赤と海と筋肉と少女(海と少女編)
ここ人妖町には様々な妖怪や都市伝説の類いが存在する、そのなかにはもちろん吸血鬼も存在する、その吸血鬼の中ではこんな風習がある
『誰かに血を与えられるという行為はその誰かとの婚姻を意味する』と。
ただいま開店時間1時間前の6時、来ている人数、0、いや自分がいるから1人か。
まぁ、あいつらはいつか来るだろ。
先に着替えて待っていることにしよう。
と思い小説を閉じた矢先に裏口の扉が軋んだような音を立てながら開きソータが入ってきた。
「失礼しまーす…あれ?自分が一番乗り?やったー!」
「なわけないだろ」
全く何を考えてそんなことが言えるのか。
「おわっ!驚かせないでよー」
「逆になんで気付かないんだよ、他の奴らはまだだけどまだ開店1時間前だぞ?」
と、時計を見ながら言った。
「え、トウカはいつ来たの?」
「1時間半前からすでにいたけど」
「え!ウッソだーならなんで着替えてないの?」
「ついさっき着替えようとしてたところなんだよ」
とソータと従業員服に着替えながら言い合う。
「そうだ、ソータから借りてた本今日返すわ」
従業員服に着替え終えるとソータから借りてた本をついさっき読み終えたことを思い出した。
「あっ、そうなんだ『私のための四重奏』やっぱり面白かったでしょ?」
「『わたカル』結局はなんかよくわかんなかったけど良かった」
こんな感じでソータいわく最近流行りの恋愛小説『私のための四重奏』について10分間ぐらいソータと語り合った。
「いやー、こういう話を誰かとしたかったんだけどさ、コウジはあらすじ説明している最中に寝るし、リトオは最後まで読んでくれるんだけどここまで話せないからさ」
「そうな…「『わたカル』ってなんだよ」
誰かに急に言葉を遮られた。いや、誰かはわかる。
「ぼくの説明中にお前が眠った小説!」
後ろに立っていたのは誰であろう、そうコウジである。
「あー、それについては悪く思っていなくもなくもなくない」
適当にあしらいながら悪びれる様子がないコウジに対して。
「どっち!」
ソータが頬を膨らませて尻尾をピンと立てる。
すると裏口の扉が軋んだような音が鳴り開くとリトオも入ってきた。
「おはよ、リトオ」
「おはよ、ねぇトウカ、あの2人はなにしてるの?」
「あぁ、ちょっとしたじゃれ合いだよ」
「あぁ、いつものね」
4人で揃えばソータとコウジがじゃれ合うのはもはや恒例行事と化していた。
「そろそろ開店準備するぞ〜準備しろよ〜」
俺とソータは先に店内へ、コウジとリトオは従業員服に着替えてから店内へ。
すこし商品を増やし新しい品物も出す。
「前から思ってたんだけどさ、この本ってなんだろうな、レンタルのとこにずっと置いてあるけど」
とコウジが見せてきた本はボロボロだが確かな雰囲気のあるまるで魔法の本のような印象を与える本だった。
「さぁ、これも店長の趣味じゃないのか?」
たまに遠出した店長が珍妙な何かしらを持ってくることは何ら珍しいことではない。
「ま、読みたいなら借りたらいいんじゃないか?」
「いや、借りるほどじゃないかな」
「なら言うなよ」
「ま、返してくるわ」
それでその時の会話は終わった。
そして7時、万屋【閻魔】開店の時間だ。
今日は開花しそうな蕾はないらしいので気兼ねなく営業出来そうだ。
そんなふうに思ってると
「おはよう、コウジはいる?ま、いるのは知ってるんだけど」
と言いながら扉の開閉で鳴る鈴の音と同時に店内に入ってきた筋骨隆々のリトオほどとはいかなくとも大男のカトレさんがやって来た。
「いますよ、でもなんで知ってるんです?」
「ソータくんが教えてくれたんだよ」
「そうなんですね、コウジならあっちのレンタルコーナーの掃除してますよ」
「お、そうなの?ありがと」
と言うが早いかカトレさんはレンタルコーナーへ移動した、レンタルコーナーからはコウジの叫び声が聞こえた気がしたがまぁいいだろう。
「トウカくん、今は空いてる?」
なんて考えていたらカウンターの真下に少女と言うには少し小さくて幼女と言うには少し大きな女の子がいた。
「あ、空いてないならいいのよ?それまで待つから」
「来ていいですよ、ミアさん」
「もう、さん付けも敬語もやめてって言ってるでしょ?」
するとミアは小さく可愛らしいコウモリのような羽をはばたかせて飛んだかと思うと椅子に座っている俺の膝の上に乗った。
「とはいえ、ミアさ「ミア」…ミアの方が年上なんだからせめて敬語で話させてください」
「ん〜ミアって言ってくれただけでも嬉しいし、今のところはいいよ」
これからは敬語もやめさせられそうだなぁ。
と思いながらミアの羽を優しく撫でる。
「また抜け出して来たんですか?」
「そうよ?当たり前じゃない、お勉強なんてもう必要ないのよ?私はもう大人のレディなんだから」
「そういえば、明後日はミア…の誕生日ですよね?」
「そうよ、必ず私のお家に来てお祝いしてね、トウカ」
「わかりました、そういえば何歳になるんでしたっけ?」
すると少し頬を染めてミアは
「…100歳よ、トウカくんってデリカシーって知ってるのかしら」
「それくらいは知ってますよ?」
「へぇ、ほんと?まぁいいわ」
「ところで日焼け止め1人で塗れるようになったんですね」
なんか変な方向に行きそうだったので話を逸らす。
「そうね、でもやっぱりたまにはトウカくんに塗ってほしいのよ?」
「たまには塗ってあげますよ、顔や手なら」
「ほんと?なら今度お願いしようかしら」
ミアは吸血鬼の純血、それも人妖町唯一となった純血の一族の一人娘。
ちなみに吸血鬼の100歳は人間で言うとこの10歳、まだまだ子供。
そう思うと手が勝手に動いてミアの頭をわしゃわしゃと撫で回していた。
「ちょっ、なによ、急に…」
「嫌ですか?」
「…いやじゃない、いやどころか…好きよ」
「知ってますよ」
「ていうか、血、ちょうだい」
「またですか?」
「貴方の血以外受け付けなくなっちゃったんだもの、しょうがないじゃない」
しょうがなく俺の血が入った輸血パックを取り出して、ミアに渡す。
「えー、また輸血パック?鮮度落ちるから苦手なのよね」
「好き嫌い言わないでくださいね、明後日は直接飲ませてあげますから、それまでは輸血パックで我慢してください」
そして外を見ると長い黒い車と紳士然とした老人、ミアのじいやが降りてきたのを見て
「お迎えですよ、抜け出したのバレちゃいましたね、ミア」
その声でミアが店の入口を見るといつもの送迎をしてくれるじいやを見つけたのか、しぶしぶという感じで俺の膝から降りて。
「明後日は家に来ること…来てくれるわよね?」
「言われなくても、プレゼントもって行きますよ」
「ふふっ、楽しみにしてるわ」
と言うとミアはじいやの元へいきそのまま楽しそうに帰っていった。
ソータとリトオはいつも通りだろうから、コウジは
「ぎゃーーっ!」
あ、いいや、数分後にレンタルコーナーと筋トレ関連コーナーの掃除しに行こう。
数分後カトレさんが大量のプロテインとバーベルなどを購入して片手でそれらを持ちもう片手でコウジ荷物のように抱えて外に出て行ったがまぁ大丈夫だろ、いつも無事だし。
そして少し荒れているレンタルコーナーと筋トレ関連コーナーの掃除をしたあと俺はカウンターに座り、お客様を待って過ごした。




