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規格外の『*.*SSS(アスタリスクエス)』なのに平民以下扱い!? TS転生した貧乏令嬢、領地改革で気づけば溺愛されていました  作者: ろんどんべると


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第5話 大豊作と嫌がらせ 2


バルトロ商会の「鉄の値上げ」という横暴は、あっという間に領内に深刻な影響を及ぼし始めた。


「おい! 鍬(くわ)1本買うのに、なんで去年の倍以上の金を出さなきゃならねえんだ!」


「剣の刃こぼれを研ぎ直してもらうだけで銀貨が飛んでいくぞ! 冒険者をやめろってのか!?」


真っ先に悲鳴を上げたのは、農民たちと冒険者ギルドの面々だった。

彼らは必死で地元の鍛冶屋やハータン商会へ駆け込んだが、返ってくるのは


「バルトロ商会の鉄が高すぎて仕入れができず、商品を作れませんの」


という申し訳なさそうな返答ばかり。

しびれを切らした領民たちの不満は、鉄を独占しようとするバルトロ商会へと一気に噴出した。


「ハッ! 貧乏人どもが騒いでやがる」


だが、バルトロ商会の支店長は鼻で笑っていた。

彼らは領外から粗悪で安い鉄を大量に仕入れ、それを 

「輸送費がかかっている」


と言い訳して従来の倍以上の高値で売り出し始めたのだ。まさに火場泥棒のような暴利である。

当然、怒った領民や冒険者たちは商業ギルドへ押しかけ、苦情を叩きつけた。しかし、バルトロ商会からたっぷりと賄賂を受け取っているギルドの窓口は、どこ吹く風で取り合わない。


「仕入れに費用がかかっている以上、価格の上昇は仕方ありません。嫌なら買わなければいいでしょう」


商業ギルドとバルトロ商会がグルになって領民を締め上げる——。

誰もがこの暴挙に耐えるしかないと諦めかけた、その時だった。


⭐︎⭐︎⭐︎


「はぁああああっ!!???」


ハータン商会の執務室に、6歳児の絶叫が響き渡った。

書類を手に立ち尽くす私ことハーマインの前で、ユーグリットが申し訳なさそうに頭を下げている。


「で、ですからハーマイン様……王立商会のイングリッド様から、王都に設立された『ダミー会社』の正式名称についての緊急連絡が届きまして……」


「な、なんで社名がこうなった!?」


「それは……シャルロット第一王女殿下の『鶴の一声』だそうです……」


「それじゃダミー会社でもなんでもないじゃないのよ!!」



私が頭を抱えて叫ぶのも無理はない。

差し出された報告書の末尾には、可愛らしい羊皮紙に書かれた手紙が添えられていた。


『追伸:ハータン商会のハーマイン様へ。お贈りいただいた石鹸、とても気に入りましたわ! 貴女の商会を陰ながら応援するため、王立商会を通じた特別会社を設立させました。名前はすでに王室直轄として登録済みですので変更はできませんわよ? ふふ、早く貴女とお会いできる日を楽しみにしておりますわ』


『特別会社の正式名称:ハーマイン商会』


(なんてことだ……!! ダミー会社にするつもりが、第一王女殿下直々の『ハーマイン商会』になっちゃってるじゃないのよおぉぉっ!!)


王女殿下にバッチリ名前を覚えられ、しかも自分の名前を冠した会社が王都の中心に爆誕してしまった。脳裏に「目立ちたくない」という平和な未来がガラガラと音を立てて崩れ去るイメージが浮かぶ。


「た、確かに王女殿下に逆らうわけにはいかないけれど……一応、わたしからも丁寧なお礼と事情を説明する書簡を出しておきましょう……」


ガックリと肩を落とすわたしを見て、ユーグリットは


「ハーマイン様、お気持ちはお察ししますが……これで外堀は完璧に埋まりましたわ」



と、どこか楽しそうに笑っていた。


⭐︎⭐︎⭐︎


そして、ついにその時がやってきた。

バルトロ商会が


「ざまあみろ、背に腹は代えられずに高値の鉄を買うだろう」


とタカをくくっていた矢先——。


『ハータン商会、鉄製品および農具・武具の販売を大幅再開! 価格は……値上げ前の【元の値段】にてご提供!!』


領内に激震が走った。

ハータン商会の店頭には、鍛冶屋の親方たちが研ぎ澄ました高品質な鋼鉄の鍬や剣が、バルトロ商会の半額以下の安値でズラリと並べられたのだ。


「う、嘘だろ!? バルトロの半額以下だぞ!」 


「しかも出来がダンチだ! 軽くてズバズバ切れる!」


「ハータン商会万歳! 鍛冶屋の親方たち万歳だ!!」


領民や冒険者たちが殺気立った勢いでハータン商会へ押し寄せ、商品は瞬く間に飛ぶように売れていく。

一方、高値で粗悪な鉄を仕入れまくっていたバルトロ商会の店からは、ピタリと客足が途絶えた。


「な……なんだとぉおおっ!? なぜあんな安値で出せる!? どこから鉄を仕入れたんだ!?」


顔を真っ青にしたバルトロ商会の支店長は、すぐさま悪徳商業ギルドの幹部のもとへ駆け込んだ。


「ギルド長! 不当廉売(ダンピング)だ! ハータン商会は市場の価格を破壊しようとしている! 今すぐあんな生意気な新参商会、商権取り消し(営業停止処分)にして握り潰してください!!」


「フッ……分かりました。我が商業ギルドの権限をもって、ハータン商会をギルドから追放し、二度と商売ができないよう潰して差し上げましょう」


自分たちの不正や嫌がらせを棚に上げ、商業ギルドの権限を使ってハータン商会を物理的に抹殺しようと動き出したバルトロ商会。


だが、彼らはまだ気づいていなかった。


ハータン商会が仕入れているその鉄の背後に……『第一王女殿下』と『王立商会』の巨大な影が控えているという決定的な事実に。


最後までお読みいただきありがとうございました!


次回、「第6話」は【本日の12時】に更新予定です!


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