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社会の裏側  作者: トビー
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16/59

『暴食の決断』

皆さん、こんにちは!


第16話を投稿しました!


ぜひ最後まで楽しんで読んでいただけると嬉しいです!


それでは、第16話をどうぞ!

 警察署の中――。


 ハリーはようやく一度だけ電話をかける許可を得ると、備え付けの電話機の前に立ち、素早く番号を押した。心臓が激しく脈打つ中、相手が出た瞬間、焦ったように声を上げる。


「ボス!」


 受話器の向こうから返ってきたのは、冷たく落ち着いた声だった。


「……誰だ?」


「俺です……暴食です!」


 傲慢は興味の欠片もないように小さく息を吐く。


「捕まったらしいな」


「はい……。頼みます、いつここから出してくれるんですか? もうすぐ刑務所へ送られるんですよ!」


 数秒の沈黙が流れたあと、傲慢は呆れたように鼻で笑った。


「はぁ? 今なんて言った? 俺がお前を助けるだと?」


 ハリーは慌てて言い返す。


「そうです! 何か問題でも――」


 その声を、鋭く冷たい一言が遮った。


「よく聞け、暴食」


 空気が一気に張り詰める。


「その状況を招いたのはお前自身だ。なら、自分の力で抜け出せ。今のお前は称号を持つ人間なんだろう? それなら、それらしく自分の問題くらい自分で始末しろ」


 ハリーは言葉を失った。


「……どういう意味ですか? まさか、本当に助けてくれないってことですか?」


 その時、通話時間を管理していた警官が腕時計を見ながら声をかける。


「時間です。通話を終了してください」


 ハリーは苛立ちを隠さず怒鳴った。


「うるさい! 今話してるんだ!」


 しかし、その頃には受話器の向こうは静まり返っていた。


 傲慢は何のためらいもなく電話を切っていたのだ。


 ハリーは受話器を握ったまま立ち尽くす。


 顔には失望と衝撃が色濃く浮かんでいた。


 警官は静かに受話器を取り上げると、ハリーの腕を軽く掴み、そのまま無言で留置場へ連れ戻していった。


     ◇


 その頃、ザックは警察署へ戻ってきていた。


 迷うことなく留置場へ向かい、鉄格子の前で足を止める。


 中ではハリーが力なく横たわっていた。


 留置されて以来ほとんど食事も取らず、ようやく自分が完全に見捨てられたことを理解したのだろう。


 ザックは穏やかな笑みを浮かべる。


「どうした? ずいぶん落ち込んでるみたいじゃないか」


 ハリーは返事をしない。


 目を閉じ、拳を強く握り締め、奥歯を食いしばったままだ。


 ザックは落ち着いた口調で続ける。


「なあ、一つ提案がある」


 それでもハリーは顔を上げようとしない。


 ザックは肩をすくめる。


「ここから少しでも軽い処分で出たいなら、俺と交渉した方がお互い得だと思うけどな。……まあ、その気がないなら別にいい」


 そう言って背を向け、一歩踏み出した。


「待て!」


 鋭い声が背後から飛ぶ。


 ザックは小さく笑うと、そのまま振り返った。


「やっぱりな。お前、俺と似てるよ」


「はぁ?」


 ハリーは眉を吊り上げる。


「俺たちは天才でもなければ、大した専門家でもない。でも、目の前のチャンスを利用する方法だけは知ってる」


「黙れ、この野郎! 俺がお前なんかと同じなわけあるか! いいから用件を言え!」


 ザックは真剣な表


 ハリーの頭の中で、凄まじい勢いで思考が駆け巡る。


(くそっ……この野郎、完全に俺を追い詰めやがった……! どうする? 話すか、それとも黙り続けるか……。いや、適当な嘘を教えてやれば――)


 だが、その考えはすぐに自ら打ち消した。


(いや、それは駄目だ。後で嘘だと知られたら、あいつは間違いなく偽名の件で俺を告発する……! くそっ……! でも、本当のことを話したら、今度は傲慢に殺される……。俺はまだ死にたくないんだ。ベルギーへ行って、本場のフライドポテトだって食べてみたい……!)


 そこで、ふと一つの考えが頭をよぎる。


(……待てよ。そもそも、なんで俺はあいつを怖がってる? あの思い上がった野郎を、なんで恐れる必要がある? あいつは昔から俺を利用して、見下してばかりだった。利用されてるのは分かってた。でも俺も、あいつを利用して自分の目的を果たせると思ってたんだ。いつも勝手に命令して、気に入らなければ電話まで一方的に切りやがる……。くそったれ。何様のつもりだ。あいつが『傲慢』なら、俺は『暴食』だ。今度は俺が思い知らせてやる!)


 ハリーはゆっくりと顔を上げ、鋭い視線をザックへ向けた。


「おい、間抜け刑事。何を知りたい?」


 ザックは確認するように尋ねる。


「……つまり、協力してくれるんだな?」


「協力? ああ、そんなようなもんだ。いいから早く質問しろ」


 その瞬間、ザックは胸が高鳴るのを抑えきれなかった。


 慌てて手帳とペンを取り出し、一言も聞き漏らすまいと構える。


 深く息を吸い、最初の質問を口にした。


「まず聞く。なぜ、あのノートパソコンを盗んだ?」


 ハリーは素っ気なく答える。


「命令されたからだ。でも、中に何が入ってるのかまでは俺も知らない」


 ザックは眉をひそめた。


(こいつですら中身を知らないのか……。ということは、あの秘密を知っているのはフレデリック本人だけ……。本当に厄介な事件だ)


 ザックはすぐ次の質問へ移る。


「誰の命令だった?」


「傲慢だ」


 ザックは首をかしげた。


「傲慢? ……待て、それは人の名前なのか?」


 ハリーは皮肉っぽく笑う。


「本名じゃない。俺たちの世界で使ってる呼び名だ」


「……お前たちの世界?」


 ハリーは呆れたように肩をすくめた。


「本当に何も知らないんだな、お前」


 ザックはその言葉を気にせず続けた。


「じゃあ聞く。その『傲慢』に関する情報は、あのノートパソコンの中に入っていたのか?」


「いや。何も入ってない」


 ザックは思わず声を上げた。


「何だって!? だったら、どうしてパソコンを盗ませたんだ!」


 ハリーは首を横に振る。


「知らない」


 ザックはため息をついた。


「……分かった。じゃあ次だ。本当のお前の名前は?」


 ハリーは少しだけためらい、小さく答えた。


「ハリー……。ハリー、それだけだ」


 ザックは不思議そうに尋ねる。


「姓はないのか?」


 ハリーは苛立ったように話を遮る。


「残りの質問は? さっさとしろ」


 ザックは真剣な表情のまま、次の質問を投げかけた。


「フレデリックの死は、あのノートパソコンと何か関係があるのか?」


 ハリーは困ったように眉をひそめる。


「それは……俺も知らない」


 ザックは思わず手帳を軽く叩いた。


「くそっ……! 本当に何も知らないんだな!」


 するとハリーは声を荒らげた。


「うるさい! 知ってることは全部話した! だから今度は約束だ」


 ザックは怪訝そうに首を傾げる。


「約束?」


 ハリーは真面目な口調で続けた。


「握手して、同時に『お互いのことは誰にも話さない』って言う。それで契約成立だ」


 ザックは少し考え込む。


「つまり……約束みたいなものか?」


「ああ、そんなもんだ」


 ザックはさらに確認する。


「それなら、お前がここを出た後も、俺のことを仲間に話したりはしないんだな?」


 ハリーは即座に答えた。


「ああ。……でも一つ訂正しておく。俺にはもう上司なんていない」


 ザックは思わず口を開く。


「でも、『傲慢』は――」


 ハリーは苛立ったように遮った。


「"だった"んだ! もう違う!」


 ザックは静かに笑みを浮かべ、手帳を閉じた。


「分かった。それじゃあ今日は帰る。また近いうちに会おう」


 そう言って背を向けると、ハリーが慌てて叫ぶ。


「おい! 待て!」


 ザックは足を止める。


「今度来るときは、何か食べ物を持ってこい! できればポテトだ!」


 ザックは思わず吹き出し、小さく笑いながら片手を振った。


「悪いが、囚人に飯を運ぶのは俺の仕事じゃない」


 そのまま歩き去るザックの背中へ、ハリーの叫び声が廊下いっぱいに響き渡る。


「おい、こら! どこ行くんだよ! 本当に腹減ってるんだからなーっ!」

第16話を最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです!


よろしければ、ブックマークや評価、感想もぜひお願いします!


それでは、また次回!

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