第23話 千の剣と私
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ドカァァン! ガガガガンッ!!
演習場の石畳が激しく砕け散る。
私はただひたすら、なりふり構わず逃げ惑っていた。
(な、なんでだ!? なんでこんなことになってるのよぉぉぉっ!?)
ヒラリ、ヒラリと、紙一重でエリスの猛攻を回避していく。
……いや、正しくは「必死にギリギリで避けているフリ」をしているだけだ。
本気を出せば簡単に流せるのだが、下手に凄腕っぽさを見せると余計にバトルが長引いてしまう!
しかし、エリスは感心したように目を輝かせた。
「これを……この距離で全部避けるの!? ふふっ、まだ余裕がありそうね、ハーマイン!」
「ぐ、偶然です! たまたま体が勝手に動いただけですってばぁ!」
「そんなはずないでしょう! 私の連撃を『たまたま』で避けられる人間がいてたまるか!」
「はいっ! その通りです!!違う。たまたまですって(涙)」
ふと観客席を見上げると、いつの間にかギルド中の冒険者たちが集まってきており、大歓声を上げて盛り上がっていた。
「いけぇぇぇ! エリス様ぁぁぁ!」
「負けるなよ、小さきAAAランクの嬢ちゃん!!」
「すげぇ……目にも留まらぬ頂上決戦だ……!!」
(気楽に観戦してんじゃないわよ、この脳筋ども!!)
私が心の中で絶叫していると、エリスがスッと間合いを取り、両手で剣を高く掲げた。
全身から溢れ出る、桁違いの密度の魔力。
「……仕方ないわね。本気で行くわよ、ハーマイン!」
「えっ……待っ……」
「秘技——『千の剣』!!!!」
無数の剣気があたかも千本の刃となって、嵐のように私へ襲いかかってくる!
(うわぁぁぁぁっ!? マジで倒しにかかってきてるじゃないの!!)
一瞬、反射的に「反撃して叩き伏せるか?」という考えが頭をよぎる。
……だが、ここでギルド最高峰の『千の剣』を倒してしまったらどうなる?
間違いなく明日から学園でもギルドでも大注目され、私の夢である「平穏なぐうたら生活」は永遠に露と消える!!
(倒したら絶対にヤバい……! でも、この技をどうにかしないと……あっ!?)
閃いた。
私は迫り来る剣気の嵐と、その中心にいるエリスに向かって一直線に踏み込んだ。
そして——絶妙なタイミングで、彼女の胸元へと飛び込んだのだ!
ギュッ!!
「——えっ!?」
完璧に技を繰り出そうとしていたエリスの身体が、ピタリと止まった。
私が勢いよく彼女の腰に抱きついたからだ。
「う、嘘……!? な、なに……っ!?」
至近距離で抱きつかれ、完全に思考停止に陥るエリス。頬が一瞬で真っ赤に染まっていく。
私はエリスの腰にしっかりとしがみついたまま、ハァハァと息を吐きながら観客席とエリスに向かって宣言した。
「参りました! わたしの負けでいいです!!」
「「「…………えぇぇぇぇぇっ!?」」」
演習場全体に、この日一番の困惑と衝撃の声援(?)が響き渡ったのだった。




