第50話 何故こうなる?
王立劇場での大熱狂リサイタルを終え、心身ともに疲弊しきった私は学園へと戻ってきた。
(はぁ……これでやっと静かな学園生活に戻れるわ……)
そう思いながら中庭を歩いていると、何やら異様な光景が目に飛び込んできた。
中庭の東屋で、この国の未来を担う超VIPたちがテーブルを囲み、なにやら非常に和気藹々と談笑しているのだ。
1. シャルロット王女殿下 & ギルフォード・ヴァイス
2. 第一王子エドヴァルド様 & イザベラ・フォン・シュタイン
3. 第二王子フェリクス様 & ローランド・フォン・ヴァイス
「……えぇぇ(困惑)!?」
私は思わず物陰に隠れ、二度見した。
(ギルフォード様とお茶会をしたシャルロット様は、お茶会で完全に破談になったはず。それなのに、なぜ第一王子とイザベラ様、さらに第二王子とヴァイス家の次男まで混ざって仲良くなっているの!? 一体どう化けたらそうなるのよ!?)
私がパニックになりながら耳をすませると、彼らの会話が風に乗って聞こえてきた。
「ギルフォード卿、昨日のハーマインの『ダンシング・ヒーロー』のキレのあるステップ、ご覧になりましたか!? あのお姿こそ真の天使ですわ!」
「ええ、シャルロット殿下! 私はあの最後の『ヤングマン』で腕を掲げた瞬間、ハーマインに一生仕えようと誓いました!」
「分かるぞ、ギルフォード! あの歌声は我が王国の宝だ! イザベラ、お前がいつもハーマインを絶賛していた理由がようやく分かった!」
「でしょう、エドヴァルド殿下! ハーマインは我がシュタイン家の至高の宝ですのよ!」
「フェリクス殿下、ハーマインは歌だけでなく、あの戦場で見せた戦術眼も神がかっておられます……!」
「うむ! ローランド、我が王国は彼女を絶対に手放してはならん!」
……そう、彼ら三組が急接近して超絶仲良くなった理由。
それは、私のアドバイス通り「お茶会で別の者を思い切り褒める」を実行した結果、全員が『ハーマイン様の凄さと尊さ』を熱弁し合い、狂信的な推し仲間として固い絆で結ばれてしまったからだった。
(……私のアドバイスのせいだぁぁぁッ!!)
自分のまいた種とはいえ、頭を抱えて崩れ落ちそうになる私。
⭐︎⭐︎⭐︎
そこへ、事情を何も知らない一般生徒の取り巻きたちが近づいてきた。
「あら、ハーマインさん。王立劇場で歌ったんですって? 歌“だけ”は上手だなんて、芸人としては大したものね」
「ええ、いくら歌が上手くても、小柄でちんちくりんなアスタリスクエフには変わりないわ」
「男爵家でその見た目じゃ、お婿様なんて一生現れませんわね! おーっほっほ!」
さらに、私と同じ男爵家の二男や三男の男子生徒たちまでもが、遠慮なく好き勝手なことを言い捨てる。
「俺、三男だけど……歌じゃ飯は食えないから、ごめんな」
「あんな遠くのルード領に行くのは勘弁してくれよ」
「アスタリスクエフは無理だって」
「だよね、小さすぎるし」
なお、物陰でその会話を聞いていた教会関係の生徒や、裏事情を知る東屋のVIPたちは(バカ者どもめぇぇッ! なんという恐ろしいことを……!!)と顔面蒼白になり、今にも泡を吹いて倒れそうになっていた。
しかし、当の私はといえば、引きつった笑みを浮かべることしかできなかった。
(……ああ、今年も惨敗ね)
高位の貴族たちは私の裏の功績や力を知っているけれど、身分差がありすぎておいそれと結婚の申し出などできない。一方で、下位の貴族たちには私の国家規模の功績は極秘扱いとして伏せられている。そもそも下位貴族は遠方のルード領へ温泉旅行に行くことすら許されず、王都のスーパー銭湯で満足させられているのだから、知る由もないのだ。
こうして、どれだけ世界を揺るがす偉業を成し遂げても、学園での評価だけは相変わらず「お婿さんの来ないアスタリスクエフ」のまま。
私の惨敗の年は、こうして幕を閉じるのだった。
「ハーマイン頑張れ!」「この勘違い(オチ)はひどい(褒め言葉)」など、少しでもクスッとしていただけましたら、
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