↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社会の裏側  作者: トビー
PR
24/59

新たな友情の誕生

第24話です!


ここまで読んでくださり、ありがとうございます!


今回も少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。


それでは、どうぞ!

 ロジャーは公園の木製ベンチに腰掛け、目の前に広がる虚空を見つめていた。


 彼の脳裏には、高校時代のあの灰色の日の記憶が蘇っていた――。


 教室。


 ロジャーがいつもの席に座っていると、一人の女子生徒がぎこちない足取りで近づいてきた。


 その顔には緊張がはっきりと浮かんでいる。


 彼女は小さく折りたたまれた紙を差し出した。


 ロジャーがそれを受け取ると、彼女はまるで何かから逃げるように足早に立ち去った。


 ロジャーはゆっくりと紙を開いた。


 そこに書かれていた言葉を読んだ瞬間、表情が固まる。


『四角い眼鏡のぼっち君へ。

 一人の時は何をしているんだ?

 眼鏡と会話でもしているのか?』


 ロジャーは苛立ちを滲ませた視線を教室の後方へ向けた。


 そこには数人の男子生徒が座り、嘲笑うような笑みを浮かべながら彼を見ていた。


 続いて、紙を渡した女子生徒へ視線を向ける。


 彼女は机に顔を伏せ、恥ずかしさか後悔か分からない感情を隠していた。


 すると男子生徒の一人が高圧的な口調で言った。


「おい、小さな売女。

 心配するなよ。ははっ……ちゃんと役目は果たしたじゃないか」


 ロジャーの顔には怒りと不快感が浮かんでいた。


 だが、彼はそれを押し殺し、すべてを無視した。


 その時だった。


 教室の扉が開き、教師が一人の新入生を連れて入ってきた。


 生徒たちは立ち上がり、一斉に挨拶する。


「よろしくお願いします」


 教師は教室を見回して言った。


「みんな、新しいクラスメイトを歓迎してくれ。

 ジェルメイン・ディ・ナズ君だ」


 少年は一歩前へ出る。


 穏やかな口調と自信に満ちた笑みを浮かべながら自己紹介した。


「ジェルメイン・ディ・ナズです。

 最近この地域へ引っ越してきました。

 皆さんと仲良くできれば嬉しいです」


 すると先ほどの女子生徒が手を挙げた。


 トイレへ行きたいと言い、教師はそれを許可する。


 その間に、新入生はまっすぐロジャーの前にある空席へ向かった。


 そして腰を下ろす。


 ロジャーは不機嫌だった。


 しかし敵意を向けることはしなかった。


 新入生は温かな笑顔を向ける。


「やあ。

 君の名前は?」


 ロジャーはその唐突な親しさに少し驚いた。


 だが落ち着いた声で答える。


「ロジャー。

 ロジャー・コクサルだ」


 少年の笑みがさらに深くなる。


「いい名前だね。


 ところでロジャー、ジャガイモは好き?」


 ロジャーは目を瞬かせた。


「ジャガイモ?

 ああ……好きだけど」


 少年は軽く手を叩く。


「それは最高だ!」


 そして無邪気に言った。


「じゃあ僕たちは親友になれるね!」


 ロジャーはそこで記憶から引き戻された。


 公園の木陰の下で顔をこすり、苦々しいため息を吐く。


 自分がどれほど愚かだったのかを思い知っていた。


 孤独につけ込み、巧みに近づき、自分を騙した相手に心を開いてしまったのだから。


 ロジャーは拳を握り締める。


 そして押し殺した声で呟いた。


「くそっ……」


静かな住宅街のカフェ。


 窓の外では激しい雨が降り続いていた。


 バジディオはガラス窓の近くの席に腰掛け、その向かいにはマイシナ夫人が座っていた。


 バジディオは穏やかな口調で微笑む。


「お誘いを受けてくださりありがとうございます、マイシナさん。本当に感謝しています」


 マイシナは少し戸惑ったような表情を見せた後、静かに微笑んだ。


「お気になさらないでください」


 バジディオは店員を呼び寄せるように手を挙げる。


 そして自信ありげにマイシナへ視線を向けながら言った。


「エスプレッソを一杯。それと、マイシナさんには最高のアメリカーノをお願いします」


 その瞬間、マイシナの表情が変わった。


 明らかな不快感が浮かび、慌てて口を開く。


「待ってください。私はアメリカーノが大嫌いなんです」


 突然の反応にバジディオは目を瞬かせた。


 そしてすぐに店員へ向き直る。


「分かりました。もう下がってください」


 店員は足早に立ち去った。


 バジディオは両手を差し出すようにしながら、深く謝罪する。


「申し訳ありません、マイシナさん。あなたがアメリカーノを嫌いだとは知りませんでした。本当にすみません」


 マイシナは少し身を引きながら答えた。


「私にとってアメリカーノは苦手なんです。ただエスプレッソをお湯で薄めただけですから」


 そう言うと立ち上がり、荷物を手に取った。


「今日はありがとうございました、バジディオさん」


 彼女は返事を待つことなく店を後にした。


 バジディオは去っていく背中を見送りながら、苛立ち混じりに木製のテーブルを叩く。


「くそっ……今度は何を間違えたんだ!?」


 その時だった。


 ポケットの中で携帯電話が震える。


 予想もしていなかった相手からの着信だった。


 表示された名前は――エスパー。


 バジディオは不機嫌そうに通話へ出る。


「どうした、エスパー?」


 受話器の向こうからは、動揺した声が返ってきた。


「バジ……大変だ! 本当にまずいことになった!」


 バジディオは眉をひそめた。


「何を言っている? 何があったんだ?」


 エスパーは緊張した声で答える。


「うまく説明できないんだが……」


 バジディオの声が鋭くなる。


「さっさと話せ。でなければ拳銃で頭を吹き飛ばすぞ」


 エスパーは大きく息を吐いた。


「フーミスだ……フーミスが捕まった! 今、本部に拘束されている! しかも、あのプレウロトゥスが自ら尋問を始めようとしているんだ!」


 その瞬間。


 バジディオの身体が硬直した。


 衝撃のあまり、携帯電話を落としかける。


 瞳が大きく見開かれ、全身を冷たい感覚が駆け抜けた。


 しかし彼はすぐに我に返る。


 携帯を強く握り締めると、席を立ち、雨の降る外へ飛び出した。


 そして本部へ向かって駆け出した。


ザックはジェフとイサアクと共に座っていた。


 するとジェフが安堵したように言った。


「朝早くにあいつらが来て、連れて行ってくれたんだ。正直、俺たちはかなり運が良かったと思う。他の奴だったら引き取りを断っていたかもしれないしな」


 ザックは不思議そうに首を傾げた。


「はあ? どうして断るんだ? あの老人が捕まった今、この地区はあいつの管理下にあるんだろう。それなら責任を負うのは当然じゃないか」


 するとイサアクが頷いた。


「俺もまったく同じことを言った」


 だがジェフは呆れたようにため息を吐く。


「お前なぁ。イサアクがどんな口調で話したか見てないだろ。まるで命令しているみたいだったんだぞ。相手は大物のギャングなんだからな」


 そんな言い争いの最中だった。


 一人の少年が静かに近づいてきた。


「こんにちは」


 ザックは振り返る。


「おっ、ロジャーか。どうしたんだ?」


 ロジャーは小さく笑った。


「それが普段の挨拶なんですか?」


 ジェフは小声でザックに尋ねる。


「なあ、この子誰だ?」


 ロジャーは軽く会釈すると、彼らのテーブルへ腰を下ろした。


 そして真っ直ぐザックを見つめる。


「レスターさん。単刀直入に言います」


 三人は興味を引かれたように彼へ視線を向けた。


 ザックが促す。


「ん? 聞こうじゃないか」


 ロジャーは姿勢を正した。


 その声には後悔と誠意が滲んでいた。


「僕が以前あなたに対して失礼な態度を取ったことは分かっています。僕は愚かで軽率でした。本当に最低でした」


 拳を握る。


「殴りたければ殴ってください。嫌いになっても構いません。でも――お願いです。この頼みだけは断らないでください」


 三人は顔を見合わせた。


 特にザックは完全に困惑していた。


「頼み?」


 ロジャーは突然立ち上がる。


 そして真剣な敬意を示すように少し前へ身体を傾けた。


「僕を友達にしてください!」


 その場が静まり返った。


 ジェフもイサアクも呆然としている。


 一方、ザックの頭の中では混乱が渦巻いていた。


(は? 俺と友達になりたいだって?


 こんな失敗ばかりの人間と?


 冗談かと思ったが……いや、違う。


 こいつの顔は本気だ。


 くそっ、全然分からない……!)


 ロジャーはさらに続けた。


「僕が足手まといでも構いません。あなたがそう思っていても構いません。それでも受け入れてください」


 声が震える。


「友達でも、相棒でも、付き添いでも何でもいいんです。あなたが認めてくれる形なら、それで――」


 言葉を止めた。


 ザックたちの反応は沈黙だけだった。


 ロジャーはゆっくりと視線を落とす。


「当然ですよね……」


 寂しそうに笑った。


「結局、僕みたいな惨めな人間を傍に置きたい人なんていませんよね」


 そう言って背を向ける。


 そしてゆっくりと歩き始めた。


 だが――


「おい!」


 ザックの声が背後から飛んだ。


 ロジャーは振り返る。


「家に帰るところです」


 ザックは立ち上がり、小さく笑った。


「でも、まだ一緒に遊び足りてないだろ?」


 ロジャーは目を瞬かせる。


 ザックは頭を掻きながら続けた。


「つまりだな……俺たちはもう友達なんだから、友達ってのは一緒にぶらついたり、お互いの秘密を話したり……それからコーヒーを飲んだりするものじゃないのか? たぶん」


 ロジャーの目が大きく見開かれた。


 驚きが顔いっぱいに広がる。


 やがて温かな笑みが浮かんだ。


 ザックは真っ直ぐ彼を見る。


「ロジャー。本当に惨めな人間がいるとしたら、それは俺の方だ」


 穏やかな声だった。


「だから二度と自分を惨めだなんて呼ぶな」


 その言葉と共に、その場の空気がふっと和らいだ。


 ロジャーは嬉しそうに席へ戻る。


 そして再び皆と同じテーブルに腰を下ろした。


 しばらくして、ジェフがふと気付く。


「そういえば、その腕どうしたんだ?」


 包帯で固定された腕を指差した。


 ロジャーは首を傾げる。


「え? 折れたからですけど?」


 ジェフは思わず笑った。


「いや、どうして折れたのかって聞いてるんだよ」


 ロジャーも少し笑う。


「長くて複雑な話なんです。今は気にしないでください」


 時間はゆっくりと流れていった。


 やがて太陽は少しずつ沈み始める。


 黄金色の夕陽が四人を優しく照らしていた。


 彼らは並んで座りながら、その景色を静かに眺める。


 穏やかで、どこか心地よい時間が流れていた。

お読みいただき、ありがとうございました!


第24話はいかがでしたでしょうか?


少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。


よろしければ、感想や応援もお待ちしております!


それでは、また次の話でお会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。