↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社会の裏側  作者: トビー
PR
11/59

正体不明の人物

第11話へようこそ!


いつも『社会の裏側』を読んでいただき、本当にありがとうございます。

物語はさらに加速していきますので、ぜひ最後までお楽しみください!

ジャーメインは軽くクラブの扉を押し開けると、そのまま真っ直ぐ受付カウンターへ向かった。そこでは三十代ほどの女性が帳簿を整理している最中だった。


彼は愛想の欠片もない声で言う。


「疲れた……休みに来た。世話を頼む。早くしろ」


女性は手を止めて顔を上げると、腕を組み、皮肉っぽく笑った。


「ずいぶん命令口調ね。言っておくけど、私はあなたの部下じゃないわ」


ジャーメインはわずかに眉をひそめる。


「はぁ? 聞こえなかったのか? 俺は休みたいだけだ。適当な女を一人、部屋によこせ。俺は先に行ってる」


女性は呆れたようにため息をつき、近くに立っていた若い女性へ軽く手を振った。


「彼について行って。さっさと済ませてきなさい」


ジャーメインはそれ以上何も言わずに踵を返し、客室へ続く廊下へと歩いていく。呼ばれた女性も慌ててその後を追いかけた。


◇


捜査ボードを見つめながら、ザックは真剣な表情で口を開いた。


「結局のところ、全部の手掛かりはジャーメイ――いや、この身分を偽ってるガキを捕まえろってことだな」


フェリックスは眼鏡を少し下げながら静かに頷く。


「ああ、その通りだ。だが問題は、登録されている住所がおそらく仮の住まいだということだ。計画やパソコンの盗難を実行する間だけ借りていた可能性が高い」


ザックはため息を漏らした。


「だろうな。実は俺も一度そこへ行ったが、跡形もなかった」


するとフェリックスは意味深に笑い、車の鍵を指先で揺らして小さく音を鳴らした。


「それでも確認する価値はある。行くぞ」


二人はすぐに車へ乗り込み、市街地を走り抜けた。


やがて車はジャーメインの家の前で止まる。


二人は玄関へ向かい、何度も強く扉を叩き、呼び鈴を鳴らした。しかし返事はない。


ザックは耳を扉に当て、しばらく中の様子を探ると、首を横に振った。


「完全に静かだ。中には誰もいない」


それでも諦めず、二人は家の裏手や庭まで回り込み、何か手掛かりが残っていないかを探し始めた。


周囲を見渡したザックは肩を落とす。


「前に来た時と全く同じだ……何も変わっちゃいない」


「俺もそうなるとは思っていた……本当は俺流のやり方は使いたくなかったんだが、どうやらもう他に手はないらしい」


ザックは怪訝そうに眉をひそめた。


「お前流のやり方?」


「ああ。"F方式"とでも呼んでくれ」


「F方式? なんだよそれ……」


フェリックスは真顔のまま言い放つ。


「質問は後だ。黙って見ていろ」


そう言うと彼は玄関の前まで歩み寄り、一歩後ろへ下がった。


次の瞬間、勢いよく体当たりを繰り出し、肩で扉を激しく打ちつける。


一度では開かない。


もう一度。


そして三度目――。


激しい音とともに鍵が砕け、扉は大きく開いた。


ザックは慌てて周囲を見回しながら叫ぶ。


「お、おい! 何やってんだよ!? 正気か!? 令状もないのに押し入るなんて!」


フェリックスは振り返ることもなく家の中へ入り、冷たく言った。


「いいから家を調べろ」


二人は散らかった室内を隅々まで捜索した。


しかし長時間探しても、少年の居場所へ繋がるような証拠や書類は何一つ見つからない。


フェリックスは部屋の中央で手についた埃を払いながら口を開く。


「よし。次は"L方式"だ」


ザックは呆れ顔で尋ねた。


「今度はL方式って何なんだ?」


フェリックスはあっさり答える。


「近所の人に聞く」


ザックは額を押さえ、深いため息をついた。


「なんなんだよ、その変な名前は……」


二人は住宅街へ出ると、近隣住民への聞き込みを始めた。


最初に訪ねた家では、疲れた様子の男性が応対した。


ジャーメインについて尋ねると、男は少し考えてから答える。


「仕事帰りで夜遅くになると、たまに見かけますよ。この近くの食料品店で偶然会うことが多いですね」


二人は礼を言い、続いて隣家を訪れた。


今度は年配の女性が玄関に姿を現す。


フェリックスが隣に住む少年について尋ねると、女性は驚いたような顔をした。


「今日だけで、その子のことを聞かれたのは二人目ですよ」


ザックとフェリックスは思わず顔を見合わせる。


フェリックスはすぐに問い返した。


「本当ですか? 最初に来たのはどんな人物でした?」


女性は数秒考え込み、やがて答えた。


「この辺じゃ見かけたことのない若い人でしたよ。金髪で、青い目をしていて、眼鏡をかけていました」


その瞬間、ザックは弾かれたように顔を上げる。


「ロジャーだ……! あいつ、まだジャーメインを唯一の友達だと思ってるのか……!」


フェリックスはさらに何か思い出せないか女性へ尋ねたが、ロジャーの行き先や会話について、それ以上有力な情報は得られなかった。


二人は急いで、最初の男性が話していた近くの食料品店へ向かう。


店へ入ると、ザックは店員たちに事情を説明し、いつも夜遅くに来る少年について尋ね始めた。


しかし店員たちは首をかしげるばかりで、誰のことなのか理解できず、互いに困ったような視線を交わしていた。


その様子を見たフェリックスは、小さく笑みを浮かべる。


「こうなると思っていた。だからちゃんと用意してある」


ザックは呆れたように振り向いた。


「おいおい、今日は何回『予想してた』って言う気だ? 未来でも見えるのかよ」


フェリックスはその言葉を聞き流し、コートの内ポケットから一枚の写真を取り出した。


ジャーメインの顔写真だった。


それを店員たちへ見せると、一人がすぐに声を上げる。


「ああ、この子なら知ってますよ」


別の店員も頷いた。


「変わった子ですよね。いつも夜遅くにしか来ませんから」


さらにもう一人が続けた。


「しかも毎回買うものまで同じなんです。じゃがいもと炭酸飲料だけ買って、すぐ帰っていきます」


ザックとフェリックスは静かに視線を交わした。


これで、ジャーメインが少し前までこの場所で生活していたことはほぼ確実になった。


だが肝心なのは――今、奴はどこにいるのか。


そして、本当に見つけ出すことができるのか。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


この作品を楽しんでいただけましたら、ぜひブックマークとご感想で応援していただけると嬉しいです。

皆さんの応援が、これからの執筆の大きな力になります。


それでは、第12話でお会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。