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第45話 一方、騎士ウーフェはパーティを募る⑥

「はぁ〜っ、やっと追いついた〜……」


「大丈夫ですか、リーダー?」

 

 後から遅れて合流してきたドローランとヒメがウーフェの元へやってくる。


「お、お前ら! 何ちんたらしてやがったんだ! さっさと来て援護しろよ!」


 ウーフェは昂る感情のまま八つ当たりをする。が、それを聞いたドローランの表情はひどく冷めきったものだった。


「…………何って、今のはあなたが一人先走った結果でしょう? 『パーティを組む時はお互い援護出来る位置取りを行い、連携を乱さないようにする』なんて常識、いちいち説明しないといけませんか?」


「ぐっ…………!」


 ぐうの音も出ず、ウーフェは唇を嚙む。


「はぁ……。今時新人の冒険者でもしない愚行を、まさか目の前でされるとは思いませんでした」


「ね〜。しかもおじさん服泥だらけだし、見た感じ骨にもヒビ入ってるっぽいね〜。あのモンスターにボコボコにされたの~? 雑魚じゃ〜ん♡」


「う、うるせぇ! さっきは少し調子が悪かっただけだ! 俺が本調子に戻ればあんなヘマは……」


「そうですか。では、()は彼女に任せるとしましょうか。あちらは調子がいいみたいですので」


 そうしてドローランが指差す先を見ると、そこには刀を手に舞い踊るサツキの姿があった。見せかけでなく、自然体のまま鋼鱗蛇(ガルドネア)を翻弄して着実に痛手を与えていく。


「私は彼女を援護してきます。リーダーはここでヒメに治療してもらってください。……その様子だと前に出るのは難しいですし、彼女を守るくらいなら出来るでしょう?」


「なっ!? おい、リーダーは俺だぞ! 勝手に指図するな!」


「そういう台詞はもっと建設的な指示を出してから言ってください。報酬分の働きはすると言いましたが、無能な指示に命を懸けるつもりはありませんので」


 それだけ言い残したドローランはその場を離れて戦いの場へと赴き、魔法を唱え始める。威力は並だが、その分手数で大蛇の動きを鈍らせてサツキの攻撃する好機(チャンス)を確実に生み出していく。

 

「クソッ! 雇われの分際で舐めたことを……!」


「けど、今のはあのメガネ君が正しいよね〜。悪態ばっかで言い返せてないのがいい証拠だよ?」


「うるさい! いいからさっさと治療しろ!」


「ほらやっぱり。……おじさん、やっぱりからかっても面白くないね。ま、助けるのはいいけどさ。その後はちゃんと守ってよね〜」


 そうしてヒメが負傷したウーフェを治療する間、他二人の攻撃によって鋼鱗蛇(ガルドネア)はその残り少ない命を燃やし、力なくその場に崩れ落ちた。


   * * *


「…………」


 他愛もない相手だった。


 倒れる大蛇を尻目に刀を収めようとするサツキ。鞘に刀身の半分程を収めた頃――手がピタリと止まった。


 手だけではない。足も、思考も、鼓動さえも凍りつくように動かなくなる。


『――()()が来る……!』


 サツキが自らの内に流れる獣の血を信じて大蛇から離れた次の瞬間――雲を裂き、低くくぐもった唸りを伴う黒い影が大蛇を足蹴にして地上へと降臨した。


「――黒い、(ドラゴン)…………!」


 漆黒の鱗と翼、鋭い爪に只ならぬ気配。まるで今倒したモンスターなど、これから来る()()の序章に過ぎなかったと言わんばかりの圧を確かに感じさせる。


「これは……報告にあった、魔王の駆る黒龍…………。こいつが出てきたということは、やはり魔王の拠点はこの近くにあるということでしょうか……」


 刀の仕舞う途中で固まるサツキの傍ら、ドローランが汗を垂らして警戒を強める。


「マズイですね……。今この人数で仕掛けるにはあまりに分が悪すぎます。ここは一度引いて報告を――」


 ――ダッ!!!


 ゆっくり後ろに下がろうとするドローランとは対照的に、サツキは再び刀を抜いて勢いよく前へと飛び出した。


 その目はただ真っ直ぐに、強者のみを追い続ける。

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