NO WAY OUT
あたし達と「正義の味方」どもは、一見すると住宅街に有る豪邸、実際は「魔法使い系のヤクザの組長の自宅 兼 組事務所」の玄関口まで来ていた。
「中の様子は、どうだ?」
「邪気が強過ぎて、判んねえし、ここまでの邪気だと、下手に『探索系』の『魔法』を使うだけで、何が起きるか知れたモノじゃねえ」
「何だ、いつもの事か」
「何の因果か、いつもの事だ」
「正義の味方」2人が、そんな会話を交してた、その時、何故か、警察車両のサイレンの音。
「何だ? こっちの応援か? でも、聞いてねえぞ」
「県警のエラいさんと災害通知アプリの運営に、私達に弱味を握られてる奴らが居てな。そいつらを動かした。何が起きるか知れたモノじゃないんで、近隣住民を退避させる」
「お前ら、やってる事が人助けなだけで、やり口はヤクザじゃね〜かッ?」
「そっちにとっても毎度御存知の事だろ。言った筈だ。『正義の味方』は私達の自称じゃない。誰かが勝手に付けた呼び名が定着しただけで……待て……動くな」
「どうした?」
「判った、そうか……」
流水紋の強化装甲服の奴は、急に、誰かと無線通話を始める。
「何だ、おい?」
今度は、ファイアパターンの強化装甲服の「魔法使い」が、自分の耳の辺りを指差す。
「ほんの少しっすけど、異音が有ったんで、後方支援チームに分析してもらってるっす」
「はあ?」
「モーター音。推定発生位置は、庭内の複数の場所。あと、足音らしき……」
流水紋の強化装甲服の奴が、そう言った途端に……。
「全員、ライトONにしろ」
「強化装甲服のカメラの暗視機能をONにすりゃ良かと違うね?」
「こいつらの強化装甲服にも有るとは限らないだろ」
そして、光が、玄関と母屋の間の庭を照し……人型の黒い陰が複数。
「おい、この組、『魔法使い』系だったよな?」
「この手の代物は、魔法使い系を暗殺する時の定石だ。だったら、自分達の身を守る為にも使ってるだろうさ」
銃撃音。
庭のあちこちから出現したのは、黒っぽい色の……遠隔操作タイプらしい人間サイズの人型ロボット。その手には短機関銃が握らている。
あたしらは、塀を盾にして……オレンジ色の強化装甲服の奴が、ゴツめの散弾銃の弾を入れ替える。
「こん畜生がッ‼」
発射された銃弾は、ロボットに命中・命中・命中、そして、もう一発命中。そして、爆発・爆発・爆発、そして、もう一回爆発。
爆発って言っても、ハリウッド映画ほど派手じゃないが、ロボットどもを機能停止させるには十分だ。
「あの、ウチにも卸してもらえません、それ?」
大石が「正義の味方」に、そう言った。
この銃は、こいつらと何度も喧嘩したり時には共闘する度に見てきた。
何て事は無い連射式の散弾銃だが、少々、手荒に扱っても中々壊れず、町中や建物内で使う分には十分な射程が有り、弾の種類を状況に応じて変える事が出来る。簡易焼夷弾だけは何の為に持ち歩いてるか、さっぱり判んね〜が。
「考えとく」
続いて、母屋から、白い服……何つ〜か、如何にもカルト宗教の信者の御用達的な感じのヤツを着た若い男が3人ばかり出て来て……。
「あいつらは、殺していいヤツらか?」
「ああ、下っ端だ。ブッ殺した後に怨霊とかになっても対処法はいくらでも有る」
「ふんぐるいッ‼ ふんぐな……」
ドンっ‼
とんでもねえ轟音と共に、流水紋の強化装甲服の2人の内、エセ九州弁の方が高速移動。
さっきまで、そいつが居た場所は……アスファルトが陥没していた。
下っ端魔法使いどもが、呪文を唱え終らない内に、強化装甲服の腕の隠し刃が、次々と下っ端魔法使いどもの喉を斬り裂き、青い装甲が赤く染まる。
「おい、高速移動にスーツが耐えられるか、テストしたのか?」
「え……えっと……一応」
「じゃあ、後ででいいから、どんな異常ケースのテストをしたのか、ゆっくり説明してくれ」
「……えっと……その……」
「ふざけんな」
もう1人の流水紋の強化装甲服のヤツと、オレンジ色の強化装甲服が、そんな会話を交し……。
「おい、すぐ戻れ、あと、全員、飛び道具の準備だ」
続いて、ファイアーパターンの強化装甲服の奴が叫ぶ。
「どうした?」
「御出座しだ……本命だか、御本尊だかのな……」
ドンっ‼ ドンっ‼
今度は、轟音が2つ。
下っ端魔法使いどもを瞬殺したヤツが、高速移動能力で戻り……そして、強化装甲服の脚に付いてる杭をアスファルトに突き刺し、ブレーキ代りにする。
「これで、良かね?」
高速移動で戻って来たヤツの手には……既に脇のホルスターに入っていた銃が握られている。一見すると、妙に口径がバカデカい拳銃だが、実は、散弾銃用の弾を発射出来る単発式の銃だ。
「ああ……」
ガラ……っ……。
余りにも当り前のように……母屋の入口が開く。
いや、普通に人間が手で開いだだけだ。
多分、あたしらの強化装甲服のカメラの映像を後で見直したら、若い男が、バカデカい以外は普通の日本家屋風の家の玄関口を自分の手で開けて出て来た……そんな映像が写ってるだけだろう。
それも、「良く見りゃカルト宗教の信者が着てる服ぽいよな〜」って先入観さえ無けりゃ、町中で着て歩いても、誰も変に思わねえような服を着た……中肉中背、イケメンな方かも知れねえが、芸能人か何だだと誤認する程じゃあねえような感じの……中途半端なイケメン。
ついでに言えば、「中途半端なイケメン」の平均値みて〜な感じの……まぁ、どこにでも居そうな、分れて10分後には特徴を覚えてる自信が無いような感じの若い兄ちゃんだ……。
更に足に履いてるのは安売りショップで売ってそうな感じのサンダル。
でも……。
轟……そんな音が聞こえた気がした。
「何と、騒々しい事でしょう……我が神は静謐を好まれます……」
昔のダーク系ファンタジー漫画で読んだ覚えが有るよ〜なセリフ……。
だが、そいつの体からは……とんでも無い「嫌な感じ」が吹き出していた……。
そう……不気味なブッ太い触手が何本も蠢いてる幻が見えるレベルの……。
「じゃあ、手順を確認するぞ。メイン・プラン、お前が考えた手だ。バックアップ・プラン1、待機してる翠の龍に『龍脈』の霊力を呼び出してもらっての力押し。バックアップ・プラン2、私を除いて全員退避後、私が奴を殺す」
「今んところ、それで問題が出るような『想定外』は起きてねえ」
流水紋の強化装甲服のヤツと、ファイアーパターンの強化装甲服のヤツは……そう会話を交した。
「でも、ヤツを何とかした後に、ちょっと問題が有るぞ。別の想定外が有ったんでな……」
ところが、オレンジ色の強化装甲服のヤツが、妙な事を言い出した。
「こんな台詞を言うのは嫌いだが……」
「何だ?」
「いつでも、どこでも、どんな状況でも、全員を救えるとは限らん……残念ながらな……」
おい、待て、何を言ってるんだ?




