第22話 千の剣と
「そうか。ハーマインか。……なら、私が相手をしよう」
そう言って、エリスは楽しそうな笑みを浮かべながら腰の剣の柄に手をかけた。
(は……? なんで急にそうなるわけ!?)
「あなた、凄く強そうだから……ワクワクしてきたぞ!!」
瞳を爛々と輝かせるエリスに対し、私は心の中で猛烈にツッコミを入れた。
(おいおいおい! なんとかボールの世界のバトル中毒者じゃあるまいし!! エリスって……本当になんでも混ぜればいいってものじゃないでしょうが!!)
私はぶんぶんと首を横に振った。
「い、いえ、私、そんなに強くないので! 人違いというか、ただの可憐な少女ですから!」
必死に平和主義者を装おうとした、その瞬間——。
「ハーマイン様〜! お待たせいたしました、更新手続きが完了いたしましたわ!」
奧の部屋から受付嬢が明るい声を上げながら戻ってきた。そして、ギルド全体に響き渡るような声でこう言ったのだ。
「あれ……? ご案内が遅れまして申し訳ございません! AAAランク冒険者のハーマイン様!!」
「「「…………え?」」」
静まり返るギルド内。
次の瞬間——
「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!???」」」
地鳴りのような大どよめきがギルド全体を揺らした。
「AAAランクだと……!?」
「あのガキが……伝説のAAAランク冒険者なのか!?」
「おいおい、王国に数人しかいない最高峰の冒険者だぞ!?」
(ちょっと待って!! なんで余計なことまで大声でバラすのよ受付嬢さぁぁぁん!!)
私が心の中で絶叫していると、エリスは納得したように口元を歪め、ニヤリと笑った。
「ふっ……やはりね。私と同じ『AAAランク』だったのね、ハーマイン」
「違……違わないけど違います!!」
エリスは私の言い分などハナから聞く耳を持たず、カウンターの受付嬢に向かって爽やかに言い放った。
「シルク! 演習場を借りるぞ!」
「あ、はいっ! AAAランクお二人の模擬戦でしたら、特別演習場をすぐにご用意いたします!」
「手際が良いな! 感謝する!」
「ちょっと! シルクさんもノリノリで準備しないでっ!?」
ノリノリで演習場の鍵を取り出す受付嬢シルクと、完全に戦う気満々で腕を鳴らしている『千の剣』のエリス。
……ああ、なんでこんなことになっちゃったのかしら。
私はズキズキと痛み出した胃を押さえながら、重い足取りで演習場へと連行されていくのだった。
(……はぁ、マジで胃が痛い……)
「ハーマイン頑張れ!」「この勘違い(オチ)はひどい(褒め言葉)」など、少しでもクスッとしていただけましたら、リアクション、ページ下部の【ポイント評価(★★★★★)】や【ブックマーク】で応援していただけると大変励みになります!




