第34話 領地での反乱 3
『エリアハイヒール』の奇跡によって傷ついた領民たちを救い出した後、私はユーグリットから敵の全容についての報告を受けた。
今回の反乱の黒幕は、かつてハータン商会に敗れて追い出された「バルトロ商会の元支店長」と、汚職で追放された「商業ギルドの元支部長」の二人。
奴らは各地から掻き集めた300名のならず者を冒険者に見せかけて領都へ侵入させ、さらに買収した我がルード家騎士団100名を内応させていたのだ。
それだけにとどまらず、領都の外にはヴァイス公爵家が密かに派兵した精鋭騎士団100名が待機しているという。
「……なるほど。計500名の大規模な不法侵入および反乱ね」
先ほどの広場での戦闘で、裏切り者のルード家騎士団長率いる50名は私が叩き潰した。残り450名。
敵の残党は現在、商業ギルドとバルトロ商会の支店拠点を占拠しており、冒険者ギルドは内部から裏切り者が出たことで完全に機能停止していた。
「……よし。市街戦になれば領民に被害が出る。まずは外敵から片付けるわ」
領地防衛にあたる自衛隊は、すでに、領都まで1キロメルテのところまで進軍、砲台設置準備が整っていた。私は、電信で即座に砲撃要請を出した。
⭐︎⭐︎⭐︎
黒鉄の咆哮が轟音を鳴り響かせる
——ドドドドドォォォォン!!!!
領都への援軍を阻止するため入口を固めいたヴァイス公爵家の騎士団100名は、自衛隊が放った容赦のない遠距離重砲撃の直撃を受け、何が起きたかも理解できぬまま一瞬で肉塊となって散り、さらに、自衛隊による残敵処理で銃弾の的となり、全滅した。
一方、領都内部では、私が一個小隊を率いて、鎮圧に向かった。10名ほどの人数を見た反乱軍は、我々を舐めてかかった。
「そんな人数でBB BBBランクの俺たち勝てるとおもうか!!笑わせるぜ!」
「撃て!!」
パパン!
タターン!!
襲いかかってくる暴徒どもは、兵器の差に一瞬で、蜂の巣にされ、バタバタと倒れていった。
「ひっ!!何が起きている!」
「ここは私が!!」
そこには、ルード騎士団副団長が立っていた。
「ルード男爵令嬢、能無しのお前に何ができ!!」
ターン
「うぐ」
目の前で頭を撃ち抜かれ、倒れ込む副団長
「バカめ」
「ひっ!!撤退!!撤退!」
逃げまどう裏切りのルード家騎士団員たちの前に、私は怒りの相貌で降り立った。
「ひっ!!」
「領民を護るべき矜持を捨て、主を裏切った罪……万死に値するわ!」
シュパッ! ズバァァァン!!
手加減など一切なし。冷徹な怒りのまま、無詠唱のエアーカッターと超強化された剣技で、襲いかかる裏切り者たちを次々と叩き斬り、血の海へと変えていく。
さらに、城壁に籠もって抵抗を続けようとする残りの反乱分子に対し、自衛隊の野砲が容赦なく照準を合わせた。
バババババァァァン!!!!
頑丈な城壁ごと、反乱分子の籠もる拠点が木っ端微塵に吹き飛ぶ。
瓦礫の山から悲鳴を上げて逃げ惑う反乱分子たちを、風上に陣取った私とハータン商会の特選狙撃隊が、精度の高い銃撃で一頭ずつ狩るように確実に仕留めていった。
激しい砲声と銃声が止み、静寂が訪れた頃。
逃げ遅れた反乱分子の残党は、それぞれ「バルトロ商会支店」に20名、「商業ギルド支部」に20名、が逃げ込んだ。しかも、一般庶民のふりをし始めた。
「我々は、暴徒から逃げた庶民です。我々を救援していただきたい」
「銃口はそのままに、待機」
「領民に告ぐ、我々は、領民保護のため、暴徒の排除を行なっている。1時間の猶予をやる。速やかに領民の解放を求める。なお、武装を放棄しない場合、反逆者とみなし、攻撃を開始する」
「何を言ってやがる。それなら、武装を解除していただきたい。こちらは、善良な領民だ」
「繰り返す。領民を解放しなければ、50分後に攻撃をを開始する」
すると今度は、間抜けな話をしてきた。
「わしらは、暴徒に捕まっておる。至急助けていただきたい」
すると隊員の一人が
「捕まっている人間が助けてといえるのでしようか」
「さあな。奴らは脳まで筋肉でてきているらしい」
「流石、ハーマイン様、理に適ったことをおしゃいます」
そんな緊迫したやり取りを交わしているところへ、王都から猛スピードで駆けつけた「国王直属の親衛騎士50名」が到着した。
「ハーマイン殿! 国王陛下のお命じにより、援軍に参上いたしました!」
「感謝いたします! 敵の残党がバルトロ商会と商業ギルドの中に潜伏しています。急襲しましょう!」
「最終警告だ。速やかに領民を解放せよ。せねば、これから攻撃を開始する」
国王親衛隊と我が部隊が突入すると、中に隠れていた反乱分子、そしてコソコソと脱出の機会を窺っていた首謀者(元支店長&元支部長)が残らず身柄を拘束された。
裏切り者と首謀者たちは即座に逮捕され、領民たちの目の前、領都の中央広場にて全員その場で即刻処刑された。
さらに、押収した書類や電信記録から、本国のバルトロ商会本部および商業ギルド上層部がこの反乱に深く関与していた動かぬ証拠(密約文書)が次々と発掘されたのだった。
「これで……本国のバルトロ商会と商業ギルドにも、国から最大級の重罰(家名断絶・商会解散)の沙汰が下るわね」
⭐︎⭐︎⭐︎
反乱の鎮圧後、残された「政治的な後始末」に取りかかった。
まず、領外で自衛隊の砲撃により跡形もなく全滅したヴァイス公爵家の騎士団100名について。
私は彼らの残された武具や遺品を丁寧に回収させると、ヴァイス公爵の屋敷へと直接送り届けさせた。そして、丁寧な書状を添えたのだ。
『我がルーデ領で起きた不審な暴動に際し、公爵家の皆様が領外にて我が領地のために勇敢に戦い、名誉ある戦死を遂げられました。そのご高配に心より感謝申し上げます』
「……これでヴァイス公爵は、『反乱を裏で支援していた』とは口が裂けても言えなくなったわね」
自らの刺客が全滅させられた上に、「領地を護るために戦ってくれた名誉の戦死者」として大々的に感謝されてしまっては、公爵家としても報復や反論など一切できるはずがない。最高に嫌味で効果的な返礼であった。
……だが。
一番重く、頭を悩ませる問題が最後に残された。
それは——「裏切って全滅した我がルード家騎士団員たちの家族(遺族)をどうするか」ということだった。
主を裏切り、領民を傷つけた反乱分子の家族。本来なら連座制で処刑か奴隷に落ちるのがこの世界の常識だが、何も知らなかった妻や子供たちにどう対処すべきか。
復興の煙が上がる領都を見つめながら、私とお父様は重い沈黙に包まれるのだった。
「ハーマイン頑張れ!」「この勘違い(オチ)はひどい(褒め言葉)」など、少しでもクスッとしていただけましたら、リアクション、ページ下部の【ポイント評価(★★★★★)】や【ブックマーク】で応援していただけると大変励みになります!




