第37話 試験結果と嫉妬の嵐
反乱騒動が収まり、王都の学園には一見穏やかな日常が戻った……かに見えた。
しかし、学園の裏では「次期王室の婚約者レース」という名の静かなる戦争が勃発していた。
第一王子エドヴァルド様の婚約者候補には、我が友人でもあるシュタイン公爵家のイザベラ様と、華やかなロザリンド様の名が。
そして第二王子フェリクス様の婚約者候補には、あのヴァイス公爵家の令嬢であり、ギルフォードの妹であるローランド・フォン・ヴァイスの名が挙がっていたのである。
⭐︎⭐︎⭐︎
ことの始まりは、学園の定期筆記試験の結果が掲示板に張り出された日だった。
1位:ハーマイン・ルード
2位:フェリクス・フォン・ファーレンハイト
3位:シャルロット・フォン・ファーレンハイト
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・
10位:エドヴァルド・フォン・ファーレンハイト
「……くそっ! またしても……またしてもハーマインに届かない……っ!」
掲示板の前で、頭を抱えて膝をついているのは第二王子フェリクス殿下、いくら努力しても圧倒的首位のハーマインに勝てず、剣術では第一王子エドヴァルド様におとり、更に経済では、シャルロット王女に遅れをとっていたこともあり、掲示板の前ですっかり打ちのめされていた。
周囲の生徒たちが遠慮して近づけない中、ローランド様も声をかけずらそうにしていた。彼女は、なんとかしたいと思ったいるに違いない。
なので、ここで私がフェリスク王子殿下に声をかけるのは、やめて彼女に声をかけようとした時だった。
なぜか、フェリスク殿下が私に声をかけてかけてきた。
「ハーマイン!次こそ、お前に負けないからな」
(なんでここで声をかけてくるかな。うっ!ローランド様が睨んでますわ。しかし、ここでフェリスク殿下を無視するわけにもいかない。胃が痛い)
「これはこれは、フェリスク殿下。私のようなのな家柄にも、お声がけくださり、ありがとうございます。ところで如何なされたのですか?」
「ハーマイン。だから、次こそは、お前に勝つといっているのだ」
「いきなり何をおっしゃっるかと……二位でも十分素晴らしい成績ですわ」
「ハーマイン……っ。くそっ、僕はいくら勉強してもお前に勝てない! その上、軍事ばかりで座学は10位程度のエドヴァルド兄上が『第一王子』として持て囃され、シャルロットは、商才があると持て囃されているのに、なんで、お前が俺の前に立ち塞がるんだ」
「フェリスク殿下、落ち着いて、落ち着いて」
「えっ?」
荒れるフェリクス殿下に、私は、柔らかく諭すように語りかけた。
「殿下、焦る必要はございませんわ。試験は、一回勝負です。なので、勝った負けたは、時の運、ただ、私が試験の山がうまく当たり続けいるにすぎませんわ。しかし、大事なのは、今後、殿下が王国の為に、ここで学んだことを活かせるかですわ」
「学んだことを活かす?」
「そうですわ。フェリスク殿下は、広くしかも思慮深い知識をお持ちになっております。なので、殿下の能力を活かせる役割りがございます」
「……役割?」
「ええ。シャルロット様は持ち前の行動力と柔軟さで『商業と物流』を牽引し、エドヴァルド様は圧倒的な武心と統率力で『軍』をお納めになる。……ならば、フェリクス殿下が担うべきは『頭脳と外交』ですわ」
「僕が……頭脳と外交……?」
「はい。武力や財力だけでは国は回りません。殿下のその緻密な頭脳と繊細さこそが、これからの王国に必要な『頭脳と外交』の要となるのです。二位などと卑屈になる必要はありませんわ。殿下は本当によく頑張っていらっしゃいます」
「ハーマイン……! 」
「そうですわ。私ごときに対して、一時的な勝負で勝った負けたではなく、フェリスク殿下には、もっと大きな仕事があります。ですから、このまま努力を続けることが大事ですわ」
ぽっと頬を赤らめ、感銘を受けたように私を見つめるフェリクス殿下。
(よしよし、これで殿下のメンタルケアは完了ね……)
と、ほっと胸を撫で下ろした瞬間——
「あらぁ? 随分と楽しそうですわね、ルード男爵令嬢?」
粘りつくような高飛車な声とともに現れたのは、フェリクス殿下の婚約者候補筆頭、ローランド・フォン・ヴァイスであった。
(さっきまで、フェリスク殿下が癇癪を起こしそうで、ヤキモキしていたくせに。あれはあんたの仕事なのよ!!)
しかし、彼女は、なぜか、私に
「ど田舎男爵令嬢風情が試験で一番をとったからと言って、殿下に声をかけるのは、如何なものかと」
「はい。おっしゃる通りです。てすから、あとはローランド様にお任せいたします。ほほほほほ」
こうして逃げたまではよかったはず。
⭐︎⭐︎⭐︎
しかし、私は、放課後、ローランド様とそのお仲間にかこまれていた。
「殿下の婚約者候補でもない『ど田舎男爵家』の小娘が、気安く殿下に口を挟むなんて……身の程を知りなさいな!」
ローランドは嫌味な笑みを浮かべると、取り巻きを引き連れて私の周りを囲み、チクチクと嫌がらせ(痛ぶるような言葉の攻撃)を始めてきた。
「だいたい、商売で調子に乗って……本当におこがましいわ!」
(うわぁ……典型的ないじわるお嬢様ムーブだわぁ……めんどくさ……)
私が内心で生あたたかい目をしながら受け流していると——突如、背後から恐ろしいほどの殺気が立ち込めた。
「「……ちょっと、待ちなさいな」」
ドスの効いたハモり声とともに現れたのは、シャルロット様と、イザベラ様であった。
その目は一切笑っておらず、背後にはメラメラと漆黒の『嫉妬と激怒の炎』が揺らめいている。
「ローランド様? 我が親友であるハーマインを……その汚い言葉で痛ぶるなど、万死に値しますわよ?」
「そうですわ! ハーマインに気安く触れていいのは私だけですの! なのにフェリクスといい、あなたといい……ハーマインを奪おうとするなんて絶対に許しませんわ!!」
「ひっ……!? な、なに目よその顔は……!?」
イザベラ様の公爵家令嬢としての圧と、シャルロット様の重すぎる愛の双璧に挟まれ、顔面蒼白になるローランド。
「え、えーっと……お二人とも、私は別に平気ですのよ……?」
私が仲裁に入ろうと手を挙げた瞬間、ふたりはバッと私の方を振り返った。
「「ハーマインは黙っていて!!」」
「ひえっ!?」
「イザベラ様! エドヴァルド殿下との婚約者レースはどうしたのですか! なぜハーマインのごときで私を睨むのです!?」
「ごときですって?あんなくだらない婚約者レースより、ハーマインの方が大事に決まっていますわッ!!」
「ひえっ!」
激しく燃え上がる嫉妬の炎と、巻き込まれて逃げ惑うフェリクス殿下、そして涙目になるローランド様は、私に助けを求めて、顔を向けると。
「ローランド?なぜ、ハーマインを見るのですか」
「ひっ!!シャルロット王女殿下」
「そうですわ」
(……な、なんで王子たちの婚約者レースの話だったはずなのに、私のことでローランド様がそのお仲間たちが)
私は、静か成仏してくださいと合掌をしたのだった。
ガリア帝国という巨大な外敵が迫っているとも知らず、王宮と学園の人間関係は、一足早くカオスな大火の海へと包まれていくのだった。
「ハーマイン頑張れ!」「この勘違い(オチ)はひどい(褒め言葉)」など、少しでもクスッとしていただけましたら、
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