171幕間:世界の最後(ダン)
リアの店は戦争に巻き込まれて、再び瓦礫の山になってしまった。
そして、今もなお戦争中だ。ラビリンスの冒険者はみんな、ギルドに強制招集されてしまった。もちろん、私のところにも強制招集令状が来た。
これから、どうしようかと、リアの店のあった場所のところに来てみたら、瓦礫の中に立つリアがいたんだ。
「あら、久しぶりね。見て。もう全部ダメになっちゃったわ。」
「そうだな。酷い有様だな。」
「今日はどうしたの?。強制招集の連絡でも来たの?」
「まぁ、そんなところだ。」
「そう……。なら、そんな招集なんて無視して、あたしと一緒に来ない?」
「強制招集を無視か。…そうだな。無理矢理、戦わされるよりは、いいだろうな。」
これは、大問題だ。ギルドからの強制招集を無視したことになる。けど、リアと一緒に行くほうが面白そうじゃないか。だから、私はリアの後を追って一緒に行動したのだ。
どこに行くのかと思ってはいたが、行きついた先はグローリーホールの奥底。
RGF社が大穴の底にまで行く装置を建設していたので、容易に行けた。まぁ、戦争のせいで、半分ぐらいは壊されてはいたがな。
私もグローリーホールに来たのは初めてかもしれない。奥に天井から斜めに立つ城があり、周りを見渡せば、レッドダイヤの結晶を採掘した跡があちらこちらにあった。
これが、RGF社が乱獲したレッドダイヤの跡なんだろう。
リアは真っすぐに城へと歩いていく。歩いていくと、不思議なことに重力の向きが変わるのだろう。歩く場所によって下の方向が変わるのだ。
しばらくして、リアは歩みを止める。
リアの前にいたのは、一人の美しい女性……いや、人ではないな。
あの妖艶なオッドアイの瞳、美しい深紅のドレス、艶やかで長く伸びる銀髪。
その姿は、あまりに美しく一目惚れしたかもしれないと表現してもいいのか。
だが、わかっている。以前にもラビリンスを破壊する姿を見ている。
目の前にいるのは、少しだけ背は縮んでいるが、紛れもなく、アイギス、その者だ。
「で、また貴様か、再び、妾の行く手を阻むというでもいうのか。」
「そうね。」
アイギスはリアに話しかける。そこから察するに、アイギスは再びラビリンスを破壊するつもりか。
そして、リアの目的もアイギスの破壊活動を止めることだったか。
けども、私の勘は違ったようだった。
「それも、いいかもしれないけれど、もう疲れたわ。好きにすればいいわ。」
「ならば、行かせてもらうぞ。」
「そうね、勝手にすればいいじゃないの。それより、ずいぶんと小さくなっちゃって。おかわいいこと。」
「余計なお世話じゃ。これでも少しは元の姿に戻ったのじゃ。」
アイギスは、リアの脇を素通りしていった。
「おい、いいのか。」
「いいのよ。もう。あたしも同じ光景は何度も見たわ。人間を助けてもいい。けど、助けたところで、いずれまた同じこと起きるに違いない。それに、今はもっと大事なものがあるの。」
果て?もっと大事なものとはなんなのかは、私にはよくわからなかった。
その後、俺たちは目の前にあった城でリアと暮らすようになった。ずっと、ずっとな。
その後、ラビリンスやノヴァリスがどうなったかは知らない。
風のうわさによれば、この世界からついに人間は絶滅したらしい。
私は冒険者でもあり、傍観者。
もう、何年も何年も、冒険者たちの片隅でこの世界を見続けてきた。
私は世界が滅びようが、ただ、ひたすらに世界を傍観するだけなのだ。




