初対決
第15話へようこそ!
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それでは、第15話をお楽しみください!
ザックは足早に警察署へ到着すると、そのまま受付へ向かい、成りすましの少年が収容されている留置房の番号を尋ねた。
留置場へ続く廊下を進み、一つの牢の前で足を止める。
鉄格子の向こうには、一人の少年が無気力そうに横になっていた。
フェリックスから見せられた写真のおかげで、ザックは一目でその顔が分かった。
腕を組みながら、落ち着いた口調で声をかける。
「つまり……お前が、このところ嫌というほど名前を聞かされてきたジャーメインってわけか。ずいぶん探したんだぞ」
"暴食"はゆっくりと顔を上げると、鼻で笑った。
「はぁ? お前なんかに何の用だよ。いいからさっさと電話を一本させろ」
ザックは表情を変えない。
「電話か。安心しろ、その必要はない。お前はここから出ることになる」
"暴食"は身体を起こし、自信満々に笑った。
「そりゃ出るさ。で、いつだ?」
ザックは真っ直ぐ相手を見据えた。
「俺の質問に答えたらだ」
"暴食"は露骨に顔をしかめる。
「ふざけんな。質問もお前もまとめてくたばれ」
ザックは一歩前へ出た。
「お前は誰だ。本物のジャーメインじゃないことは分かっている」
少年は一瞬だけ驚いた表情を浮かべたものの、すぐに皮肉っぽい笑みを浮かべた。
ザックはそのまま問いを重ねる。
「なぜフレデリックのノートパソコンを盗んだ? 誰のために動いている? それとも、あのパソコンを使って誰かを脅迫していたのか?」
少年は腹を抱えるように笑い出した。
そして人を見下した口調で言う。
「捜査するのがお前の仕事だろ? 知りたいなら、自分で調べろ」
ザックは眉をひそめた。
「つまり、協力する気はないんだな」
少年は冷たく言い放つ。
「地獄へ行け」
その時、一人の職員が少年の食事を運んできた。
看守が牢を開けようとした瞬間、ザックはその前へ立つ。
「その食事はジャーメインのものですか?」
職員は頷いた。
「ええ、そうです」
ザックは少年を見ながら小さく微笑む。
「なら、持って帰ってください。ジャーメインは今、食べる気がないそうです。あなたが食べてもいいですし、好きに処分してください」
職員は不思議そうな顔をしたものの、軽く頷き、そのまま食事を持って立ち去った。
その瞬間、"暴食"の表情が一変する。
怒りが露わになり、鋭い視線がザックへ突き刺さった。
対するザックは最後まで冷静だった。
「また明日来る。それまでによく考えておけ」
そう言い残すと、ザックは踵を返して廊下を歩き去る。
牢の中には、怒りに震える成りすましの少年だけが残された。
◇
翌朝。
ザックとフェリックスは静かな喫茶店の一角で向かい合って座っていた。
テーブルの上には事件資料と新たに集まった情報が並べられている。
コーヒーを一口飲んだフェリックスが、真剣な表情で口を開いた。
「この事件には本当に興味がある。表に見えている以上の何かが必ず隠されているはずだ。……だが、今は正式に担当している事件を優先しなければならん。しばらくは一人で頼む、ザック。三日もあれば片付く。その後はまた合流しよう」
ザックはすぐに笑顔で頷いた。
「もちろんです。今は担当事件に集中してください。そもそもあなたは、自分の意思で俺を助けてくれたんです。本来はこの事件の担当でもないのに……改めて、本当にありがとうございました」
フェリックスは励ますように頷いた。
「礼なら必要ない。それより、お前はようやく一番重要な糸口を掴んだ。成りすましの少年は今、お前たちの留置場にいる。あとは、そいつをどう利用して情報を引き出すかだ」
ザックは力強く頷いた。
「ええ。その糸口はもう俺の手の中です。必ず有効に使ってみせます」
フェリックスは席を立ち、軽く手を振ると、そのまま店を後にした。
◇
ザックはその足でコックス家へ向かった。
いつものように玄関の扉を叩くと、家族は快く迎え入れてくれる。
彼はそのままロジャーの部屋へ向かい、二人きりで話を始めた。
ベッドの横へ立ったザックは、真剣な声で言う。
「ロジャー。昨日はお前の体調を考えて聞かなかった。でも、今はどうしても確認しなきゃならないことがある」
ロジャーは疲れた身体を起こした。
ザックは真っ直ぐ問いかける。
「教えてくれ。どうしてノートパソコンを学校へ持っていった?」
ロジャーは小さく息を吐いた。
「実は、あのパソコンは――」
「亡くなったお父さんのものだった。そうだろ?」
ザックが静かに言葉を継ぐ。
ロジャーは目を見開いた。
「どうしてそれを……!?」
「説明している時間はない。今は質問に答えてくれ」
ロジャーは数秒黙り込むと、後悔の滲む声で話し始めた。
「僕もジャーメインも、事件や捜査にすごく興味があったんだ。僕は父さんみたいになりたかったし、ジャーメインも刑事になって犯罪者を捕まえたいって、いつも言ってた。暇さえあれば二人でそんな話をしていたよ。
それで、父さんが検察官だと話したら、あいつはすごく喜んで、ぜひ会ってみたいって言い出した。でも父さんはその時ルーズボーンにいたから、代わりに何か事件の勉強になるものを持ってきてほしいって頼まれたんだ。
僕はあいつを心から親友だと思っていた。だから……あんな最低な頼みでも、一度も疑わずに聞いてしまった」
ロジャーの目から涙が溢れた。
「僕は昔から愚かで、馬鹿だった……。父さんみたいになれるはずなんて、最初からなかったんだ」
ザックは真っ直ぐ彼を見つめた。
「確かに、お前は馬鹿だった」
ロジャーは思わず固まる。
だがザックは力強く続けた。
「だからって、そのたった一つの失敗で将来刑事になれないなんて、本気で思ってるのか? そんな考えの方がよほど愚かだ。
確かに大きな失敗だった。でも、それだけで夢まで終わるわけじゃない。
俺だって何度も失敗してきた。今だって失敗はする。それでも刑事になれた。……そもそも俺は、この仕事を最初から望んでいたわけですらない」
そう言って、小さく笑う。
「とにかく、正直に話してくれてありがとう。おかげで、あのクズがどういう人間なのか、ようやくはっきり見えてきた」
◇
ザックはコックス家を後にし、警察署へ向かうバスへ乗り込んだ。
窓際の席に座り、流れていく街並みを眺めながら、静かに思考を巡らせる。
(俺はフレデリックさんみたいなベテランでもない。フェリックスみたいな頭脳もない。それでも……この事件だけは、自分の力で解決しなきゃならない)
視線は遠くを見つめたまま、頭の中で情報を整理していく。
(ジャーメイン・ディ・ナス……あのクズが名乗っている偽名だ。あいつは今日か、遅くとも明日には刑務所へ送られる。なら、このわずかな時間を利用するしかない……)
その瞬間だった。
ザックの動きが止まり、目が大きく見開かれる。
(そうか……!)
次の瞬間、自嘲気味に笑った。
(なんて馬鹿だったんだ。答えは最初から目の前にあったじゃないか)
自信に満ちた笑みが浮かぶ。
ザックは静かに笑いながら、小さく呟いた。
「ジャーメイン……いや、本当の名前が何であろうと構わない。今度こそ、勝負だ」
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それでは、第16話でお会いしましょう!




