第7話 大豊作と嫌がらせ 4
王都までは乗り合い馬車で7日かかる。しかし、郵便は2日、速達郵便なら1日。これがこの国の事情だ。
私が領地に戻った翌日、商業ギルドの監査官がハータン商会にやってきていた。
罪状は「バルトロ商会に対する鉄の販売権侵害」と「鉄製品の不当廉売」だった。
しかも商業ギルド支部長まで出張ってきているため、護衛名目として冒険者ギルド長が見物に来ていた。
「これはこれは、冒険者ギルド長。上客がいなくなるところを見に来られたのですか?」
「はて? この商会がなくなるのであれば、冒険者ギルドが独自に武器を調達せねばならなくなるのでな」
「それならバルトロ商会に任せればいかがかな?」
「あんなセコい商会に頼んだら、それこそ信用問題になる」
「そうですか。それは残念でしたね……おい、査察長! 調べはどうなっている?」
カナン査察長は、ユーグリットが提示した帳簿を見て愕然としていた。
第一に、入手金額。
バルトロ商会が値上げする前の価格で仕入れている。しかも、その入手先を見て驚いた。
「なに? 王立商会だと……!?」
ユーグリットとカナン査察長は、商業ギルドで同じ「左遷組」だった。理由は上司からの受けが悪かったこと。つまり、二人とも有能なのだが世渡りが下手だったため、無能な上司に飛ばされた口だった。
ユーグリットはかつてカナンをスカウトしたのだが、カナンは頑として転職を拒否したという経緯があった。しかし、カナンは目の前の事実をそのまま商業ギルド長に報告した。
するとギルド長は「そんなはずはない!」と報告書を破り捨て、自ら王都の商業ギルド本部へ告発状を送った。ハータン商会が虚偽の証言をしているとし、その内容は以下の通りだった。
『帳簿は虚偽まみれで、不当に安く購入してバルトロ商会に損害を与えたのは明白。ハータン商会は解散させ、商権はバルトロ商会が引き継ぐ。さらに損害賠償1億ゼニーをルード男爵家に請求する』
ギルド長は、この書類にカナンのサインを偽造して王都のギルドへ送付したのだった。
……だが、この日、王都の商業ギルドは大騒ぎになっていた。
すでに王立商会から「ルード男爵領内でバルトロ商会と商業ギルドが不正を行っている。また、王立商会がハータン商会に鋼鉄の委託販売権を与えた」と連絡が入っていたのだ。
そこへ翌日、ルード領の商業ギルドからあの嘘の告発状が届いたものだから、本部はすぐさまルード領の商業ギルドへ「調査停止命令」を速達で送付。同時に、調査団を早馬で現地へ派遣した。
ちなみに早馬を使ったため、調査団はわずか3日でルード領に到着したのだった。
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次回、「第8話」は【明日の07時】に更新予定です!
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