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氷の女王が自室まで訪ねてきた

 寮の自室でいつもどおり過ごしていると、ドアをノックされた。

 ここに入って半年と少しだが、これまでに訪ねてきた人は居なかったので、最初は気のせいかなと思ってしまった。

 ドアを開けると、目に入ったのは白い髪……そこにはリージアが居た。


「まさか、当日に来るとは」

「いつでも良いと言ったのは、そっち」


 グランヴァザーナ学院は全寮制だ。

 超名門の学院であるだけあって、生徒一人ひとりに部屋が割り当てられる上に、その部屋もまた大変広い。軽い運動くらいなら室内でも出来てしまうほどだ。


 グランヴァザーナ学院は6年制の学院であるため、寮だけでも12棟あり、学院の敷地と同等か、それ以上の面積を占めている。

 はっきり言って、これだけの設備のある学院は他にないどころか、学院の規模としては2位と大差をつけていると言ってもいい。

 そのため、リージアを始めとした要人が世界各国から学びに来る。


 世界の中心にあり、そして「どの国にもつかず、戦争をすることはない」と掲げている中立国家ヴァザーナだからこそ実現できた、学院の完成形だ。


 そして、この学院は規則が厳しいという特徴もある。

 必要以上の拘束はないのだが、「秩序」を重んじる校風であることは事実である。

 もちろん、寮の使用に関する規則も細かく規定されている。


「というか、寮まで来られたら困るって言わなかったか……?」

「そのあとに、いつでも良いと言った。あとから言ったほうが優先」


 まぁ……確かにそう……なのか?


 大人しそうな見た目に反して、リージアは強引なタイプのようだ。

 もしかして、実際にはメルヴァニアの王女(おうじょ)なのに、”氷の女王(じょおう)”と呼ばれているのは、こういう性格のせいだったりするのだろうか?


「……別に良いんだが、こんな堂々と来ていいのかよ?」

「どういう意味? 女子寮に男子が訪れるのは規則により禁止。だったら、私が来るしかない。別に、何もおかしいことはないと思う」

「それはそうなんだが……」


 確かに、そのような規則は存在している。

 リージアの言っていることは正しいのだが、規則以外にも暗黙の了解というのは存在しているもので、基本的に自室に女子生徒を呼ぶのはNGだ。


 もちろん、そんなのお構いなしという人も居るには居るのだが、もし見られたりすれば、その噂は一瞬で広まってしまうだろう。

 不純異性交遊が……的な意味合いもあるし、そうじゃなくても、ここは要人が集まる学院だから人の出入りは噂となりやすい。


 その上、今訪ねてきているのはリージアだ。メルヴァニア王家の王女であり、1年生の中でもトップクラスの実力を持つ話題の人物である。

 もしも、俺の部屋に入るとこなど見られたら、どうなってしまうことか……


 それじゃなくても、身に覚えのない噂が蔓延していて困っているというのに。


「俺個人の部屋に訪ねてきたのを見られたら、噂になっちゃうかもしれないだろ。俺は練習場の使用申請をして、そこで教えるのを想定していたんだが……」

「それは、すまなかった。だけど、誰にも見られてはいない」

「本当か? それならいいんだが……」


 練習場の使用申請時間はもう過ぎている。今からだと練習場は使えない。

 仕方がないので、俺はリージアを部屋に入れることにした。

 一応、ドアの外の様子を確かめてみたのだが、確かに誰も居ないようだ。


 ……しかし、何故か誰かに見られているような気もする。

 まぁ、気のせいだろう。


「とりあえず、中に入ってくれ。次からは練習場の使用申請をするけど、今日はここで武術の基礎を教えるよ」

「ありがとう、師匠」

「師匠!?」

「私が教わる立場なのだから、師匠でおかしくないはず」

「いや、確かにそうなんだけども……」


 無能の俺が師匠と呼ばれる状況には、ちょっと参ってしまうな……


 まぁ、そんなこんなで結局師匠と呼ばれることにはなってしまったが、リージアを自室に招き入れると、きっちりと武術の基礎を教えた。

 リージアは至って真面目……というか真面目すぎるくらいで、しっかりと基本的な動きの鍛錬を行ってくれた。

 さすがに近接スタイルの魔法を使うだけあって、筋も悪くないみたいだ。


 ただ、リージアの手を持って動きを教えようとした時は、猛烈に拒否された。

 確かに、あまりに真面目に武術の指導をしていたものだから意識するのを忘れていたが、女子の身体に触れようとすれば嫌がられて当然だ。

 近くに居た女子がマホロだけだから、イマイチ距離感が掴めないんだよな……


 それからは気をつけながら基本的な動きを教え、それぞれの技の鍛錬の仕方も教えることができた。飲み込みが早かったから、教えるのは楽だった。

 また、俺はあまり使っていなかったが、ジジイから学んだ武術の中には刀を使うことを想定した武術があったので、それについても教えておいた。

 そもそも、刀は基本的には東方の文化だ。北の出身であるリージアが刀の魔法を使っているというのは、何か事情があるのかもしれない。


 ……一通り今日教えられることを教え終わったあとは、俺がドアを開けて人が居ないのを確認して、リージアには帰ってもらった。このときも、何か視線のようなものを感じたが、誰も居なかったので、俺が気にしすぎなだけだろう。

 とりあえず、明日は練習場の使用申請を忘れないようにしようと心に誓った。


作者である自分は、今まで数々の世界を救ってきた勇者です。

当然、【評価ptの数だけ戦闘力が上がる】チート能力を保持しています。

というわけで、広告の下にある☆☆☆☆☆より評価をしておいてください。

約束ですよ。

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