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規格外の『*.*SSS(アスタリスクエス)』なのに平民以下扱い!? TS転生した貧乏令嬢、領地改革で気づけば溺愛されていました  作者: ろんどんべると


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第25話 実習前夜と電信の開通


——実習が始まる数日前のこと。


「今から実習の説明をする。今回はパーティーは作らず、全員で戦う。特に男子、Aクラスには文系女子もいる。一応、自己防衛できるまでに訓練はさせてあるが……今年は『アスタリスクF』もいる。クラス全員、怪我なく帰れるように配慮しろ」


教官の言葉に、クラスの一部を除いた大半の生徒たちが、冷ややかな白い目で私を一斉に見てきた。


(足引っ張るなよ、落ちこぼれ)……という無言の圧力が、今にも聞こえてきそうだ。


「教官!! ハーマインには、この実習は厳しすぎるのではないでしょうか!」


ある男子生徒が教官に向かって進言すると、教官は痛々しそうな顔で深く頷いた。


(……はぁ、まあ無理もないわよねぇ)


そう、思い出すのは昨日のことだ。

とうとう逃げきれず、エリスと手合わせをさせられてしまったのだ。あの時のエリスの表情といったら……「戦いたくて仕方ない!」という爛々とした瞳で本気モードで挑んできたのだ。


(あいつ……自分の立場が私の『隠密騎士』だってこと、まさか忘れてないでしょうね本当に!?)


私がエリスの激しい剣を受け、ド派手に「5メルテ(※約5メートル)以上吹き飛ばされたフリ」をして降参したから良かったものの、あのまま真面目に打ち合っていたら、訓練場はおろか周りの校舎まで甚大な被害が出かねなかったのだ。今度、本気でお灸を据えておかないとダメね……。


だが、その「派手に吹き飛ぶ可憐な私」を目撃したクラスメイトたちは、私の弱さを確信してしまったらしい。


あの時、同じ文系クラスの公爵令嬢たちが慌てて駆け寄ってきて、エリス先生に猛抗議してくれたのだが……そんな親切な彼女たちですら、今は「足を引っ張らないでね」という哀れみの混ざった目線を向けてきている。


「——という訳だ。各員、しっかり準備をしておくように」


教官が説明を締めくくる。

要するに今回の実習は、実質的に「婚活・アピールイベント」の要素が大きいのだ。


特に男子生徒にとっては、気になる令嬢の前でカッコいいところを見せる絶好の機会。実習が終わった翌日には親睦を深める「お茶会」が行われ、最後には夏休み直前の「ドレス着用パーティ」が開催されるという素晴らしい(?)お膳立ての流れになっている。


そのため、実習の現場には各貴族家から凄腕の護衛たちが参加し、中には息子の晴れ姿を見届けるために親まで押しかけてきている。


現れる魔物といえばボーンラビットやスライムなどの低級な雑魚ばかりで、それ以上の危険な魔物が立ち入らないよう、護衛の大人たちが周囲をガチガチに見張っているのだ。


(というか……私、ここ来たことあるのよね。というか、この奥にある『魔の森』へ行く時の通り道でよく通るんだけど、ガイウルフクラスの魔物すら出たことがない安全地帯じゃない……)


安全すぎる庭庭でキャッキャと戯れる同級生たちを想像し、私は密かに溜息をついた。


☆☆☆


放課後。

私はシャルロット様とイザベラ様に「少し用事がありますの」とお断りを入れ、一人で『ハータン商会』へと足を進めた。


実は今日、理化学研究所が開発を進めていた『モールス信号器(電信機)』の通信実験を行うことになっており、その立ち会いに向かっているのだ。

商会の奥にある実験室に入ると、技師が興奮した様子で駆け寄ってきた。


「ハーマイン様! たった今、遠方の研究所から電文が届きました!」


「内容は?」


『オ・チ・ヤ・ガ・コ・ボ・レ・タ(お茶がこぼれた)』


カチカチと音を立てて印字された用紙を見せる技師。


「素晴らしいわ。成功ね。……よし、これを返信してちょうだい」


「えっ……こ、これをですか!?」


提示した文字列を見た技師が目を丸くする。それは、通信エラーや失敗を偽装するための事前に定めた暗号電文だった。


「そうよ。打って」


『ク・ジ・ラ・ガ・ハ・イ・ツ・タ(クジラが入った)』


私が指定した電文を打ち込むと、数秒後、向こうの研究所から「正しく復号できました! 成功です!」という確認の電文が返ってきた。


『エ・ン・ゲ・ー・ジ(エンゲージ)』


「……よし、通信実験成功ね!」


暗号化と復号のプロトコルが完璧に機能したことを確認したその瞬間、電信機が再びカチカチと激しい音を立て、新たな電文を受信した。


『バ・シ・ヤ・テ・ツ・ド・ウ・ゼ・ン・セ・ン・カ・イ・ツ・ウ(馬車鉄道、全線開通)』


「……素晴らしいわ!!」


ルード領で進めていたインフラ整備——効率的な物流を可能にする馬車鉄道の全線開通の知らせだった。

学園で「落ちこぼれのアスタリスクF」として扱われている裏で、私の主導する近代技術と産業改革は、着実にこの世界を変えつつあったのだ。


手応えを胸に、私は不敵に笑みを浮かべた。

こうして、嵐の予感しかしない演習当日を迎えたのだった。

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