第13話 ゾルゲ子爵の陰謀にブチキレたハーマイン
こうして楽しいひとときが終わり、私はイザベラ様の馬車で帰途に就いていた。
しかし、まさか王都のど真ん中で襲われるとは思いもよらなかった。
「王都の中だから」と安心しきって護衛も手薄だった隙を突かれたのだ。馬車の御者は私たちが気づかないうちに殺され、いつの間にか見知らぬ場所へと連れ込まれていた。
私とイザベラ様は後ろ手で手錠をはめられ、馬車から降ろされた。
絶体絶命の状況——ではあるのだが、この手錠、いくらなんでも粗悪すぎる。
力任せに外すこと自体は容易だが、これだけ大勢の敵に囲まれた状態で不用意に暴れれば、すぐさま取り押さえられ、イザベラ様を人質に取られかねない。
私の横で、イザベラ様がシクシクと泣いている。
連行されることしばらく、私たちはとある部屋へと通された。
するとそこには、私たちと同年代の幼い少女たちが虚ろな目をし、あろうことか服を剥ぎ取られた姿で座り込んでいた。
……なんという悍ましい光景だ。
私の怒りゲージは、すでに爆発寸前まで達していた。
その奥から、下劣な笑みを浮かべた小太りのおっさんが現れた。
「なんだこいつは? こんな奴まで連れてきたのか」
「はっ、同じ馬車に乗っておりましたので」
「まあいい、早速『味見』といくか」
そう言ってオッサンが私の横にいたイザベラ様の手を掴んだ瞬間——彼女の引きつった悲鳴が響いた。
「助けて……!!」
その声を聞いた瞬間、私の怒りは臨界点を超えた。
「オッサン、その汚い手を離せ」
「あぁ? 貴様、誰に向かって口を叩いて……」
ブチィッ!!
私は力任せに手錠を千切り飛ばした。
全身に防御魔力を展開する。体がうっすらと光を帯びるが、背に腹は代えられない。
そのまま『風蹴り(エア・ステップ)』で瞬時にオッサンの懐へ肉薄すると、イザベラ様を掴んでいた腕を手刀一閃で切り落とした。
悲鳴を上げる暇も与えずイザベラ様を抱き上げ、すぐさま距離を取る。
「なっ……!? あ……あれ……? ぎゃあああああっ!? 手が、手がぁぁぁっ!?」
切断された腕にようやく気づいたオッサンが、血を撒き散らしながら地べたをのたうち回る。私はイザベラ様の目に凄惨な光景が入らないよう、そっとその目を手で覆った。
「な、何をしている! 早くそいつを殺せぇぇっ!」
オッサンの悲鳴に応じ、次々と手下どもが襲いかかってくる。
だが私はイザベラ様を片腕でしっかりと抱えたまま、襲い来る敵を容赦なく蹴り飛ばし、足から放つ真空の斬撃で一瞬にして全員のトドメを刺していった。
静まり返る室内。残されたのは、血の海の中で震えるオッサン一人だけとなった。
「ひっ……!! た、助けてくれぇっ!!」
「死ね」
私は冷淡に言い放ち、一撃でオッサンの首を跳ね飛ばした。
そして——天井に向かって極大の『ライトアロー』をぶち放ち、上空へ向けて一気に穿った。
ここはどこかの館の地下空間だったようだ。
頭上の床と天井が凄まじい爆炎とともに吹き飛び、屋敷は一撃で崩壊。一階の壁がわずかに残るだけの廃墟と化した。
☆☆☆
しばらくして、街の異常を察知した国の衛兵たちが駆けつけてきた。
瓦礫のなかで寄り添い合う私とイザベラ様、そして保護された全裸の少女たち。さらには私が仕込んでおいた「あの指図書」が発見された。
「天使様が現れて、私たちを助けてくださったのですわ。そしてこれを渡されたあと、光の中へ消えていかれましたの……」
恐怖のあまりショックを受けたふりをしたイザベラ様の証言。さらには保護された少女たちも口々に、
「天使様が助けにきてくれたのです」
「お屋敷は天罰の光で吹き飛びました」
と、私が事前に言い含めた通りに証言してくれた。
首謀者である小太りのオッサンの正体は、ゾルゲ子爵。
私が手に入れていた指図書の差出人もゾルゲ子爵であったことから、王都を震撼させていた「少女連続誘拐事件」は、悪徳貴族への天罰という形で呆気なく幕を閉じたのだった。
最後までお読みいただきありがとうございました!
次回、「第14話」は【明日の07時】に更新予定です!
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