第12話 王女謁見と薔薇風呂 4
ようやく開放された私。これから各自、席についてお茶会を嗜む時間となった。
当然、私の身分では末席のはずである。大人しく末席へ向かうと、そこにはすでに子爵令嬢が座っており、冷ややかな視線を向けられた。
「ここは、あなたの席ではございませんわ。あなたの席は——あちらです」
(なんという分かりやすい嫌がらせ。私には席すら用意されていないと……って、ななな……なんだあの席は!?)
彼女が指差した先——そこは、到底あってはならない場所だった。
「「ハーマイン!! こっちよ!!」」
シャルロット王女殿下とイザベラ様が、笑顔で手をブンブンと振って私を呼んでいる。
こうして私は、シャルロット王女殿下とイザベラ様に挟まれるという、どう見ても場違いすぎる特等席に座らされることになったのだ。
「ハーマイン、これをどうぞ。そう言えばハーマイン、今日はとても良い香りがしますわね」
「そうおっしゃるシャルロット様こそ、素敵な香りがいたしますわ」
「ふふ、これは試作品の新しい石鹸を試してみたのですの」
「シャルロット様、その新しい石鹸とは……?」
「ところでイザベラ、例の薔薇風呂にはもうお入りになりましたの?」
「あれは……お母様に奪われてしまいまして」
「あら、そうですの」
「ええ。でも今日はハーマインが用意してくださるとおっしゃっていたので、とても楽しみにしておりますの」
「それはずるいですわ! ねえ、ハーマイン?」
「はっ、はいっ!?」
「でしたら、私と一緒にそのまま薔薇風呂に入りましょう!」
「ええっ!?」
「ねえ、よろしいでしょう?」
「シャルロット様、ズルいですわ!」
「そうねえ……イザベラ、ちょっとご相談があるのですが」
「なんでしょうか?」
「うちのお風呂は、あれをするには広すぎるのですの。ですので、あなたの分の薔薇を少し分けていただけないかしら?」
「それは……」
「あなたも一緒に入りませんこと?」
「えっ? よろしいのですか!?」
「ええ、もちろんですわ!」
二人のやり取りを聞いていたローランド様が、たまらず割り込んできた。
「シャルロット様、その『薔薇風呂』とは何のことですの……?」
「実は、ハーマインが考案した特別な入浴法でしてよ。なんでも、お湯に薔薇の花びらを浮かべて入るらしいのです。私、今晩試してみますの。もちろん、ハーマインとイザベラと一緒にね」
「まあ……! なんと素敵な……! 私もぜひご一緒したいですわ!」
こうしてなぜか話が大きくなり、お茶会に参加していたご令嬢全員で薔薇風呂に入ることになってしまったのだった。
☆☆☆
7歳の女の子たちが一緒にお風呂に入る——ハタから見れば、なんとも微笑ましく可憐な光景のはずだ。
魔石の光に彩られた壮麗な浴場。お湯一面に浮かぶ色鮮やかな薔薇と、蒸気とともに立ち込める高貴な香り。幻想的な雰囲気に包まれ、みんな興奮気味にお湯に浸かっている。
「本当に良い香りですわ……!」
「お肌がすべすべになりますわね!」
誰もが口々に称賛し、楽しそうに過ごしている……のだが。
(なんで……なんでこうなるの……!?)
私の両脇は、シャルロット王女殿下とイザベラ様によってガッチリとホールドされていた。
最後までお読みいただきありがとうございました!
次回、「第13話」は【明日の07時】に更新予定です!
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