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婚約者を庇って呪いで猫になりました~なかなか快適な猫ライフです~  作者: 燈華
番外編

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お見合いをします。6

ゼリア侯爵令息はティーカップを静かに置いた。

リラージュもティーカップを置く。

真剣な話だと感じたからだ。


「リラージュ嬢は、失礼、そう呼んでも構わないかな?」

「はい。構いません」

「ありがとう。僕のこともフェラルード、と」

「ありがとうございます。フェラルード様」


どうやら少しは親しみを感じてもらえたようだ。

これはお見合いとしてはいい傾向ではないだろうか。

もしかしたら婚約も成立させることができるかもしれない。


と考えることもできるけど、現実はそううまくいかないだろう。

資質というものがある。そればかりはどうにもならないものだ。


「話を戻すけど、リラージュ嬢のもとには既に何件か縁談を持ち込まれているかい?」

「いえ。私が聞いた限りはフェラルード様だけですわ」

「そっか」


よかった、と続いたように聞こえたが気のせいかもしれない。


(そんなふうに思うはずがないもの)


ゼリア侯爵令息の婚約者の立場など引く手あまただろう。

わざわざリラージュを婚約者に据える必要はない。


見合い相手というのはリラージュだけではないだろう。

他にもいるはずだ。

リラージュより条件のよく侯爵夫人が務まる相手もいることだろう。


何故リラージュのところにお見合いの話が回ってきたのか、正直わからなかった。

王宮のお茶会で同席した縁しかない。


あの時は誰にも興味なさそうだったのに。

リラージュもほとんど会話を交わさなかった。

だから興味を持たれたということはないと思う。


それなのに何故?

ちょっとした縁でも大切にしてみようと思ったとかなのだろうか?

幅広くいろんな令嬢と顔合わせをしていてその中から選ぶという感じなのだろうか?


それならばリラージュに声がかかったのも納得できる。

それ以外ではちょっと考えられなかった。

そんなふうに考えているとフェラルードが真剣な眼差しを向けてきた。


「リラージュ嬢はこの縁談のことについてどう思っているのかな?」


(まばた)き一つ分間を空けてから答える。

重要なことは即答してはいけないのだ。


「いい御縁をいただいたと思っています」


フェラルードは軽く首を傾げた。


「本当のところは?」


本当のところは、と訊かれても、それも本心であることに変わりはない。

どうしてリラージュのところに縁談が来たのか不思議に思っていたとしてもだ。


「本心です」


だからこう告げるのも嘘ではない。

フェラルードの眉根が少しだけ寄る。


「どう言ったら素直に教えてくれるかな?」


リラージュは思わずきょとんとしてしまう。

何が知りたいのだろう?


「ええっと、何が知りたいのですか?」

「君の本音」

「本音……?」

「そう。聞かせてくれるかい? 本当はどう思っているか」


フェラルードは真剣な顔だ。

本当に知りたいと思っているのだろう。


本当は、それが本音ですよ、と言ったほうがいいのだろう。

ルーティスにも淑女であることを厳命されている。


だけど、彼の真剣さに応えたいと思った。

彼はきちんとリラージュに向き合ってくれている。

それならば、リラージュもきちんと向き合うべきだと思う。


素を出すわけではない。

ちょっとだけ本音を伝えるだけだ。

だから問題ない、と思う。

心の中で小さく頷く。


そして口を開いた。


「急な話にびっくりしています」

「あー、そっか。そうだよね。急だったね」

「はい」


だって本当に接点などあの王宮のお茶会しかない。

その前には会ったこともないのだ。

そのお茶会でも挨拶以外は話した記憶はなかった。

だからこそ何故リラージュのところに話が来たのか疑問だったのだ。


「ごめんね」

「いえ」


今なら訊いてもいいだろうか?

リラージュはフェラルードの表情を確認してから思いきって訊いてみた。


「ですが、どうして私のところにお話が? フェラルード様ならもっと相応しいご令嬢がいらっしゃるでしょうに」

「僕がリラージュ嬢と話してみたかったんだ」


リラージュはきょとんとする。

想定外だった。


「私と、ですか?」

「そう。お茶会ではあまり話せなかったし」


話せなかった、というよりは興味がなさそうに見えたのだが。

それは何となく言えなかった。


「そうだったのですね。光栄です」


フェラルードの顔が曇る。

何かやらかしてしまっただろうか?


「あの、どうしましたか?」

「ん? まだまだ心を開いてもらうには足りないか、と思って」

「え……?」

「リラージュ嬢とは建前抜きで話したかった」


リラージュはちょこちょこ素を出してしまっていた。

それを見てもフェラルードが指摘しなかったのは嬉しかったからだったのだろうか?


でも素のリラージュはのんびりとした性格をしているのは自他ともに認めるところだ。

はっきりと言ってしまえば侯爵夫人など向いていない。


それはきっとフェラルードもわかったことだろう。

だからきっと話すだけで満足しただろう。

感情と妻に相応しい相手はまた別のことだから。


失望された様子もないことは幸いだ。

リラージュとの見合いが楽しいものであったのならそれはそれで嬉しい。

そう思っていたのだが。


フェラルードは姿勢を正した。

真剣な顔でリラージュを見る。


「僕との婚約を真剣に考えてくれるかい?」

「私でいいんですか?」

「うん。君がいいんだ」

「ここでお約束はできませんが、」


家としての考えもあるから返事はできない。

だけど。


「うん」

「私自身は前向きに考えさせていただきますね」

「うん」


フェラルードは嬉しそうに微笑んだ。


読んでいただき、ありがとうございました。

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