表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/50

第46話 黒龍再誕

「…………勝負」


 翠の影が黒き龍にその刃を向ける。音すら置き去りにして駆ける少女をその目で捉えてもなお、黒龍は微動だにしない。

 

 易々と接近を許されたことに僅かな不満を抱きながらも、サツキは両脚に力を込めて高く跳び上がった。遮るものがない空の下、月光を反射した双刀が流星の如く交差する。


 ――ガキィィィン…………!


 華麗さと強靭さを兼ね備えた刀は黒龍の鱗を確かに打ち破った。が、裏に控える強固な肉体がそれ以上の侵攻を許さない。


 攻撃を弾かれたサツキは無防備な形で宙に投げ出され、黒翼の餌食となってそのまま地面へと叩き落とされた。


『…………流石に手強い。実力は、さっきのより数倍上……』


 衝撃を甘んじて受け入れることで落下中に身体を回転させ、上手く着地に成功するサツキ。そこに今の攻防を傍で見ていたドローランが駆け寄ってくる。


「ここは一度退きましょう。このまま私たちだけで相手するのは厳しいです。それに――おそらくですが、奴の狙いは私たちではありません」


 サツキがドローランの話に耳を傾けていると、その推測を裏付けるようにして黒龍が反撃の構えを解いた。そして地面に転がる大蛇へ目を落とし、かつてこの森で強者として君臨していたであろうその亡骸に自らの手を押し当てる。


 メキッという音と共に沈み込む大蛇の腹。牙を立てる訳でもなく、舌を伸ばす訳でもなく、ただ手を当てるだけというモンスターらしからぬ不可解な行動を前に、二人が警戒した次の瞬間――。


 ――グルルルルウァァ!


 世界そのものを揺さぶるような咆哮が轟き、大蛇を象っていた魔力が黒龍の手によって無惨にも搾り取られた。命無き鋼鱗蛇(ガルドネア)はまるで空になった皮袋のように萎み、枯れ果て、やがて塵となって姿を消す。


「何だ、今のは……? 力を吸収したのか…………?」


 あたかも最初から存在していなかったかのように完全消滅した大蛇に驚きながらも、ドローランは少しでも冷静であろうと思考を巡らせる。サツキもこれまでの強気な姿勢を保ちながら、怪しげに佇む黒龍へ双刀を向ける。


 ――ふぅ……、これだけあれば十分ね。


「…………声?」


 聞き間違いだろうか。この場の誰とも一致しない女性の声が何処からか聞こえ、サツキは自分の耳を疑う。


 ――はぁ~、疲れた……。新しい身体作るのも楽じゃないわね。ざっと五十体は吸ったかしら? けど、これでようやく()()は満たしたわ。


「誰だ!?」


 聞き間違いではないと分かり、今度はドローランがその誰とも話す気のない言葉の出処を探る。


 当然、返事は何も返ってこない。だが代わりとして、黒龍の身体に突如無数の亀裂が走った。割れたそばから眩い光と魔力を噴き出し、崩壊の波を全身へと伝えていく。


 ――バキッ! バキバキッ!!!


 そうして黒龍は自らの手で龍としての生に終わりをもたらした。そして抜け殻となった元の身体を捨て、新たに生み出した身体で外へと這い出る。


 月光を反射して淡く輝く蒼紫の髪。背中には漆黒の翼が靱やかに広がり、金色の瞳を紅蓮が覆い囲んでいる。二本の足で静かに立つその姿は龍としての面影を残しながらも、「人」であることを誰の目にも明らかにしていた。


「――よしっ! 上手くいったわ! これでようやく会いにいけるわよ、()()()!」


 黒き龍が、人としてこの地に()()した瞬間だった。

本作をお読みいただきありがとうございます!

「面白い!」「続きが気になる!」と思ったら下の欄にある☆☆☆☆☆で作品への応援お願いします!


※面白かったら☆5、つまらなかったら☆1くらいの気持ちで気楽にしてもらって大丈夫です!


皆様の応援が作品投稿の励みになりますので、よければ応援のほどよろしくお願いいたします!


※本作はカクヨムでも連載しております。

最新話まで一気見したい方はこちらから是非ご覧ください!


https://kakuyomu.jp/works/16818622172640690368

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ