第41話 大脱走
私がぶっ放した光魔法は、外にいた連中を除いて、砦を完全に吹き飛ばし跡形もなくなった。
「いったい何が起きた!!」
外にいたAAランクの隊長とAランクの4名は、無事だったが目の前で起きたいる出来事を見て、事態を把握することすらできなかった。そして、AAランクの隊長が目の前でAランクの部下の首が次々と飛んでいく様子を目の当たりにし、ただ怯えた。
「な…何が…一体何が起きている」
すると耳元で
「神への祈りは済んだかね」
それがAAランクの隊長が最期に聞いた言葉だった。
ハーマインは、腰を抜かしているエドヴァルトとローランドの首根っこつかんだ。
「ひっ!!」
そして、二人をひきづって外にある馬車に彫り込んだ
馬車を動かしてしばらくして、彼女は後ろに向かって、再び光魔法をぶっ放した。
砦があった付近をすべて跡形もなく消し去り、最後にミステリーサークルのような模様を残したのだった。
☆☆☆
一方、帝国軍1万は、砦の方から巨大な光が立ち上ったのを見て、王国の越境攻撃だと進軍を開始し始めたのだった。
ハーマイン達が乗っていた馬車は、軍用でもなく、民間の素朴な馬車。それしかいなかったのだ。だから、ハーマインが必死に手綱を捌いても、速度には限界がある。しかも、馬も弱いときている。
後ろに迫る帝国軍一万
ハーマインは、エドヴァルトに向かって叫んだ。
「殿下!!手綱を!!」
「ハーマイン何をする気だ」
するとハーマインは、山に向かってエアーカッターを放った。しかし、山は少ししか崩れない。
「あいつ!!エアーカッターをどこに撃っているんだ」
「ひるむな!!相手は、限界だ!!進め」
「「「おお!!」」」
ハーマインは、エアーカッターを次々と山に向かって撃っていった。
「やはり!!あいつは限界だ!!」
すると次の瞬間、天空が一瞬にして暗黒に包まれ雷鳴とどろく中、豪雨が降りだした
「ハーマイン!!もう終わりだ!!」
エドヴァルドが叫んだ瞬間、馬車の後方で大規模な土石流が発生し、帝国軍1万を飲み込んでいった。
☆☆☆
帝国軍一万は、目の前で起きた悪夢のような光景に、叫ぶことすら許されず土石流の激流へと飲み込まれていった。
「ひ、引き返せ! 土石流だぁぁぁッ!!」
「うわあああぁぁぁッ!?」
ハーマインが山肌に撃ち込んでいた無数のエアーカッターは、単なる嫌がらせや打ち損じなどではなかった。山体内部の地盤をピンポイントで破砕し、意図的に大規模な深層崩壊(土石流)を引き起こすための「誘導穿孔」だったのだ。
天を刺す雷鳴と豪雨が地盤を一気に緩め、崩落のトリガーを引く。
数分前まで意気揚々と進軍していた一万のガリア帝国軍は、ハーマインが計算し尽くした自然の脅威によって、あっという間に崩落した膨大な土砂と泥流の底へと泥沈していった。
生き残ったわずかな後方部隊の兵士たちは、武器を投げ出し、腰を抜かして泥まみれになりながら絶叫した。
「て…天使様に逆らった罰だ…! 天子様の加護は本物だ!!」
そう叫んで泥に飲まれていった。
◇
「……ふぅ。これでひとまず追っ手は巻けましたわね」
ハーマインは、エドヴァルド王子から手綱をひきとると、笑顔をみせた。その笑顔を見たエドヴァルド王子は、恐怖で背中が凍るという現象を初体験した。一方、ローランド様は、馬車の中で、完全に白目を剥いて気絶していた。
「は……ハーマイン……お前……山を……崩して……一万の軍を……」
「あら、殿下。わたくしのような可憐な少女にそのような大層な芸当なんて、できるはずがありませんでしょう? 全ては……そう、『天使様のご加護』による奇跡的な大雨による土石流ですわ」
ハーマインは完璧な令嬢の笑みを浮かべ、すっと人差し指を口元に当てた。
「いいですわね? 殿下も、ローランド様も。……『天使様の加護で助かった』それ以外は何も見ていませんし、誰も何もしていませんわね?」
「「ひ、はいぃぃぃぃぃッッ!! 天使様のご加護ですッ!! 僕(私)たちは何も見ていません!!」」
目の前で砦を消し飛ばされ、AAランクの隊長を一瞬で首狩りされ、一万の軍隊が土砂に埋まる様を見せつけられた二人にとって、ハーマインの「可憐な笑顔」は世界で一番恐ろしい死神の微笑みにしか見えなかった。箝口令など出されるまでもなく、死んでも口を割らない誓いがここで完成したのだった。
こうして、ガリア帝国の「ハーマイン誘拐作戦」は、自国の特殊部隊壊滅、砦の消失、そして一万の軍勢が土石流で全滅するという、帝国史上最大の「自爆惨事」として幕を開けるのであった。
「ハーマイン頑張れ!」「この勘違い(オチ)はひどい(褒め言葉)」など、少しでもクスッとしていただけましたら、
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