悪魔を見た
「原田組の裏の仕事の『呪殺』だけど……ガチで本格的な儀式魔法系の呪殺だって……。あと、心霊スポットの『浄化』と、それ関連のコンサルが表の仕事だけど……心霊スポットの浄化は、ちゃんと実績有るみたいだね。心霊スポットを人為的に作り出すのは、もっと得意なだけで。他の組に頼まれて、地上げする土地の辺りを心霊スポットに変えて、地上げ後に浄化するとか……」
千夏ちゃんが、そう説明する。
「あ……あのさ……」
「でも、安心して。派手な近接戦用の魔法は逆に苦手みたい。あくまで、ちゃんと準備した儀式魔法が専門」
「え……えっとさ……」
「何?」
「それって……逆に余計に更に……最近良く居る『魔法オタクの成れの果ての、なんちゃって魔法使い』じゃなくて、ガチで、かなり危険い流派の、ちゃんとした修行をやってるって事じゃ……?」
「でも、呪殺した後は、多分、魔力切れになってるから……そこを狙えば……」
「あのさ……あたしら警察官なんだよ? わかってる?」
「何が?」
「留置所ブチ込んで大丈夫な奴らなの?」
「何が心配なの? 留置所の中から……私達を呪い殺すとか?」
「そう」
「でも、準備が要る儀式魔法だから、留置所内じゃ無理だと思うよ」
「いや……でも……」
「心配ならさ……たとえば、警察官がヤクザの事務所に入ったら、ヤクザが呪殺儀式らしいモノをやってた。……当然、身の危険を感じるよね?」
「おいッ‼」
「小倉支局の魔法系の特務要員に一緒に行ってもらうよう交渉してみるんで……あとは現場で判断して」
「待てよッ‼」
この女、いつの間に、ここまで腹黒くなってたんだ?
まぁ、自分が受けたセクハラを脅迫のネタに使う辺りで……嫌な予感がしてたけど……。
「まぁ、原田組の事務所は広めの一軒家だから……そうだ……中島さん」
「な……何ですか?」
ウチの隊長も、千夏ちゃんの腹黒ぶりに唖然としてる……。
「パワー型用の重機関銃と、狙撃型用の大型狙撃銃の使用申請、もちろん書いてますよね?」
「へっ?」
「いざとなったら、塀とか壁とか撃ち抜けるアレですよ」
「あ……あの……」
「ついでに、偵察用のドローンも申請しといて下さい」
あ……ああ、たしかに……。
霊だとか魔力だとか気だとかはカメラには写らない。
逆に言えば、幻術とかはドローンのカメラには無効だ。
そして、魔法使い……特に、呪殺専門の奴は、逆に、ドローンなんかに有効な対抗手段が無い……。熱だの電撃だの衝撃波だのは魔法で出せない事もないらしいが、コスパはクソ悪いんで、現実の世界では、そ〜ゆ〜魔法は発達していない……らしい。ドローンじゃなくて、式神とかなら、おっ払うのも出来るだろうが……。
そして……他人からの呪詛なんかを防げたり、人間や式神なんかの侵入を検知出来る結界は……逆に、生き物でもなけりゃ、霊力だの魔力だの気だのも完全に0のドローンは気付かれずに素通り出来る。
「じゃあ、一緒に行く小倉支局の魔法屋さんが危険だと判断したら……まぁ、その時は、自分の身の安全を優先して下さいね」
……カタカタカタ……。
第2小隊の隊長が何も言わずに……PCのキーボードを叩く……。
「あの……何て言うか……その……」
ウチの汎用型の1人である大石が……何か言いたそうだ……。
「どうした?」
「えっと……第1小隊って……第2小隊と違って、チームワークが有るって言うか……その……上司と部下の口喧嘩が少ないって言うか……」
うん……たしかに、門司に転勤になってから……それは気になってた。
「ウチはウチ、向こうは向こうだ……合わないのに無理に見習う必要はねえぞ、うん……」
「そ……そんなモンですか?」
「その話は、今回の件が片付いてから、ゆっくり話そう、うん……」
例えば、同じ警察でも……実は「不祥事が、めったに発覚しない県警」の中にこそ、マジでアレな県警が混ってる。
何年かに一度しか不祥事が表沙汰にならないが、その「何年かに一度」の一件一件が爆弾級って県警は……結構有る。……しょぼい不祥事が、毎月毎週のように表沙汰になる県警の方が、余っ程信用出来る。
あたしら、レンジャー隊も同じだ。
20世紀の「戦隊モノ」みたいな感じのチームの方がガチでヤバい。
ウチみたいに、上司と部下が、四六時中口喧嘩してる方が……まだ、健全だ。
でも……門司に転勤になって、半年近く……何で気付かなかったんだろう?
同じオフィスで仕事してて……共同作戦も何度もやった……あたしの同期が隊長のチームこそ……その「一見フツ〜、実はマズい」チームだって事に……。まぁ、「一見フツ〜が実はマズい」と頭で判ってるのと、感覚的に「これフツ〜そうだけどマズい」と判断出来るかは、別問題なんだろうけど……。
「じゃ、現場に持ってく装備品の使用申請、更新しといたんで……確認しといて……」
その時、第2小隊の隊長が、そう声をかける。
えっと……。もちろん、千夏ちゃんに言われた、大口径の狙撃銃と重機関銃……弾は、徹甲弾と対人向きの弾、両方。
他のメンバーの銃用の弾も……「確実に殺す」系の弾種が追加されてる。
あと、防毒ガスマスクに、催涙ガス弾と催涙ガス弾用の射出機。
まぁ、大概の魔法使いは、精神集中が出来なくなったり、呼吸困難になったりした場合、魔法が使えなくなる事が多いので、催涙ガスは魔法を使えない奴が、魔法使いに対抗する鉄板手段だけど……。
「催涙ガスだけど……いざとなったら、こうね」
隊長は……デカい口径の銃器を水平に構えるようなポーズを取った。
催涙ガス弾は、普通、斜め上に撃つ。
催涙ガス弾の水平撃ちは……イロイロアレアレな国でなら、たまに行なわれる……例えば、民主化デモの参加者を事故死に見せ掛けて殺す時とかなんかに……。




