フレデリックの秘密
皆さん、こんにちは!
第31話を読んでいただき、ありがとうございます!
今回もザックたちの捜査は続きます。
フレデリックの家に隠された秘密とは一体何なのか……?
それでは、第31話をどうぞ!
「リズバーン」の街。
ザックとフェリックスは、ゆっくりと慎重な足取りで階段を下り、地下階へと向かっていた。
ホールの中央では、フォーマルなスーツを着た男が興味深そうに辺りを見回しながら歩き回っていた。二人の存在には、まだまったく気づいていない。
その瞬間――。
フェリックスが背後から男に襲いかかった。
一瞬だった。
男が何が起きたのか理解する暇も、身動きする暇もなかった。気づけば、フェリックスによって完全に拘束され、身動き一つ取れない状態にされていた。
ザックはただ呆然とし、何も言わずにその一瞬の出来事を見つめていた。
フェリックスは鋭く、威圧的な声を浴びせる。
「誰にここへ送り込まれた?」
男は苦しそうに身をよじりながら叫んだ。
「離せ! 痛いんだよ!」
ザックが二歩ほど前へ出る。
そして真剣な表情で男に近づくと、口を開いた。
「おい……そこの太ったおっさん。この家に何をしに来た?」
フェリックスに拘束されたまま、男は怒鳴り返した。
「ただ家を見に来ただけだ! お前たちはいつも好き勝手に人の家へ出入りするのか? 訴えてやるぞ!」
二人は男の言葉に困惑した。
フェリックスが怪訝そうに尋ねる。
「お前、この物件の所有者なのか?」
「はぁ? 違う。俺はロスラ夫人の隣人だ! だからって、黙って見ているつもりはないぞ……もうこんな騒ぎにはうんざりなんだ!」
ザックがすぐさま口を挟んだ。
「おい、待て! 何を言ってるんだ? ロスラ? それに、俺たちにうんざりしてるって……。俺たちはここに来たのは今日が初めてだぞ!」
男は苛立った様子で言い返す。
「ふざけるな! お前たちはいつもここへ来て、好き勝手に騒ぎを起こしてるじゃないか!」
その言葉を聞いたザックは、ポケットから捜査官証を取り出し、男へしっかりと見せた。
「分かった。よく聞け。俺はザック・レスター。この家の持ち主であるフレデリック氏の殺人事件を捜査している。ここへ来たのは証拠を探すためだ。それ以上でも、それ以下でもない。そしてもう一度言うが、ここを訪れるのは今日が初めてだ」
男の表情から徐々に怒りが消えていく。
代わりに、驚きが浮かび上がった。
「なるほど……あんた、刑事なのか!」
フェリックスは男を拘束していた手を離し、自由にさせた。
そして腕を組みながら、何気ない口調で言った。
「よし。それじゃあ……『レックス流』の尋問を始めるとするか」
それからしばらくして――。
三人は応接室に腰を下ろしていた。
隣人の男は、フェリックスに強く掴まれていた腕を少し痛そうにさすっている。
そんな彼に、ザックが申し訳なさそうに口を開いた。
「さっきは本当に悪かった。できれば協力してほしい。この家と、その持ち主について知っていることを全部教えてくれないか?」
男は腕を伸ばしながら姿勢を正した。
「それが正義のためになるっていうなら……もちろん構わない」
男は椅子に深くもたれ、ため息をついた。
「ここには昔から、何人もの男が来てたんだ。ドアを壊して、ロスラ夫人の所有するこの家に勝手に入り込んで、好き放題してた。今月の初めだけでも三回くらい来てたな。それからは来なくなったが……また戻ってきても俺は驚かない。結局、俺みたいな年寄りに、ああいう連中の行動なんて予測できるわけがないからな」
ザックは男の話を注意深く聞いていた。
そして、その目をまっすぐ見つめながら静かに尋ねる。
「さっきから何度も『ロスラ』って名前を出してるな……。そのロスラって、一体誰なんだ?」
男は質問の意味が分からないとでも言うように目を丸くした。
短い沈黙の後、答える。
「ロスラ夫人はフレデリック氏の妻だ……。少なくとも、この家では彼のパートナーだった。まあ、そんなところだ」
その言葉を聞いた瞬間――。
ザックとフェリックスの表情が凍りついた。
二人とも、驚きを隠しきれない。
フェリックスが鋭い声で問い詰める。
「何を言ってるんだ!? フレデリックには妻も家族もいたんだぞ! 根拠もなくそんなことを言うな。大きな問題になるぞ!」
隣人は落ち着いた様子で答えた。
「俺だって、あいつが結婚していて息子がいることくらい知ってるさ。ただ、その息子はまだ戻ってきてない。きっと向こうで元気にやってるんだろうな……。名前は何だったかな?」
男は少し考え込む。
「ああ……そうだ! トーパーだ。やっと思い出した」
ザックはこれ以上待っていられなかった。
椅子から立ち上がると、すぐさま階段を駆け上がっていく。
その場に残された隣人へ、フェリックスが厳しい口調で問い続けた。
「その『トーパー』っていうのは誰だ? お前は一体、何の話をしてる?」
その時だった。
ザックが戻ってきた。
その手には、先ほど見つけた古びた写真が握られている。
ザックは写真を男の顔のすぐ近くまで持っていき、尋ねた。
「この女がロスラか?」
写真を見た瞬間、男の真剣だった表情が、自然な笑顔へと変わった。
「おお……! なんて凄い刑事なんだ、あんたは! こんな写真をよく見つけたな! そうだ。間違いなくロスラだ。フレデリック氏と一緒に写ってる。まあ、少し古い写真だけどな」
ザックの顔に浮かんだ衝撃は、フェリックスのものよりもさらに深かった。
フェリックスは、さらに矢継ぎ早に質問を重ねる。
「二人はここにどれくらい住んでいた? それから、あの男たちは何のためにここへ来ていた? 彼女の息子――トーパーとかいう男はどこにいる? それと、ロスラ本人は今どこにいる?」
男は両手をゆっくり上げ、困ったように答えた。
「まあまあ、落ち着いてくれ、警官さん! 二人がここに住んでいたのはかなり昔からだ。十五年くらいになるんじゃないか? 俺がこの辺りに引っ越してくるより前から、二人はここに住んでたくらいだからな」
男は一度言葉を切り、続けた。
「二つ目の質問だが、あの男たちが何のために来ていたのかは、もちろん俺にも分からない。ただ、あいつらもお前と同じように、ロスラの居場所を聞いてきた。だが、俺は彼女がどこにいるのか知らない」
そして、最後の質問に答える。
「トーパーなら軍にいる。きっと向こうで楽しくやってるんじゃないか? あのやんちゃ坊主め」
新たな情報が一つ明らかになるたびに、二人の驚きはさらに深まっていった。
ザックはゆっくりと息を吐く。
「分かった……。協力してくれてありがとう。それと、さっき太ったなんて言って悪かった」
男は笑いながら立ち上がった。
「気にするな、坊主。まあ、あんたたちの目的が正当なものなら、俺はもう帰るとするよ。それじゃあな」
そう言って、老人は壊れた玄関を通って外へ出ていった。
残されたザックとフェリックス。
二人の間には、重苦しい沈黙が広がっていた。
そして――彼らは突然突きつけられた、新たな秘密と情報の渦に呑み込まれていた。
ザックとフェリックスは、太った隣人が残していった場所に、そのまま座り続けていた。
二人の顔には、困惑と驚愕がありありと浮かんでいる。
無理もない。
つい先ほど、事件とそこに関わる人物たちの関係を大きく覆しかねない、とんでもない秘密を知ったばかりなのだから。
重苦しい沈黙を破ったのはザックだった。
彼は困惑したように髪を掻きながら口を開く。
「なあ……まだ信じられないんだが……。フレデリックには別の女がいて、ロジャーとは別に、もう一人息子までいたってことか?」
フェリックスは背もたれに身を預け、落ち着いた様子で答えた。
「それが紛れもない事実だ。だからこそ、もっと調べたくなってきた。ザック、俺たちは今、少しずつ新しい事実を明らかにしているんだ。喜べ!」
ザックは目を見開き、声を荒らげた。
「喜べだと……? フェリックス、本気で言ってるのか!? 俺たちは、本来知る必要すらなかった個人的な事情にまで踏み込んでるんだぞ! 俺たちが首を突っ込んでいい話なのか? まるであの男の私生活を覗き回ってるだけの、ただの野次馬じゃないか!」
フェリックスはザックを鋭く見つめ、問いかけた。
「……ザック。お前は人生で一番危険なものが何か知っているか?」
ザックは顔を背け、苛立たしげに答えた。
「知らない。今はそんなこと知りたくもない!」
フェリックスは動じることなく、落ち着いた、それでいてどこか悟ったような口調で続ける。
「情熱を失うことだ。情熱を失えば、人はすぐに動くための理由まで失ってしまう。だから、たとえ一時的に情熱を失ったとしても、常に事件を追い続けるための理由を見つけなければならない」
ザックはハッとしたように手のひらでテーブルを叩いた。
「くそっ! こんな時に何を言ってるんだ、お前は!? いったい何の哲学の話をしてるんだよ、フェリックス!」
フェリックスは薄く笑い、立ち上がりながら言った。
「まあいい。まだ若造のお前には、俺の言っていることを全部理解するのは難しいだろう。準備しろ。ベルファストへ戻って、ここで分かったことをローレン夫人に伝える」
ザックは飛び上がるように立ち上がり、両手を振りながら強く反対した。
「何だって!? おいおい、待て! 俺たちは絶対に彼女には言わないぞ!」
フェリックスは驚いたように尋ねる。
「何だと? じゃあ誰が彼女に伝えるんだ? 俺たちの仕事は、分かったことを報告して説明することだろう!」
ザックはフェリックスへ詰め寄り、皮肉たっぷりに叫んだ。
「本気で言ってるのか!? 俺が彼女の前に立って、こう言えばいいのか?」
「『ああ、ローレンさん。亡くなったあなたの夫の家を調べていたら、太った隣人から、彼には真っ白な髪の別の女がいて、その女との間にトーパーという息子がいることが分かりました。ちなみに、その息子は今、軍に所属しています』って!?」
ザックはさらに声を張り上げる。
「いいか、絶対に俺はそんなこと言わないからな!」
フェリックスは困ったようにため息をつき、頭を抱えた。
「お前は本当に俺たちの仕事を難しくしてくれるな……。くそっ、疲れた。だったらベルファストへ戻るぞ。お前がもうやめたいっていうならな」
ザックは納得できない様子で言い返した。
「なんでそんなに急いで帰りたがるんだ? 俺たちはまだ、この家の表面を調べただけじゃないか! あの太った男が来て、捜査を邪魔されたんだ。もっと徹底的に調べるべきだ。隅から隅までな!」
フェリックスは頷き、具体的な捜索計画を整理するように言った。
「分かった。なら、浴室、キッチン、それから地下室を調べよう。それと、調べるべき寝室が三つある。あとはバルコニーだ。かなり広いから、念入りに調べる価値はある」
――――――――――
巨大で豪華なヴィラ。
その中でも、冷たい海がどこまでも広がる景色を真正面に望む、ひときわ目立つバルコニーにクラトロスはいた。
彼は、金色の装飾が施された白い椅子に、威厳たっぷりに腰掛けている。
その隣には、五十代ほどに見える男が二人座っていた。
一人は耳にピアスをつけ、もう一人は丸い頭に高級そうな革の帽子をかぶっている。
三人の間には重い沈黙が漂っていた。
それを破ったのは、コーヒーをすする音だけだった。
やがてクラトロスが口を開く。
冷たく、自信に満ちた声だった。
「それで、お二方……明日までに、どれくらいの確率で事が完了する?」
ピアスの男は、細かいことなど気にしていないような口調で答えた。
「なぜそんなに数字や確率を気にするんだ、クラトロス? 明日成功しようが明後日になろうが、そんなことは重要じゃない。肝心なのは、計画を実行して成功させることそのものだ」
クラトロスはすぐさま、威厳を崩すことなく返した。
「いや……数字は非常に重要だ。数字によって、予備の計画に頼る必要があるかどうかを判断できるからな」
革の帽子をかぶった男が、金色の装飾が施されたトレイの上へ、ゆっくりとコーヒーカップを置いた。
カチャリ――。
小さな音が響き、クラトロスとピアスの男の視線が彼へ向けられる。
年老いた男は二人を見つめ、静かだが断固とした口調で答えた。
「九十五パーセントだ」
クラトロスは満足げに薄く笑い、頷いた。
そして再びコーヒーカップを手に取り、何事もなかったかのように静かに口をつける。
ピアスの男もそれに続き、遠く広がる海の水平線を見つめていた。
最後まで第31話を読んでいただき、ありがとうございました!
今回も新たな秘密が明らかになりました。
この先、ザックたちはどんな真実に辿り着くのでしょうか……?
次回もぜひ読んでいただけると嬉しいです!
それでは、また次回お会いしましょう!




