氷の女王すら勝てない相手
「次に俺と模擬戦闘をする可能性が高い人の戦闘スタイルを教えてほしいんだ」
「なるほど、戦う前に調べておきたいというわけ。自分の手の内を晒さず、相手のことはきっちりと調べるなんて、さすが」
「別にいいだろ?」
「問題ない。ただ、実は私は第五席のエメス先輩については、ほとんど知らない。そもそも、戦ったことがない。私が戦ったのは第四席のフレイア先輩だけ」
「そうか……じゃあ、そのフレイア先輩についてだけでも教えてくれるか?」
「分かった」
そう言うと、リージアは淡々とフレイアの情報を語りだした。
裏生徒会、第四席【天空】のフレイア。
見ての通り二つ名持ちであり、空を飛ぶ魔法を得意としている。
この学校で二つ名を持つ生徒の中では唯一の女子生徒で、その美しく強力な戦闘スタイルから戦乙女とも呼ばれているらしい。
言われてみると、俺もその異名を聞いたことがある気がする。
リージアは接近スタイルだったこともあって、どうしても彼女を捉えきることが出来ず、ほぼ完敗という形で負けてしまったとのことだ。
まぁ……つまるところ、魔法が使えない俺には一切勝ち目がないということだ。
武術が使える距離だったリージアとの戦いと違って、マグレはありえないだろう。
もちろん、リージアとの戦いで狙っていたように、わざと負けられるのが理想なのだが……聞いた話によるとフレイアの得意な魔法は風を操るものらしく、カマイタチのような風の刃を飛ばす魔法をよく使うらしい。
これもわざと当たって……というのが難しいタイプの魔法だ。
二つ名持ちの魔法使いが射出する風の刃を、魔力障壁なしで受けたらどうなるかなど想像もしたくない。
「私のときみたいに、武術だけで勝てるなんて甘く見ないほうが良い。もしも、あのときのように魔法の発動を阻害するような……」
何故か、不意にリージアの顔が赤くなった。なんでだろうか?
リージアはぶんぶんと首を振ると、何事もなかったかのように話を再開した。
「と、とにかく、魔法を阻害できたとしても厳しい。だから、全力で戦うべき」
まぁ、全力で戦った結果があれなんですけれどもね。
「分かった。それで、第五席のエメス先輩についての情報は何もないのか?」
「本当にない。ただ、第四席までは全員二つ名持ちなのに対して、エメス先輩は二つ名持ちではない。それに、そこまで強くないという噂もある」
そこまで強くないと言っても、裏生徒会という組織の成り立ちを考えれば生徒の中でも選りすぐりの実力者だろう。
到底、俺では太刀打ちできないと考えるべきだ。
そして、どのような魔法が得意かという情報がないのも危険だ。
最悪、よくわからない魔法の一撃で俺がお陀仏という展開にもなりかねない。
「それで、武術はいつから教えてもらえる? 早いほうが嬉しい」
「分かったよ。いつでも教えられるように準備しておくよ。でも、言っておくが、基礎は教えられても、それ以上は期待しないでくれ」
「分かっている」
用が終わったと判断したのか、リージアはどこかへ行ってしまった。
残された俺は、次の相手がエメス先輩でもフレイア先輩でも地獄という状況に、しばらく頭を抱えていた。
正直、リージアと戦ったあとにわざと負けるという自分の考えが甘かったことを知り、学校をやめてでも逃げるべきではないかとも考えていた。
しかし、俺は実家から捨てられた身であり、収入のあてがないのだ。
グランヴァザーナ学院の入学費は手切れ金代わりに実家が払ってくれたが、手持ちのお金が全くない状態である。
もしも、こんな状態で学院をやめれば、どちらにしても路頭に迷って死ぬだけだ。
それなら、この状況の解決策を見つける方が良い。
それに、以前バリウスから簡単に説明を受けたのだが、裏生徒会に所属していると学院からお金がもらえるらしいのだ。
周辺諸国の問題解決などの任務を請け負って実地訓練とする代わりに、相応のお金が給料として支払われる仕組みとのこと。
当面の生活ができるだけのお金が貯まってからであれば、学院をやめるという選択肢も取れるかもしれない。今はどうにかして耐える時だ。
俺は、裏生徒会に呼び出されないことをお祈りしながら、なんとか今日は無事に一日を終えた……はずだったんだが、寮に戻ってからリージアが訪ねてきたのだ。
いや、確かにいつでも良いとは言ったけど、当日に来るとは思わなかった。
作者である自分は、今まで数々の世界を救ってきた勇者です。
当然、【評価ptの数だけ戦闘力が上がる】チート能力を保持しています。
というわけで、広告の下にある☆☆☆☆☆より評価をしておいてください。
約束ですよ。




