PUNISHMENT
「あ……あの……副隊長……その……」
流石に新人がドン引きしてる……けど……。
「自白わせ易そうな奴を何人か残して……残りはブッ殺せ。気にする事はねえ、書類は全部、あたしと隊長が書いてやらあ……」
続いて短機関銃の銃声。
「変身してる奴らばっかりなのに、どうやって、自白わせ易いか判断すんだよ?」
鬼系の奴を1人銃殺した隊長が大真面目にそう訊いてきた。
「今、逃げようとした奴で良いんじゃないですか?」
大石は言葉通り背後を見せた獣人系の奴の背中をテイザーガンで撃つ。
「おっと、その甲羅なら拳銃弾は防げると思ったか?」
「がああ……」
「ぐげげげげ……」
あたしは、背中の金属腕で、河童系の奴2人の頭を掴んで体ごと持ち上げる。
「ぐごぉッ‼」
その時、背後から、やたら派手な悲鳴。
「ん?」
あたしは、声のする方向を見ようとした途端……。
「ちょ……それ展開したまま、体の方向急にを変えないで下さいッ‼」
ところが、あたしの強化装甲服に付いてる大型アームと激突しそうになった池田が悲鳴。
「あ、悪い……で、何が起きてんの?」
その時、池田が、自分の耳元を指差す。
どうやら、無線を一時オフしろ、と言ってるらしいんだが……。
切ろうとした、その時……。
『小倉第2小隊ッ‼ 聞こえてる? 聞こえてるなら、すぐに原田組の事務所を攻撃してッ‼』
いきなり、第1小隊の隊長である千夏ちゃんの怒鳴り声が無線機から響く。
「あ……あの……攻撃します?」
「どっちをだよ? こいつらか? 原田組の事務所か?」
新入りとウチの隊長の間抜けな会話。
「こいつらって誰だッ?」
「私達だ」
聞き覚えが有る声。
「また、お前らか……」
頭から血を流して気絶してる河童2人を地面に落し、大型アームを格納。
そして、ゆっくりと……振り向くと……。
あたしらの小隊の勤務地が久留米だった頃からの腐れ縁の相手。
ファイアーパターン風の模様が描かれた、あたしらが使ってるのより遥かに上等の強化装甲服に大型ハンマーを持ってる「魔法使い」系のヤツ。
同じ型式に流水紋風の模様が描かれてる強化装甲服を着装してるヤツが2人。
そして、お仲間と同系統だが、汚染地帯・危険物処理用のヤツの改造機らしいオレンジ色の強化装甲服を着装して、手にゴツい大口径の銃を持ってるヤツ。
久留米が本拠地の筈なのに、何故か最近、やたらと北九州市内で見掛ける「正義の味方」チームの1つだ。
その足下には、見事に倒れてる河童・獣人・鬼達。
「で、原田組の事務所を攻撃するのか?」
「お前ら、警察無線を盗聴してんのか?」
「当り前だ」
「どうやって?」
「説明すると長くなるので、その内、ネット上に『警察無線の暗号の仕組み』についての『頭のいい高校生レベルでも復号プログラムを作れるレベルの解説』をUPするから楽しみにしておいてくれ」
「やめろ、馬鹿」
「えっとさぁ……原田組の事務所攻撃するのはいいけど、この辺り、フツ〜の住宅地っすよね?」
口を挟んだのは、ファイアパターンの強化装甲服のヤツだった。
「それが、どうした?」
「やるのはいいっすけど、やったら、この辺り一帯、心霊スポットと化しますよ。それも、浄化すんのに、並以上の魔法使いを20人か30人投入して半月以上かかるレベルの……」
「……と、この場に何故か現われた『正義の味方』どもが言ってるんですけど、どうします?」
『呑気な事言ってないで、早く何とかして下さい。こっちは、とんでもない事になってるんですッ‼』
ウチの隊長と千夏ちゃんが無線で通話するも……。
『ともかく、こっちの映像を転送しますッ‼』
いや……霊とか使い魔とか式神とかは動物や人間に取り憑いてない限り、カメラには写らないんで、映像を転送されても……って……。
死体。
死体。
死体。
更に死体。
笑うしか無いレベルの数の死体。
映画かゲームで、毒ガスとか細菌兵器とか中性子爆弾とか……そんなモノが使われたシーンみて〜な感じの、山程の数の死体……。
それも、普通の人間に、妖怪系・獣人系、満遍なく取り揃えられてる。
それが、関門トンネルの門司側の出入口の辺りに……ああ、こりゃ、しばらくの間、本州・九州間の交通に支障が出るな……。
あたしらの小隊の勤務地が久留米だった頃、その久留米では面白いように、JR久留米駅前が壊滅するわ、県警の久留米署が吹き飛ぶわ、西鉄久留米駅前に心霊スポットが出現しかけるわなんて事が起きてたけど……それより洒落にならない事態かも……。
「あのさ……そっち、生き残り、どれ位居るの? えっと、警察官とヤー公の両方って意味で……」
『何、言ってんの? 私達を見捨てる気?』
千夏ちゃんも、かぁ〜なぁ〜りパニクってるのが丸判りな口調だ。
「ええっと……どうやら、原田組が飼ってる『魔法使い』が放った『旧支配者』系の『使い魔』が十数匹大暴れして……まぁ、レンジャー隊の約3分の1と、1時間以内に関門トンネルを通って門司に到着する予定のトラック2台分の武器・弾薬を巡って喧嘩してたヤクザどもの約半分は死亡または戦闘不能らしい……私達の仲間が撤退した時点ではな……」
「ちょっと待て、お前らの仲間でさえ、撤退せざるを得ない状況なのか?」
「まぁ、そう言う事だ。残酷な事を言うようだが、そっちのお仲間は見捨てる事を推奨する。北九州市の同業者から聞いた限りでは、あんた達以外の北九州市担当の『レンジャー隊』は『卒の無い優等生』ばかりみたいだな。なら、代りはいくらでも居る」
「ふざけんなッ‼ んなの『正義の味方』の言うセリフかッ⁉」
「生憎だが、私達を『正義の味方』と呼んでるのは私達じゃない。どこの誰かも良く判らん奴らが、いつの間にか、勝手に、そう呼び出して、気付いた時には、その呼び名が定着していた。他人が何と呼ぼうが、私達は私達だ。他人の勝手な勘違い通りの行動をやる義理など無い。むしろ、そんな勘違いを利用するんじゃなくて、そんな勘違いを勘違いだと判らせる行動をする方が、余っ程、誠実だ」
「どっちにしろ、まだ、間に合うんだろ? 今、そのクトゥルフ系だか何だかの『魔法使い』をブッ殺せば……あたしらの仲間への攻撃は止まるんだろ?」
「まぁ、止まる事は止まるんすけどね……」
ファイア・パターンの強化装甲服の「魔法使い」は……「何と説明すりゃいいんだか」的な口調。
「状況を御理解して頂くには、この手しか無いようだな。おい、原田組の事務所の周囲の結界を破れ」
「いいのか?」
「他に手は有るか?」
「わかった。それしか無いか……」
次の瞬間……。
一般人並の「霊感」しか無い……つか、元から「戦闘訓練を積んだだけの一般人」だが……あたしにさえ判るような超々々々……々「嫌な感じ」。
「な……な……な……な……な……なんだ、ありゃッ?」
原田組の事務所から……エロゲにでも出て来そうなバカデカい触手の化物の姿が……いや……多分、実態が無い霊体なんだろうが……。
「だから、言ったでしょ……あそこを、迂闊に攻撃して……原田組が飼ってる『魔法使い』を殺すのに成功したが最後……この辺り一帯は、タチの悪い心霊スポットになるって……」
「何だよ、ありゃ? 何で、あんなモノが……」
「教祖系……」
「は?」
「単なる思い込みが強いだけの『魔法使い』っすよ。ただし、居るかどうかも判んね〜『神様』の声が常時聞こえるレベルの『思い込み』っすけどね。そんな状態に到る事さえ出来りゃあ……そこそこの才能さえ有れば、大した努力も無しに、あのレベルの『魔力』を得られるんですよ」
「ふ……ふざけんな……『思い込み』だあ? そんな事だけで、あんなモノを呼び出せるよ〜になるんなら、この世界は化物級の魔法使いだらけだぞ」
「だから、あたしら『魔法使い』系の間では、あんなのを『教祖系』って呼んでるんすよ」
「はぁ?」
「楽してチート級の魔力を得られる代りにカルト宗教の教祖か『悪の組織』の首領しか出来る仕事がねえような阿呆に成り下がる。そんな真似をやる『魔法使い』は元から救いよ〜のね〜阿呆って事っすよ」
「何か凄い事が起きてるようだが……幸か不幸か、私の『霊感』ってヤツは、一般人以下どころか、ほぼ0なんで、良く判らんな……」
流水紋の強化装甲服のヤツが、呑気にそう言いやがった。
いや「結界を破れ」って言ったのは、お前だろうがッ‼
「頼んだぞ……お前が、にっちもさっちも行かなくなった場合の最終兵器だ」
ファイアーパターンの強化装甲服の「魔法使い」が、流水紋の強化装甲服のヤツにそう言った。
「どう言う事だ?」
「私は、霊感が、ほぼ0の代りに、魔法や心霊の影響を極端に受けにくい。『この辺りを心霊スポットに変えても止むなし』にまで、状況が悪化したなら……元凶を、私の身に危険が及ばない状態で殺す事が出来る」
「あ……あのなあ……」
「そこまで状況が悪化した場合は、近隣住民の避難誘導をお願いしたいが、御協力いただけるか?」




