桜と意識と最後の抵抗
僕以外には誰も知らない事がある、数千と数百年前に桜に埋め込んだ6個の命石の影響で桜の精神内に6人の人格が生まれた。
意外だったが実験としてこれ以上なかったと言えるあろう。
『白澤のレポートNo.1989』より抜粋
ある日
『人の想いとは純粋な力である』
そう言った親友がいた。
その時は半信半疑だったが、今ならわかる。
人が抱える、望み、愛、その他諸々の感情、その中でも死の間際や日々感じていたであろう恐怖は私の血肉となり6人の子を生み出した。
その6人に親友は名をつけた。
子供の恐怖から生まれたコク
右手と左手それぞれへの恐怖から生まれたミギとヒダ
若さと老いの衰えへの恐怖から生まれたジャクとロウ
食物連鎖の上位層からの捕食の恐怖から生まれたタン
6人の子供たちを私を殺しに来た者たちを相手取った。
そのうち5人は回収した、死にかけだろうと何であろうと子供たちを見殺しにはできないのだから。
もうタンも回収しないといけないだろう。
あの人間はだめだ、誰であっても勝てないと思わせる威圧感、あの人間が恐怖から最も近しい存在だと理解させられる。
根を伸ばす、遠くにより遠くにはやくはやくあの娘を助けなければ、消えてしまう、消されてしまう。
タンの上半身と下半身が離れた。
最高速に達した根が細切れにされる寸前のタンの体を包み吸収する、空振った人間の剣は私の根を斬り裂いた、どんな爆薬、どんな兵器を用いようと破壊が叶わなかったこの身が斬り裂かれたのだ。
面白い、辺りの人間や混血どもを相手取ってもいいだろう、ただそれだけの変化死の可能性が近づいたからか私の考えは180°変わった。
逃げる、逃がすといった逃げ腰の考えから、戦い、壊すといった前のめりな考えに。
辺り一面に己の花びらの弾幕を振り注がせる。
舞い落ちる花びら1枚1枚にヒト1人以上の人間の恐怖の念が込められている。
墓石に花びらが軽く触れるだけでその墓石は形を失うように溶けて消えた。
怨念、恨み、妄執、様々な負の感情に触れるだけでありとあらゆるモノは消えていく。
しかし流石は戦い慣れている者たちだ、寸前まで気を失っていたとしても、花びらを避けることに成功していた。
そんな満身創痍でもできることを無事な者たちができないはずもなく、被害者はゼロ、しかし私から全員を離すことができた。
『少しの間、お願いね』
『承知しております、母上』
ロウをなけなしの恐怖の念を利用し核を生成、ロウの擬似的な体をマネキンを作成しロウの意識を体となるマネキンに移す。
「指定500年無為に生きた日々の証」
小さく凝縮された純白の光が桜の木に当たると桜の木は変異を開始した。
完全に変異し切る前に桜はロウを吸収し姿を現す。
桜は人型に姿を変え始めた、姿を変えた桜は純白の着物を纏い桜色の長髪をたなびかせて地面に舞い降りる。
地面に足をつけると、声高らかに宣言した。
「我が名はユメ、私の親友である白澤から貰った名である」
一息つくとユメは握り締めていた手を開くと10枚以上の桜の花びらが光り輝き、明らかに今までの何かには収まらないほどの怪物がユメの後ろに2体現れた
「これから行うのは、生き残りをかけた殺し合いなどではない、この場で行われる最後の抵抗だ」




