177ね、帰ろうか。(タツヤ)
「良かったじゃないの。」
「あぁ、よかった。」
アースホールの時空の歪みへと戻っていた。
そう話しかけてくるのは霞。
あぁ、良かったさ。本当に良かった。何度…、何度も転生を繰り返しても決して変わらない人生。
だから、諦めていた。すべてを投げ捨て、永遠に終わらなくて、このつまらなくて、ひどく悲しくて、生きていても意味のないような転生人生に、ただ身を投げ捨てて、すべて投げうっていた。
だけど…、だけど、生きていれば、いつかは、本当にいいことも起きるもんだ。
俺は何もしていない。ただ、ただ、望んでいただけ。
周りに蔑まされても、周りから罵倒を浴びせられても、ただ、ただ、毎日を諦めずに必死に生きてきただけ。
でも、奇跡は起きた。起きたんだ。
あぁ、今日はなんて素晴らしい日だろうか。今日というこの日を決して忘れることはないだろう。
そして、今は、話しかけてきている霞も、記憶はないながらもあの人の転生した姿。
「なぁ、霞さ、長く長く生きてれば、いつかはいいことも起きるもんだな。」
「そうね。」
そんな霞の顔を再び見つめる。そうだ、やはり、あの人だ。
「ね、帰ろうか。―――くん。」
「えっ。」
「だって、タツヤってこの世界での名前なんでしょ。」
そうだ。その通り。「タツヤ」というのは自分の名前が思い出せなかったから、適当につけた名前。
「それを言ったら、霞だって、本当の名前は――――。」
「あたしは、ほら、記憶がないから、その名前で呼ばれても何か実感がないのよね。…ねぇ、もしかして恥ずかしいの?、顔真っ赤だよ。もう1回言ってあげようか。」
別にそんなのではない。そんなのではないのに、顔が充血し火照ってくる。
そこへ霞が真っ赤になった頬を指でツンとついてきた。
「かわいいところもあるじゃん。オッサンのくせに。」
「オッサンは余計だ。」




