけたら、ぜひお気に入り登録や感想をお願いします!

皆さんの応援が、執筆の大きな励みになります。

それでは、また次の話でお会いしましょう!

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