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混血のバイト  作者: ルト
20/28

犬と老婆と年老いた恐れ

桜から南にある【祖霊霊園】、そこには年老いた混血や妖怪、人間たちが眠っている。



ソータはドローンのような機器を弄りながら


「頑張ろうね、ロクお婆さん!」


「もう、ロクでいいといつも言っているだろう?」


元気に隣りにいる美女に呼びかける。

もはや恒例となってるやり取りを終えてソータの手からドローンが浮かび、離れる。


「むつちゃんは反対側だっけ?」


「そうさねぇ、そんなことを言ってたけど屋敷に居てもらってるよ、あたしからしたら、あの娘に当主の自覚を得てもらいたいものさね」


「しょうがないでしょ、代替わりしてから数日しか経ってないんだから」


「そういうものかねぇ」


「そういうものだよ」


ソータとロクの耳につけられたインカムに2人は準備完了と呟いた。

それにつられるようにして他の所からも準備完了の連絡が届く。


『じゃあ、作戦開始』


その声を聞き


「ロクお婆さん、ついてこれる?」


「なめるんじゃないよ、小童」


そう言葉を交わすと2人は同時に地面を踏み抜き走り出した。

続々と現れるナニカに対してソータは走りながら障害となりうる者だけを把握したうえで拳や蹴りの一撃のみでナニカの体の部位や核を破壊、もう用のなくなったナニカをスルーして桜目掛けて地を駆ける。


それに対して走りながらも美しい所作が見えるロクは先が黒く鈍い光を放つ扇子を閃かせると辺り一面のナニカを真っ二つに切断する。


「ちっ、核とやらには届かんか」


その呟きのとおり、その一閃はナニカの核を両断するには浅すぎた。

それを理解したロクは扇子を畳み目の前に立つナニカに扇子による突きでナニカの体に核すら消し飛ばして風穴を開ける。


「よし、コレでいいね」


そう呟くとロクはナニカの身体が消滅するよりも前にその場を離れてソータの後を追う。

まるで新しい絵本を買ってもらった幼子のような笑みを浮かべて走るロクは見た目よりもさらに若く、幼く見えた。



2人は走る、桜をめがけて


2人は気づかない、辺りのナニカが極端に減っていることに


2人は気づかない、自分たちの身体に巻き起こる異変に


2人は気づかない、死の気配と共に生の気配が忍び寄っていることに



2人はその全てに未だ気づいていない



年老いた者が感じる怖さを、恐怖を、絶望を理解していないから



だから…死ぬのだ


降り注ぐ純白の光が一筋、それに貫かれたソータは倒れた。

それに反応しソータの元へと走り寄るロクへ漆黒の光が貫いた。

2人ともその場で倒れた。

上からソータがもしも年を取ればそうなっていたかもしれないと思わせる洋風な貴族の服を着こなした老紳士と、ロクが幼く代替わりを果たす前はそうだったと感じさせる無邪気な表情の和服を身にまとった女の子が舞い降りてきた。


「ふぉふぉ、残念じゃったな…お嬢、お主が狙ってた小僧は儂が仕留めたぞ」


「ちょっと…なによ老いぼれの爺さんのくせして、大人げないうえに気持ち悪い」


そう吐き捨てる少女に老紳士は落ち着いた口調で


「ふはは、まぁ良いではないか、そこの坊主は結局死ぬのだから」


「それもそうね、それにしても何なのこの感じ、見られてる?」


「おや、今頃になって気づいたか」


首をキョロキョロと回して辺りを見る少女に優しく諭すように語りかける老紳士、それに対して少女は不機嫌そうに


「なによ、あんたは知ってたわけ?」


「あやつじゃよ、あの男、先ほどから常に儂らを見ておる、儂は心底気に入らんなぁ、ああいう手合いは」


そう言い舌を出した男が見る先には桜の頂点に立つ黒ずくめの男がいた。


「あら、珍しく気が合うわね、私もよ、お母様のうえに立つなんて…え?あぁそうなのねお母様、わかったわ」


「おやおや、儂にもか、母上も心配症じゃな」


と黒ずくめの男に文句を言おうとしていた2人は口を閉じた。

彼らよりも上の誰かに何かを伝えられたかのように。


「ま、いいわそこの男の子と女はもうじき死ぬでしょ、他のとこに向かいましょ、右手と左手の方でもいいかもね、それともコクのとこへ行く?あ、そうだわあの娘のとこへ行きましょ!」


あの娘を可愛がってあげなくちゃ、そう語る少女の口元は嗜虐的な笑みを浮かべていた。


「はぁ、儂は此奴のおもりかぁ、母上も酷なことをするのぉ」


「あ゙?何か言った?」


「いいや、なにも?」


少女から視線をそらして老紳士がそう応える。


「はぁ、これもいつかの夢と消えるのじゃろうな」


そう呟く老紳士の背後から一撃、脳天を貫通した衝撃が走る。


「はぁ…はぁ…何してくれたんだい?この体…」


後ろには息切れを起こしている女、ロクがいた。


「えぇ…なんで起きちゃうのかなぁ?どうせだから最期まで寝てればよかったのに…」


そう言いながら歩く少女は途中で言葉をとめると頬を緩めて。


「あぁ、なるほどねぇ、あんた見た目ほど幼くなかったんだぁ!そうでしょ!そうよねぇ!だから変化が終わってもそのままの姿なのね!流石に何百年と寿命を持った妖怪の歳までは当てれないわぁ!」


「おい、ジャク」


興奮冷めやらぬといった風の少女を頭の穴が治っている最中の老紳士の声が止めた。


「なぁに?ロウ」


興が冷めた怒りをぶつけてやろうかと語る眼差しを向ける少女に老紳士は落ち着いて


「たった今、母上から命を受けた、お主はここでその女の息の根を完全に止めろとの仰せだ」


「んもぅ!しょうがないなぁ、まだ遊びたかったけど、バイバイ、女」


少女は唇に左手人差し指を当てると指先に漆黒の光をまとわせて


「えい!」


振った、その声の愛らしさとは裏腹に凄まじい速度で飛来する漆黒の光をロクはかろうじて躱すと


「わぁ!すごいすごい!よく避けれたね、でも変化は始まるのよ」


すると光が当たった墓石がどんどんと加工前の巨岩になっていった。


「避けれたご褒美に私の能力を教えてあげる、私の能力は『求めていた過去の栄光(ワカガエリ)』私の漆黒の光は触れたものを私が定めた年数の分だけ若返る」


と言うと少女は漆黒の光を10個近く生み出し発射した。

それら全てを紙一重で避けたロクは扇子を振るう。

辺り一面に綺麗な一本筋の亀裂が入り、老紳士はしゃがむことで避け、少女は腕が落ちた。


「まだまだあたしも捨てたもんじゃないね」


そう言いロクは扇子を構えた。

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