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社会の裏側  作者: トビー
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23/59

消えた女の影

第23話を読んでいただき、ありがとうございます!


少しずつ物語の謎や人物たちの関係が明らかになっていきます。


今回も楽しんでいただけたら嬉しいです。

ジェフとイサアクは、プレウロトゥスの本拠地が置かれている古びた建物へ足を踏み入れた。


 建物の中は暖かな影に包まれ、不気味な静けさが漂っている。


 その一方で、各所には厳重な警備が敷かれていた。


 彼らが中へ入った途端、険しい表情をした男たちが前へ進み出る。


 男たちは拳銃を向けながら二人の行く手を塞いだ。


「お前たちは何者だ? ここへ何をしに来た?」


 ジェフは緊張で身体が強張っていた。


 こうした物騒な場所に来るのは初めてだったし、目の前で拳銃を向けられるのも初めてだった。


 だが、イサアクは動じなかった。


 一歩前へ出ると、落ち着いた声で答える。


「俺たちは隣の地区から来た。そこのショッピングモールが覆面集団に襲撃されたんだ」


 そして続けた。


「そのうちの一人を捕まえた。件についてプレウロトゥスさんと話がしたい」


 一方でジェフは隣に立ちながら引きつった笑みを浮かべていた。


 額からは汗が流れ落ちている。


 目の前の男たちとこの場所の雰囲気に圧倒され、ほとんど身動きが取れなかった。


 警備の男たちは互いに視線を交わした。


 やがて三人が二人の近くへ移動する。


 そのまま周囲を囲み込むように立ち、監視と護衛を兼ねながら道を開けた。


 イサアクの表情にははっきりとした不快感が浮かんでいた。


 しかし彼は何も言わず、余計な問題を起こさないよう沈黙を貫く。


 細い通路をしばらく進むと、一行は巨大な木製の扉の前で足を止めた。


 その先にいるのが、この場所を取り仕切る男――プレウロトゥスだった。


 一人の護衛が前へ出て、扉を三度叩く。


 すると中から冷たい声が響いた。


「入りたまえ、少年」


 護衛は重い木の扉を押し開けた。


 三人の護衛とジェフ、そしてイサアクは広い部屋へ入る。


 そこには不思議な威圧感が漂っていた。


「ボス。こいつらは隣の地区のショッピングモール騒ぎに関わった犯人を捕まえたと言っています」


 プレウロトゥスは軽く手を振った。


 三人の護衛は深く頭を下げ、そのまま部屋を出ていく。


 扉は静かに閉じられた。


 プレウロトゥスは二人へ視線を向ける。


 値踏みするように眺めた後、口元に皮肉めいた笑みを浮かべた。


 そして小さく笑う。


「少年たちよ、これは大したものだ」


 さらに続ける。


「学生が犯罪者を捕まえるとはな」


 どこか懐かしむような声だった。


「昔の自分を思い出すよ」


 ジェフとイサアクは揃って驚いた表情を見せた。


 イサアクは一歩前へ出る。


「俺たちは学生じゃない」


 そして淡々と言った。


「それより、この犯罪者を引き取るのか? それとも治安当局へ引き渡すべきか?」


 その瞬間だった。


 ジェフは慌ててイサアクの足を蹴る。


 そして慌てて笑顔を作った。


「はははっ……! お願いできますでしょうか、という意味です! 本当に!」


 次の瞬間、プレウロトゥスの表情が変わった。


 笑みは消え去り、鋭い威圧感だけが残る。


 部屋の空気が重くなったように感じられた。


「黙れ」


 低く鋭い声が響く。


 ジェフは思わず飛び上がった。


 顔には恐怖と動揺が浮かんでいる。


 プレウロトゥスはイサアクを見据えた。


「少年」


 冷たい声だった。


「その背の高い身体で、まさか私に命令しているつもりではないだろうな?」


 イサアクは眉をひそめる。


 しかし落ち着いたまま答えた。


「違う。命令なんてしていない」


 そして続ける。


「ただ、あの老人がいなくなった今、この地区の責任者はあんただろう。だから地区の安全もあんたの責任だと思っただけだ」


 すると突然、プレウロトゥスの目が大きく見開かれた。


 そして豪快に笑い出す。


「ははははははっ! ははははっ!」


 笑い声が部屋に響き渡った。


「少年、お前はなかなか度胸があるな」


 笑いながら続ける。


「だが覚えておけ。お前が言うその老人は、お前の千倍は手強くて強い男だ」


 やがて笑いを収めると姿勢を正した。


「それはともかく」


 静かな声に戻る。


「お前たちが捕まえた犯罪者はどこにいる?」


「俺が引き受けよう」


 ジェフはすぐに答えた。


「うちの地下室に拘束しています。明日の朝、連れて来ればいいですか?」


 プレウロトゥスは首を横に振る。


「少年たち。今は帰ってゆっくり休め」


 そして続けた。


「明日の朝、私の部下を何人かお前の家へ向かわせる。その時に引き渡してくれ」


 机を軽く指差す。


「住所だけ置いていけ」


 ジェフは慌てて頷いた。


「わ、分かりました! ははは……!」


 ジェフは紙を取り、急いで自宅の住所を書き込む。


 それを木製の机の上へ置いた。


 そして軽く頭を下げると、イサアクと共に部屋を後にした。


翌朝、太陽が昇る頃には、ザックは十分な休息を取ったおかげで活力を取り戻していた。


 彼は真っ直ぐフェリックスの家へ向かう。


 二人は、あの見慣れた木製のボードの前に立っていた。


 そこには、この謎に関わる主要人物たちの写真が貼られている。


 ロジャーの写真。


 フレデリック氏の写真。


 ジェルマンの写真。


 そしてグリヴォラ夫人の写真。


 さらに、「ジェルマン・デ・ナズ」という名前にははっきりと線が引かれ、その代わりに「ハリー」という名前が書き込まれていた。


 写真は円を描くように配置され、その周囲には線やメモ、さまざまな考察が複雑に書き込まれている。


 フェリックスはボードの方へ視線を向けながら言った。


「このボードがあると全体像が見やすくなる。調査の流れを整理するのにも役立つんだ。そう思わないか、ザック?」


 ザックは頷いた。


「ああ、その通りだ」


 そして続ける。


「古いやり方ではあるけど、かなり実用的だと思う」


 フェリックスは姿勢を正した。


 その表情は真剣そのものだった。


「今のところ集まっている情報を整理するとこうなる」


 彼はボードを指し示す。


「ハリーは『ジェルマン・デ・ナズ』という高校生になりすましてロジャー・コックスに接近した。そして最終的にノートパソコンを盗み出した」


 さらに続ける。


「後になって分かったことだが、そのパソコンはロジャーの物ではなく、父親である検察官フレデリックの所有物だった」


 フェリックスはボードの前を二歩ほど歩いた。


「しかもその中には、Cランク犯罪者たちに関する機密情報や記録が保存されていた」


 彼は断言する。


「つまり、ハリーが犯罪組織と関わっていたことはほぼ確実だ」


 そして話を続けた。


「その後、フレデリック氏は極めて不可解な状況で執務室内にて死亡した」


 フェリックスはグリヴォラの写真へ視線を向ける。


「その時、最も大きな衝撃を受けたように見えたのが補佐官のグリヴォラ・フロンドーサだった」


「彼女は長年フレデリック氏のもとで働いていたし、事件について最初に正式な証言を提出した人物でもある」


 少し間を置いてから続けた。


「そして今日、その証言内容と彼女に関する新しい情報をいくつか手に入れた」


 ザックは興味深そうに笑った。


「素晴らしい仕事だ、フェリックス」


 そして少し身を乗り出す。


「でも、肝心な話にはまだ入ってないみたいだな」


 フェリックスは自信ありげに微笑んだ。


「今から話すところだ」


 そう言うと、彼はファイルの中から薄い黄色の紙を取り出した。


 紙を開き、証言内容を読み上げる。


「グリヴォラの証言だ」


 フェリックスは読み始めた。


『フレデリック氏から、アスコ・マイコタ氏を呼ぶよう指示されました。しかし理由は聞かされていませんでした』


『私は彼へ電話をかけました。するとすぐに応答がありました』


『依頼内容を聞いた彼は少しだけためらいましたが、裁判所の住所を尋ね、その後すぐに向かうと言いました』


『数分後には実際に到着しました』


『私は彼が執務室へ入るのを確認した後、化粧室へ向かいました』


『そして十分ほどして戻り、彼が帰ったかどうか確認するため扉を開けました』


『ですが、そこで見た光景は恐ろしいものでした』


『アスコ氏はすでに立ち去っていました』


『ですが……フレデリック氏は殺されていたのです』


 ザックは顎に手を当てた。


 視線を落としながら考え込む。


「なるほどな……」


 しばらくして口を開いた。


「正直なところ、俺はアスコ氏が犯人だとは思えない」


 そして理由を述べる。


「そもそも彼は自分の意思でそこへ行ったわけじゃない。フレデリック氏本人に呼び出されたんだからな」


 フェリックスは紙を畳みながら答えた。


「その可能性はある」


 しかし続ける。


「だが逆に、二人の間で激しい口論が起きた結果、そうなった可能性も否定はできない」


 ザックは苛立たしげに息を吐いた。


「くそっ……」


 そして言う。


「話を聞けば聞くほど、ますますグリヴォラ本人と話したくなってくる」


フェリックスは、ふと思い出したように口を開いた。


「そういえば――」


 彼はザックへ視線を向ける。


「グリヴォラ夫人は既婚者だ」


 そして続けた。


「だが、彼女の夫はおよそ四か月前から刑務所に収監されている」


 フェリックスはわずかに眉をひそめた。


「妙なのは、友人のディミトリが記録を調べても、収監理由に関する詳細が見つからなかったことだ」


 その話を聞いたザックは即座に言った。


「もし彼女本人と話せないなら……」


 少し考える。


「刑務所へ行って、その夫と話してみるのもありかもしれないな」


 フェリックスはすぐに厳しい口調で言い返した。


「馬鹿なことを言うな、ザック」


 その声には警告の色があった。


「そんな行動を取れと言うために、この情報を教えたわけじゃない」


 さらに続ける。


「忘れるな。俺たちはこの事件の正式な担当ではないんだ」


 真剣な眼差しでザックを見る。


「余計な注目や疑いを自分たちに向けるような真似はするな」


 ザックは両手を上げて降参するような仕草を見せた。


「分かった、分かった」


 苦笑しながら答える。


「そんなことはしないよ」

第23話を読んでいただき、ありがとうございました!


ご感想やご意見をいただけると、とても励みになります。


次回もぜひお楽しみください!

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