犬と巨人と山と案山子
いつからか万屋【閻魔】にてバイト4人の中で特に取り決めてもいないが生まれたルールのようなものがあった、開店準備をする7時よりも30分前である6時半に休憩室で集まるというものだ。
トウカとコウジの2人が炎の巨人のナニカと鉱物人間のナニカを捕獲、排除した翌日の朝6時のこと。
今日はなんか早く来ちゃったなぁ
なんて思いながらのんびりとぼくは好きな恋愛小説を読む。
そう言えば昨日ナニカが出たんだったなぁ
と思い恋愛小説を閉じて、昨日のナニカに関する資料を休憩室の書類棚から探し出して読む。
2人の話を聞いて店長が書いたのだろうか、とても面白い。
なんというか2人の行動をイキイキと楽しそうに書かれていた。
やっぱりぼくはこういう店長や皆のレポートを見るのが好きなんだなぁ
僕は僕の耳を撫でながら思う
そう言えばそろそろみんな正式に【閻魔】に就職するみたいなこと言ってたよなぁ
ぼくはどうしたいんだろう
なんて考えてると少し軋んだような音を立てながら裏口の扉が開く、そこからは黒髪の2メートルはあるであろう大男が出てきた。
「リトオおはよっ!」
と黒髪の大男、山陰リトオに微笑む
「おはよ、今日も元気だね、ソータ」
とリトオはぼく、白駒ソータの頭と耳を撫でる
「リトオの手は優しいね〜」
「ふふっ、ありがとう」
その後数分間リトオに頭と耳を撫でてもらってから
「先に開店準備してるよ〜」
と少し重い扉を開き店内に入るとあの大きな桜が嫌でも目に入る
「あぁ…そろそろあの2個が開花するね」
年中いつでも花を咲かせるちょっと不気味な桜
おまけにあの桜についているあの数百を超える蕾が1つでも開花すればナニカが生まれる
ナニカがいつ頃出るかわかるしそこだけは利用してもいいと思ってはいるよ。
「いつか、満開になるのかな」
「うぇっ!?いたの、リトオ」
「ごめん、驚かせちゃった?」
ぼくの後ろには従業員服を着込んでいるリトオが居た。
「ていうか、満開って?」
「いや、あれが一気に満開になったらどうなるのかな
って思ってさ」
「そりゃ、その分だけナニカが生まれるんじゃないの?」
蕾の数がナニカの数を表しているんだから、その言葉はぼくの口から出てくるよりも先に。
「そうかな?何事にも例外はあるものでしょ?」
それもそうか、と納得した。
何であろうと例外は考えなきゃいけない。
それは当たり前、でもよく忘れてしまうこと。
これからもあの桜通りにナニカが出るとは限らない。
そう小さく、けれどもしっかりと心に刻みつけた
そんな時だった2人のスマホからアラートが鳴り響いたのはその時開花した蕾は2個こっちからでもはっきり見える2個の蕾が開花し2輪の花となった。
ナニカがどこにいるのかを確認すると
「2体」
南北に別れてナニカが居たからリトオは北、ぼくは南へ【閻魔】の入り口を通って外に出ると僕は一足先に走り出した。
リトオside―
元気に走っていくソータを見てから俺は地面を強く蹴り高く飛び上がる、ウサギのように屋根から屋根へとどんどん飛び跳ねて山地がある北の方へ移動していく。
少し山に近づくと遠くに動いている500m程の山を見つけた、あれがナニカなんだろう。
更に早く奥へ奥へと、家がなくなり山道に入っていくと俺はもう町が被害を受けないほどの距離を取ったのを確認してから呟く
「ここに山と湖を創ろう」
すると俺の身体は巨大化を始めた。
今回は全力の1割未満、100m程度の姿で抑えてヤマモドキ目掛けて勢い良く飛び上がる、蹴りつけた地面はへこみ、水が湧き出て沼が出来、俺は200mほど飛び上がりヤマモドキへと急降下の勢いのままドロップキックをくらわせる。
すると案外ヤマモドキは脆く、俺の身体はヤマモドキの身体を貫通しヤマモドキに直径50m程の大穴を空けた。
その穴からヤマモドキの5m程の大きさの核を確認できた。
そこめがけて跳躍しヤマモドキの核をもぎ取る。
断末魔の叫びのような音を立ててヤマモドキの身体は核を失ったことで崩壊を始めた。
俺は核を持って【閻魔】へと歩いて帰ろうとした時に俺のスマホが震え、ソータからナニカを排除したという知らせが届いた。
ソータside―
ぼくは走るただひたすらに全力で
南へただ南へと走り続ける、何台かの車を追い抜き少し町の外れにまで走ってきた。
この辺りに居るはずなのに姿が見えない、全く同じような風景が続く、少し疲れてきた、そんな時だった
ぼくは体の体制が崩れて地面に倒れた。
何かに転んだわけでもない
後ろを見ればぼくの左足は膝から下が地面に転がっていたそれを理解すると同時にぼくは鋭く重い痛み耐えながら辺りを確認する。
ナニカはこの近くのどこかに居る、それだけは理解した。
それでもここの近くにあるのはあたりを埋め尽くす小麦と鎌を持った案山子
その瞬間ぼくは小さく呟く
「全てを守り癒すもの」
それと同時にぼくの左足は即座に再生した。
左足が再生し終えると地面を強く蹴り案山子の首筋に回し蹴りをぶち込む、その直前に案山子が動き一本の足である木の棒を回転させ反転、ぼくの左足を切り落としにかかった。
「わかってれば、問題は無いんだよっ」
と切られたそばから足を再生させ勢いは衰えず、けれども少し狙いは外れて案山子の頭に回し蹴りをくらわせるかたちになった。
案山子は農道をごろごろと転がってぼくから離れていく、それを逃さずに追撃を仕掛ける。
そこらに落ちていた石礫を片手で掴めるだけ掴み案山子へと全力で投げつける。
石礫は散弾のように案山子の胸や腕の木の棒などを撃ち抜いた。
立ち上がった案山子は片腕の棒を失くしていたが、痛覚がないのか遠慮なくぼくの首へと鎌を走らせた、それは速さ、威力共にぼくの命を刈り取るには十分なものだったが。
「残念だったね」
鎌がぼくに届くことはなかった
パキンッという音が響く、すると案山子は体を塵に変えて風に吹かれて消えていった。
あとに残るのは石礫が突き刺さり真っ二つになった案山子の核だけ。
案山子の核を回収してリトオにナニカを排除したということを連絡した。




