第51話 ゴムとパンツ
いいお婿さんを迎えるという作戦は見事に失敗した年だった。もう、ため息しか出ない。
(来年こそ頑張ろう……!!)
学園生活も終わり、私はルード領へと戻る。月で言うと3の月から4の月までの約一か月のお休みとなる。そういえば年末年始は王都の屋敷に滞在し、国王陛下への新年のご挨拶もあったため、私もルード男爵として挨拶をする羽目になったのだった。
(なぜだ……13歳児にこんなことをさせるなんて……私のスローライフ生活はどこへ……)
とりあえず、王都と領地を結ぶ鉄道は現在1日1便。安全面を考慮して時速40キロメルテで約10時間かかるが、それでも馬車鉄道の高速便で2日かかっていた頃に比べれば遥かに早くなった。
「ハーマイン様!! この件ですが」
領地に戻り、ハータン商会へ顔を出すと、早速ユーグリットとカナンの二人が書類の山を持ってやってきた。優秀なのは良いことだが、容赦がない。
「ハーマイン様。ゴムの生産に余剰が出てきております」
「どういうことだ、カナン?」
「実は理化学研究所と陸軍工廠がゴムの効率的な生産方法を発見いたしまして、最近ゴムが余り始めていまして」
「どのくらいなの?」
「余剰は月に1ドン程度あまり、何か使い道はないかと模索しているとのことです」
「あそこも優秀だなあ」
「それはハーマイン様ほどではありません。ほとんどはハーマイン様のアイデアと方法を実現化しているにすぎませんので」
「そうなの?」
「そうです。それより、このゴムはどういたしましょう?」
「そうねぇ……ゴムをこのくらい細くすることはできますか? できれば白くして」
「白くですか?」
「そう」
「しかも、細く?」
「そう」
◇◇◇
すると翌日——。
「ハーマイン様。できました」
「はぁ!? 昨日の今日だぞ? なんでそんなに早くできるんだ!?」
「実は、ゴムを白くすることと細くすることは以前、ハーマイン様が研究所に寄られた際に仰っていたので、すでに実験が終わっていたようです」
私はその時のことを思い出した。
(確かに言ったわ……!)
「それで、これをどうされるのですか?」
「パンツを持ってこい」
「パンツ、ですか?」
「そうだ」
カナンは不思議そうな顔をしながらパンツを持ってきた。しかも男物を。
この時代のパンツはズロースに近い感じだった。特にゴムがないので、最後に『紐』で結んで縛るタイプになっている。
「なんで男物を?」
するとユーグリットが助け舟を出した。
「カナンは男ですので、男物を持ってきたかと」
「そうだったわね……じゃあ、ユーグリットと話をしよう」
「その方が良いようですね。では」
カナンがその場を離れようとすると、私は声をかけた。
「カナン! これの日の生産量と、パンツの日の生産量を調べてくれ!」
「わかりました。しかし、パンツはまだ家庭内手工業ですので、生産効率が悪いですね」
「そうか……だったら、工場で一括生産することは可能か?」
「そうなると、内職に頼っている領民の収入が減ってしまいます」
「わかった。もう少し考えてからにしよう」
そして、私はユーグリットとズロースの改良案を練った。まずはズロースの『紐』の部分にゴム紐を入れて、結んでみた。
「どう、ユーグリット?」
「これは良いですね! 『紐』を結ばなくて済むのは特に楽です」
「そうよね。それで、ここを短くして、ここはこうしてみて?」
昔の記憶を頼りに、現代のパンツの形に近づけていく。
「え? 大丈夫ですか?」
「やってみて」
「わかりました!」
こうして出来上がった、試作品1号。
「いいですね!」
今回は他の女性スタッフにも入ってもらい、履き心地や改善点について話し合った。そこで出たのが、ある女性スタッフの一言だった。
「前にあった蝶結びがなくなったのは、少し寂しいですね」
「だったら、ここに小さなリボンをつけてみない? そうじゃないと前後もわからないし」
「そうですね! やってみましょう!」
こうして完成した『ワンリボン付きゴム入りパンツ』。
これはイケる、と手応えを感じていた私の元に、明日、最初のお客さまがやってくる。
シャルロット様とイザベラ様だ——。
「ハーマイン頑張れ!」「この勘違い(オチ)はひどい(褒め言葉)」など、少しでもクスッとしていただけましたら、
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