ROUND UP
「吽ッ‼」
外に出て来た若い男が……あたしらを見回すのと、ほぼ同時だった。
その叫びと共に……炎のように見える「何か」が、あたしらの周囲に……え〜っと、結界つ〜のか? ともかく、その炎は、あたしらを護ろうとしたらしいけど……。
ごわあッ‼
その炎は、若い男が放ったらしい「気」だか何だかで、一瞬で吹き飛ばされた。
「これ……かなり剣呑い攻撃?」
あたしは、ファイアーパターンの強化装甲服の「魔法使い」に、そう訊いた。
「ち……違うっす……」
「どうやら……そちらにも『魔法使い』が居るようですが……私が『観た』だけで、このザマでは、お話になりませんね。尻尾を巻いて、お帰り下さい。今なら見逃します」
「観た? ど〜ゆ〜事?」
「奴は……あたしらの力量を探ろうとしただけっす」
「はぁ?」
「喩えるなら、向こうはレーダー用の電波を放っただけのつもり、こっちは、そのレーダー用の電波をマトモに食ったら焼死体の出来上り……そんな所だ」
今度は、流水紋の強化装甲服のヤツが、そう説明する。
「詰んでない、それ?」
ウチの隊長が、当然の質問。
「私達にとっては、毎度の事ですけどね。しかし……ムカツく言い方をするヤツだな」
「てめ、1人だけ、魔法や心霊に耐性が有るからって、呑気に構えてんじゃね〜ぞッ‼」
「魔法が効かない……? 本当なら興味深いですが……でも、対抗策は手段は有りますよ」
チート級の魔法使いらしい若い男が、そう言うと……出来たてホヤホヤの3つの死体が起き上がり……。
「『魔法が効かないだけの相手なら、対抗策は有る』とか言い出す『魔法使い』は、どいつも、こいつも同じ手を使うな……」
「さて、5つ数える間だけ待ちます。その間に消えて頂けるなら、私は何のしません。私にも仕事……うわっ‼」
流水紋の強化装甲服が、銃を発射。だが、わざと外す。
続いて、ファイアーパターンの強化装甲服が、炎のように見える「気」を放つ。
「ぐえっ?」
……えっ?
「き……効いてんの?」
新人の片方が「信じられねえ」って感じの口調で、そう言った。
「パワーは無茶苦茶でも、ロクに修行もしてねえような奴だ。想定外の事態には、案外弱い。驚きやがったタイミングで攻撃すりゃ、防御さえ出来ねえ」
「ふ……ふざけやがって、このド三流が……」
次の瞬間、周囲の「嫌な気配」が若い男の周囲に集まり……。
幻だとは判っている。
でも……何か、すげ〜危険い事だけは判る、触手の化物が出現した……。
体は、それほどデカくは……何つ〜か……見えねえ。
でも、「嫌な気配の濃度」みて〜なモノがハンパねえ事だけは理解出来る。
「ぶっ殺し……」
「オン・マリシエイ・ソワカ……」
ファイアーパターンの強化装甲服の「魔法使い」が何か呪文を唱えた途端……触手の化物の姿が消えた。
「へっ?……おい、待て、何だ、これは? 我が神に何をした……」
「隠した」
「何を言ってる?」
「『気配を隠す』タイプの結界を張った……それだけだ……」
「ば……馬鹿な……そんな事で……」
「ま、時間稼ぎがせいぜいだけどさ……あんたの神様の気配が消えただけじゃねえぞ……あんたの神様にとっては、自分以外の全世界が、いきなり消えたように見えてるだろうぜ」
そう言いながら、ファイアーパターンの強化装甲服の「魔法使い」は、腰のホルスターからテイザー・ガンを取り出し……発射。
「ぎゃああ……」
「ターゲットに鎮静剤を打つ。薬が間違っていないか、確認たのむ」
流水紋の強化装甲服は注射器を取り出して、そう言った。
どうやら、後方支援チームと無線通話をしているらしい。
「お……終ったの?」
池田が、呆然とした口調で、そう言った。
「い……いや、霊感なんて、ほとんど無い俺でも危険いって判る『魔法使い』を……もう鎮圧?」
『助かったよ。こっちの心霊現象が止まった』
今度は、門司第1小隊の隊長の千夏ちゃんから、無線通話。
『じゃあ、こっちは、残党の鎮圧と、密輸された武器の押収をやる』
「悪い事は言わない。お仲間を撤退させろ」
流水紋の強化装甲服は、そう言い出した。
「な……おい、何、言ってやがる?」
「あんた達が、交戦した相手、あれは原田組や、その下部組織の連中じゃない」
「はあ? じゃあ、どこの奴らだ?」
「『もふもふアミューズ』……青龍敬神会の系列で、跡目争いに参加せず、局外中立を保っていた……ように見せ掛けてた『組』だ。だが、北九州市外の下部組織に準備をさせてた」
「何のだ?」
「私達も、私達が予想した手をヤツらが打って来る事の確証が取れたのは……今日になってだ。だから、準備の時間も無かった」
「何を言ってる?」
「そろそろ……密輸された武器・弾薬が門司に到着する頃か……」
その時……。
光。
眩しい光。
多分、トラックのライト……。
そう……あたしらに向かって……いや、原田組の事務所に向って、トラックが突っ込んで……おい、このシチュエーション、さっきも……。
そこに別のトラックが出現。
「伏せろッ‼」
1台目のトラックは、2台目のトラックの側面に激突……いや、2台目のトラックが1台目のトラックの突進を阻んだ。
そして……。
閃光。
轟音。
1台目のトラックが爆発した……。




