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混血のバイト  作者: ルト
12/14

犬と巨人と老人と子供

代替わり

それはその存在にとっての価値観や見られ方のアップデートとも言い換えることができる。

妖怪や都市伝説も時が経てば伝わる内容が所々変わっていく、その内容を数百年単位のスパンで適応させるのである。

それが行われる時、己の力の殆どを捨て去り、子に力の大半が移る。

コレを代替わりと言う。




その日の万屋【閻魔】に一通の手紙が届いた。


「依頼?」


「久しぶりに来たね」


依頼箱に手紙が入っていたのである。

ナニカ退治も一種の依頼のようなものだがそれとは関係ない依頼がたまに依頼箱に入っていることがある。

大半が小さな頼み事のようなものだったのだが。


「えっと?『代替わりへの立ち合い』?」


その日は少し依頼の毛色が違った。


「えっと…立会人はソータ君とリトオ君に来てほしいってさ」


「へ?僕?」


「俺ですか?」


そして意外な人選に2人ともボケっとしていたが、やるとなればやる気を出す彼らである。

意気揚々とその依頼者の家へ向かった。


「誰からの依頼だっけ?」


「えっと…あぁ、ろくろ首さんからだね」


「あぁ、よくうちに来てくれる女の子の家ね」


「そうそう」


「ついにあの子も代替わりかぁ」


「あの子達は友達がいなくなって少し寂しくなるだろうね」


「そんなこと言いながらさ、リトオはどうなの?」


「俺?別に代替わりしてもいつでもうちには来れるでしょ?」


「それもそっか」


2人が和風の屋敷に着くと使用人に案内されて会場に着いた。


「おぉ、来てくれましたか」


和服に身を包んだ男が流麗な所作で頭を下げる。


「少し早く来ちゃいました、依頼をされたのは、貴方ですか?」


「私が依頼しましたのよ」


「あ、ロクお婆さんだ!」


「いらっしゃい、ソータ君、ロクと呼んでって言ってるんだけどねぇ」


そこに立っていたのはお婆さんと言うには若いお姉さんと言うべき姿をしている和風美人だった。


「すみませんね、母さんが。なんでも毎晩【閻魔】に行っているそうじゃないですか」


「なんだい?私みたいな婆さんが行っちゃだめなのかい?」


「そうは言ってないでしょ?そろそろ年を考えて…」


その言葉が言い終えるよりも先にシュッと風を切る音がしたかと思えば男の首筋にお婆さんの扇子が当てられていた。


「で…年がなんだって?」


「いいえ、なんでも」


「そう、ならいいのよ」


パチンと音を立てて扇子が仕舞われると男は腰を抜かしたのか冷や汗をかきながら地面に腰を落とした。


「さて立ちな、そろそろ儀式の始まりだろう?」


少しし時間を置いて儀式は始まった。

ソータとリトオを立会人として父と娘の前に立つ

厳かな雰囲気の中、八代目ろくろ首の父親の胸から強烈な光を放ちながら現れたのはろくろ首としての力の塊。

露出した力の塊を小さな光が包み込むと光の塊は宝玉に姿を変えて、父親から娘へ贈られる、父親からの最後で最大の贈り物を。

宝玉に触れた娘の小さな体は急激に成長し、街を歩いたのならば100人中100人が振り向くような美人へと姿を変えた。

ここに、九代目ろくろ首が誕生した。


「お父様、この家系を必ずや、永遠に繋げてみましょう」


「あぁ、よくぞ言った、これで俺はお役御免だ、後のことは俺のお母様、お前にとってのお祖母様に聞くといい」


そう言う男は凄まじい速さで老けていく、代替わりの儀式を終えると妖怪として何かしらの実績を残すことのできなかった者はその命を一瞬ですり減らすのだから。


男は振り返る、その顔は八代目ろくろ首という重荷から解放された、ただの少年のような顔をしていた。


「お母さん」


「なんだい、バカ息子」


「俺の人生は恵まれていたよ、こんな美人な母が居ただけではなく、俺の娘はこんなにもしっかりと成長した、俺の自慢の母と娘がいたのだから」


男は己の母と娘を強く抱き寄せるともはや抱きしめることもできないのか、力がどんどん抜けていった


「あぁ、それは良かったね、お前を産んだかいがあったってもんだ」


「私も、お父様の娘として、これからもしっかり生きてまいります」


それを聞いた男は人生最高の笑みを浮かべると命を使い切った。




妖怪達の死体は火葬をせずともその体だけを燃やす炎が自然発火し肉を臓器を、骨以外の全てを燃やす。

残ったの骨は骨壺に入れられて人妖町の中心にそびえる桜の西側にある妖怪用の墓所に埋葬される。



「お父様は私に厳しくも優しい人でした」


墓に立ち娘はポツリと呟く


「あぁ、お前は3人しかいない家族の1人だったからね」


今はもう2人になっちまったがね、そんな言葉をお婆さんは誰にも聞かれることのない心の奥底へと沈めた。

横目で瞳に水を貯める孫を見ると


「さて、九代目、あいつの遺品整理が最初の仕事さね」


「はい、お祖母様」


「もう、あんたもかしこまらなくていいんだよ?私のことはロクとでも呼びな」


「なら私のことは…むつとでも」


「はいはい、帰るよむつ」


「はい、ロクおばあちゃん」


「ロクでいいって」


そんなことを言い笑い合う彼女達を彼が見ることは出来たのだろうか、出来ていたらいいな、そうソータとリトオは思うと歩いて万屋へと帰っていく、ゆっくりと、ある短くも長い充実した人生を送った1人の男を想いながら。

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