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「――と、とにかく!!こんな醜い王太子殿下とは婚約できませんわ」
ゴッホンと大きく咳払いをしたベリンダ侯爵令嬢が不躾に指をさしてそう改めて宣言した。
国王陛下がその裏で今度こそ動き出そうとしたところでアレクシスが口を開く。
「婚約破棄の件、承知「あ!あのぅ!!!!」
会場の奥からすっと白く細い腕が挙げられ、アレクシスの声に被せるように綺麗な美声が響く。
人波を掻き分け前に踊り出たのは、月の光のように美しく輝くプラチナブロンドの髪と神秘的な菫色の瞳を持つ、まるで妖精のような出で立ちの美しい娘だった。
「―――何故、貴方方は王太子殿下が“醜い”と仰っているの?」
きょとん、と大きな瞳をまん丸にしてそう発言した彼女をベリンダ侯爵令嬢とシリル公爵子息は鼻で笑った。
「貴女、目がおかしいのではなくって?アレはどこからどう見たって醜いでしょう」
「ですから、何故と聞いているのです。」
貴族らしいアルカイックスマイルを浮かべ先程より強い口調でそう言った娘を見て、アレクシスは小さく「あ」と呟いた。
彼女はこの大陸で一番の大国の国王が溺愛している末姫シャロン王女だ。
先月華々しくデビュタントを迎えられ、成人王族として初めての公務で友好国である我が国に滞在されている。アレクシスの誕生日を祝う為に。
「(こんな騒ぎを起こしてしまったし、見苦しい所を見せてしまった。後で謝罪を入れねば。)」
アレクシスは友好国の姫に失態を見せてしまった事に落ち込みながら、受け取ったマントを羽織り、露わになったお腹を隠した。
「王太子殿下は、とても美しい方です。少なくとも貴方方よりも。」
凛と透き通った声ではっきりとそう言ったシャロン姫にベリンダ嬢は嘲るように言う。
「誰がどう見たって私達の方が美しくってよ」
「(誰がどう見たってベリンダ嬢の無知さしかわからない)」
アレクシスは心の中でツッコミを入れた。
どうも彼女は目の前の女性が何処の誰か理解していないようだ。
彼女の父親はよく理解しているので真っ赤な顔を真っ青にして卒倒し掛けた所を宰相の部下に連れて行かれた。宰相もいないのでそういう事なのだろう。




