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168最後の告白(タツヤ)

 

 あの事件からどれだけの年数が経過したのだろう。

 年数が経過したといっても、自分の転生してきた人生の時間からすれば、僅かなものだ。


 いろいろとあった。

 再び、戦争が起きた。ラビリンスはもう、昔のラビリンスではではない。街にはスラム街でき、治安は悪くなり、人々の生活は荒んだ。


 アリエルがいなくなった。


 ノヴァリスには、ベベルゼルド、魔女、セイイチがいた。だが、彼らは、ラビリンスからスパイと疑われ、投獄されたらしい。今はどうなったかすらわからない。


 グレゴリーもノヴァリスとの戦争を止めようと活動していたという噂は聞いたことがある。だが、彼の場合はノヴァリスからのスパイと疑われ、彼もまた、投獄されたらしい。


 リアも戦禍に巻き込まれて店が全壊したそうだ。それからというもの、リアとは連絡が取れていない。


 あと、朱音という人物を覚えているだろうか。元RGF社の社畜社員で、初めてRGF社を辞めることができた人物。そして、俺たちのグループに勝手に入ってきて、勝手にノヴァリスへと行って、ベベルと再び会うという自らの夢を叶えた人物だ。

 だが、彼女は、戦禍のどさくさに紛れて再びRGF社に強制送還されたらしい。さらに、その後、ノヴァリスとの戦争で最前線に送り込まれ、ノヴァリスの最新鋭兵器に太刀打ちできず戦死したそうだ。


 俺は、これまでも何度も何度も転生してきた中で、この世界に転生して幸せだと言った。

 けども、今、改めて思う。


 こんな世界が幸せなのかと、結局、今まで転生してきた世界と何ら変わらないではないかと。


 結局、残ったのは、俺と霞の二人だった。

 俺たちに手元にあるのは、タワーマンションの最上階と、手に余った大量の金。

 いったいこれでどうしろと。


 ただ、俺と霞、二人が余生を生き延びるには困らないほどの十分な大金だったのは間違いない。

 あれ以来、俺は霞とずっと行動している。

 だから、これまで一緒に付き合ってくれた霞に感謝している。


 ここはラビリンスが一望できる秘密の場所。ずっとずっと前に、霞を連れ出し、『霞の側にいさせて欲しい。あなたの側で君を守りたい。』と言った場所。


 昔は、この場所からは、ラビリンスの大都市を一望出来た。昔は、頭上には提灯虫と人工の太陽の光、そして、下からはラビリンスの街並みが、この大迷宮を照らし、美しく、幻想的で、ロマンティックでもあった。まるで、満天の星空のようにな輝きだった。けども、今は戦争だ。輝きは失われ、荒廃した風景になってしまった。


「こんなところに呼び出して、何よ。」


 霞も転生者。そして、俺も転生者。転生した直後は若返るようだが、いずれ老いはとる。

 互いに、もう、おじいちゃんとおばあちゃんみたいなもんだ。


「覚えてるか?昔、俺が話したこと。」

「ううん。まったく。」

「おい、お前な……。まったく、昔、ここで、『霞の側にいさせて欲しい。あなたの側で君を守りたい。』って言ったのさ。」

「そういえば、そんなこともあったわね。」

「なぁ、霞。」


 俺は霞の真正面に立った。


「霞、俺は、霞、あなたのことが好きだ。これからもずっと一緒にいたい。」

「あら、愛の告白なの。ただ、やるなら、もっと早くにしてほしかったわね。」

「いろいろあるのさ。今もあの人のことが頭から離れない。」

「ちょっと、せっかくの告白なんだから、『あなだけを愛してる』とか言ってほしかったんだけど。」

「…そうだな。すまん。霞、あなたのことが好きだ。あなたのことだけを愛したい。」

「ふふっ。嘘つき。」


 そう言って、霞は俺の胸に飛び込んできた。

 そっと霞の体を抱く。霞の温もりが伝わってくるも、昔と違って少し冷たいし、肌もつややかな肌ではなく、かさかさした肌。


 けど、俺たちは、そこで抱き合った。しばらくの間、抱き合った。

 目の前に広がる薄暗いスラム街の前で、しばらくの間、抱き合っていた。


 もう、絶望にしか残ってないこの世界を前にして、二人で抱き合えることができたのは、幸せなのかもしれない。

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