第21話 やっと冒険者ギルドに来たのに
学園に入学してからだいぶ経った。土曜日の今日、私はついに……ついに冒険者ギルドへやって来ることができた!
(よしっ! これで念願の冒険者証を更新できるわ……!)
晴れやかな気持ちでギルドの扉をくぐった私だったが、受付へ向かおうとしたその時、B級と思しき脳筋のおっさん冒険者二人がニヤニヤしながら声をかけてきた。
「おいおい、ここは小さなお嬢ちゃんが来るような場所じゃないぜ?」
「そうそう。お子様はお家に帰っておままごとでもしてなさい」
確かに私の身長は低い。今年で10歳とはいえ、見た目だけなら7歳前後にしか見えないだろう。……だが、いちいち相手にするのも面倒だ。私は彼らを完全に無視して、そのままカウンターへ向かって歩き出した。
「おい、何を無視してくれてるのかな?」
カチンときたらしい一人の冒険者が、ガッシリとした体躯で私の進路を塞いだ。一応、心の中で『ステータスサーチ』を試みる。
【職業】剣士:B級
HP:113
MP:10
スキル:『懺悔の一撃』
……こんな奴に負ける気が1ミリもしない。
実は、ルード領の冒険者ギルドでは、AAAランクになっていたのだ。
「お嬢ちゃん。前に進みたければ、ここを通るんだな」
そう言って、おっさんはニヤリと下品に笑いながら自分の股下を指さした。
「……通していただけませんか?」
「嫌だと言ったら?」
関わるだけ無駄と判断した私は、受付嬢の方を向いて尋ねた。
「受付嬢さん、ここで暴力沙汰が起きたらどうなりますか?」
「えっ……あ、暴力沙汰は困りますが、お子様を外にお追い出しする程度でしたら、別段問題はありませんけれど……」
つれない受付嬢の返答を聞いて、おっさんは「だそうだ!」と鼻を鳴らした。
「そういうわけだ、お嬢ちゃん。大人しくお外に出ようねぇ!」
もう一人の冒険者が、後ろから私を捕まえようと太い腕を伸ばしてきた。
「……邪魔」
私は伸ばされたその手首を掴むと、身体の軸を回して鮮やかな『一本背負い』を繰り出した。
ドガァァァンッ!!
「うぉああああ!?」
宙を舞った後ろのおっさんを、目の前を塞いでいたもう一人のおっさんへ直撃させる。
二人は激しい音を立てて絡まり合い、ギルドの床へ激突した。
ズシーーーン!!
「「な、何が起きたんだ!?」」
一瞬で静まり返り、騒然となるギルド内。
しかし私は何事もなかったかのように二人を避けて、受付カウンターへ向かった。
「冒険者証の更新をお願いします」
「え……あ、はいっ!?」
私が差し出した冒険者証を見た瞬間、受付嬢の顔色が真っ青に変わった。
「失礼いたしました! すぐに奧の部屋で手続きを行ってまいります!!」
大慌てで奥の部屋へ駆け込んでいく受付嬢。
すると背後から、ドタバタと複数の足音が近づいてきた。
「なんだなんだ!?」
「こいつか!? 俺たちB級冒険者を舐めた真似してくれたガキは!!」
仲間を倒されて激怒した数人のB級冒険者たちが、私の背後を取り囲むように集まってきた。
だが、彼らが武器に手をかけたその瞬間——背後から凛とした澄んだ声が響き渡った。
「……子供相手にみっともない真似をするな」
「あぁん……!? なんだとオメェ——っ!?」
威勢よく振り返った冒険者たちが、言葉を失ってガタガタと震え出した。
「エ……エリス様……!?」
「『千の剣』のエリスだ……!!」
そこに立っていたのは、数々の伝説を持つギルド最高峰の剣士、『千の剣』のエリスだった。
彼女の圧倒的な威圧感に気圧され、B級冒険者たちが蜘蛛の子を散らすように逃げ出していく。
無事に冒険者証の更新が終わり、私がギルドを後にしようとすると——エリスがじっと私を見つめて声をかけてきた。
「……君は誰だ?」
「赤胴、鈴のすけだ!!」
前世のヒーローの決め台詞が思わず口をついて出てしまった。
「……え?」
「あ……間違えました。ハーマインです」
エリスは一瞬ポカンとしたものの、すぐに楽しそうな笑みを浮かべて自身の剣の柄に手をかけた。
「ハーマインか。……なら、私が相手をしよう」
これが、後に『千の剣』と称される最高峰の剣士・エリスとの出会いだった。
「ハーマイン頑張れ!」「この勘違い(オチ)はひどい(褒め言葉)」など、少しでもクスッとしていただけましたら、リアクション、ページ下部の【ポイント評価(★★★★★)】や【ブックマーク】で応援していただけると大変励みになります!




