第42話 帝国軍10万 対 王国軍5万
帝国軍は、調査隊を送った。すると、砦まで土石流で埋め尽くされ、帝国軍1万は、土の中に埋もれていた。
「これはひどい」
「確かに、それにしても、『天使の加護』を持つ少女は運がいいらしい」
「これも『天使の加護』ってやつですかね」
「わからん。それに砦も全部埋もれて跡形もない」
「ここもひどいっすね」
こうして、ハーマインが逃げられたのは、単に運がいい 局地的な大雨と土石流によるものと断定したのだ。当然、例のミステリーサークルは土石流に飲み込まれ残っていないので、帝国はそう思ったのは、当然と言える。
そして、帝国はこれで山越えの戦略が使えなくなった。山越えルートの道が土石流によって完全に使えなくなったのだ。
「山越えルートが使えないぞ」
「だとすれば、ミッド平原を突破するしかない」
「そうなると物量が完全にものをいう。とにかく、軍勢をかき集めろ!!」
こうして、この後、歴史的に『天使様の災禍』として語り継がれることになる『ミッド平原の戦い』が始まったのだった。
☆☆☆
ルード領では、お父様が困り果てていた。本来なら騎士団を派遣しなければならいのに前の反乱で騎士団がいない。ということで、ハーマイン率いる自衛隊戦闘部隊500名と兵站部隊100名に集合がかかった。
「諸君!!今回の戦いは、物量において圧倒的不利となる。そのため、青龍刀と連弩を武器の中心として戦うことにする。よって、連弩隊300名、青龍刀隊200名と兵站部隊100名に分け、それぞれ、各小隊ごとに密集陣形で戦いを行う。いいな」
「はい」
「ハーマイン様」
「どうした?」
「なぜ?砲兵隊を使わないのですか」
「バカ者!!あれを使えば、全世界に我々は狙われるぞ!!あれは、もうしばらく置いておく」
「は!!」
「火薬は」
「火薬は、使用できない。しかし、爆破魔石を使用する」
爆破、それは、魔力を込めるとパーンとはじける魔石のことだ。
「それををどうやって?」
「これだ」
そこには、手りゅう弾のようなものがあった。
「手りゅう弾ですよね」
「いや違う。これはピンを抜くと魔力がこもった魔石から爆破魔石へ魔力が通ずるものだ」
「そうですか、それで爆発すると」
「そうだ。ちなみに、爆発力は火薬手りゅう弾の半分程度だ。数人は死ぬくらいの代物だ」
「わかりました」
「では、作戦を伝える。まずは、連弩隊から攻撃を一斉に行う。兵站部隊は随時、補給を怠るな。そして、次にこの手りゅう弾で敵をかく乱後、青龍刀で一気に士官クラスを殲滅する。敵の歩兵はそのほとんどが農民だ。だから、士官を叩けば、単なる烏合の衆、あとは狩放題た。しかし、我々は、戦争に勝つことが目的だ。正面の敵の士官を倒したら遊軍として、次々と別の士官を倒していく。以上だ」
「了解しました」
☆☆☆
ミッド平原
帝国軍は左翼2万、本陣がある中央6万 右翼2万の合計10万
王国軍は左翼1万 本陣3万、右翼1万の合計5万
双方が、対峙したとき、ハーマイン率いる緑色をした部隊は、左翼に編成されていた。
ミッド平原に漂う、息の詰まるような重苦しい空気。
地平線を埋め尽くすガリア帝国10万の黒い軍装。対する王国軍5万の陣列。
王国軍の左翼を任された将軍や騎士たちは、怯えと緊張で汗をダラダラと流していた。
「くそっ……ガリアの野郎ども、まさか10万も集めてくるとは……! 左翼の我ら(1万)は、敵の右翼2万と正面衝突だぞ……!」
そんな悲壮感あふれる王国軍の陣列の最前線で、一際異彩を放つ部隊があった。
全員が統一された緑色の戦闘服を身に纏い、背には『連弩』、腰には異形の長刀『青龍刀』、そして胸元には『魔導手榴弾』を装備した、ルード自衛隊500名である。
その中央で、小柄な12歳の少女——ハーマインが、双眼鏡と測距機を交互に覗きながら冷ややかな声で命じた。
「いい? 相手は2万だけど、焦る必要は一切ないわ。狙うのは馬に乗っている重装騎士と指揮官(士官)だけ。頭を潰せば、あとはただのパニックを起こした羊の群れよ」
「「「イエス、マム!!」」」
「誰がマムだ!!」
ハーマインの爆速ツッコミが飛ぶ中、兵站部隊(100名)が素早く連弩の矢箱と魔石手榴弾のコンテナを各小隊へ配給していく。
「連弩隊300、初手は『高圧風魔法』の着弾と同時に無差別連射。敵の前衛が混乱した瞬間に、魔石手榴弾を投擲。煙と爆音で視界を奪ったところへ、青龍刀隊200が突入して士官の首だけを正確に狩る……。完璧な『お掃除』の工程ね」
ハーマインは小さく不敵な笑みを浮かべ、右手を高く掲げた。
☆☆☆
一方、対峙するガリア軍の右翼(2万)の指揮官は、王国軍の左翼の端にいる小さな緑色の部隊を見て、鼻で笑っていた。
「ハッ! ろくな装備も持たぬ、緑色の奇妙な小軍勢か! 踏み潰せ! 我らガリアの鉄騎兵で一滑りに踏み荒らしてくれようぞ!!」
開戦の太鼓がドスン、ドスンと響き渡る。
ガリア帝国10万と、ハーマイン率いる500名の「死神たち」——歴史に刻まれる『天使様の災禍』の火蓋が、ついに切って落とされようとしていた。
「ハーマイン頑張れ!」「この勘違い(オチ)はひどい(褒め言葉)」など、少しでもクスッとしていただけましたら、
リアクション
ページ下部の【ポイント評価(★★★★★)】
【ブックマーク】
で応援していただけると大変励みになります!




