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147幕間:地上の様子(ダン)

 

 私は今、地上の廃墟になったビルの屋上に生えた巨木からこの風景を見ている。

 例のグレゴリーたちが、ついに地上に出たという噂を聞いたもんで、こっちに来てみたのだ。


 え?どうやって地上に出たのかだと?


 グレゴリーたちはまともに洞窟を遡上したらしいけども、まぁ、私もBランクの冒険者だ。いろいろと企業秘密があったりする。


 それよりも、見て欲しい、この風景を。

 地上っていうのは、それまで凄まじい戦争が起きていた。

 惨憺たる戦禍だったのだ。すべてが崩壊し、瓦礫となり、爆弾の雨、爆撃の嵐、そして、人々を消滅させたと言われる黒い雨が降ったんだ。


 そんな環境に人なんて住めるわけがない。だから、地上に人なんているわけがないと考えられていた。


 見てくれ。この、空に浮かんでいる近未来のような大都市を。


 地上は廃墟だというのに、その上空に浮かんでいる人工的な島には多数の高層ビルが建ち並んで、それらの高層ビルを横に串刺すように構造物が通り、立体的な町の構造をしている。

 その中を無数のプロペラをつけた車が飛び回り、三次元的に縦横無尽に張り巡らされたレールの下をモノレールのような乗り物が高速で走っている。


 天空未来都市、ノヴァリス。

 まったく、これが現実だとは思えない。まるで映画の世界のようだ。

 おそらくは私たちが大迷宮にラビリンスという大都市を独自に作り上げたように、こっちでも生き残った人たちが独自に町を作り上げたらしいが、地上に残った人たち中には天才的な技術者がいたんだとか。

 空を飛ぶ浮遊する技術を開発して、激しい戦禍の中、無事だった町を町ごとを空に浮かべてしまったっていう話だ。


 それも凄い話だが、ここでさらに凄い発見があった。ある人物をここで見てしまったのだ。


 ベベルゼルドっていう名前を知っているだろうか?

 ひと昔のラビリンスにいた冒険者ならば、みんなが知っている。大ぼら吹き冒険者としてだ。

 彼は滅多にいないSランクの冒険者だった。彼の前には敵はいない。あのタチの悪いRGF社の兵士だって、彼が現れれば、尻尾まいて逃げていた。

 それに、ベベルゼルドの仲間も凄い人たちだった。リュウゼン=セイイチ、彼は見事な剣士、剣の前で彼の前に出る者はいない。そして、いつもとんがり帽子の魔女、こと、アイリス=クロニエル、若干、ババアではあるが、その魔術の腕は間違いない。


 けども、彼らはいつも大ぼら吹きだった。

 グローリーホールの地下には財宝があるだとか、いつかは、このグローリーホールを攻略するだとか、まったく根も葉もないほらを吹いては回っていたのだ。


 ところが、ある日、ベベルゼルドは言ったんだ。あのグローリーホールを前にして、わざと周りにいる冒険者たちに聞こえるような大きな声で。あぁ、覚えている。


「いいか、周りがなんと言おうが、俺たちの夢は誰にもつぶさねぇ。大穴だろうが、深海だろうが、目の前に壁があるなら俺たちは意地でも超えていく。いいか、覚えておきな。俺が、俺たちが、真の夢追い人、そして、このラビリンスで最高の冒険者だ!」


 そう言ったんだ。どうせ、いつもの大ボラ吹きだと思った。けども、その一か月後、彼らは本当にそのグローリーホールに飛び込んてしまった。あのときは、かっこよかった。


 そのベベルゼルドたちが、今、空を飛んでるプロペラをつけた巨大な船、あれは、飛空艦だろうか、それに乗って空から現れたんだ。

 私は、夢でも見てるのかと思ったよ。何せ、グローリーホールに飛び込んで以降、行方知れず。みんな死んだと思われていたのだ。それが、この地上で、しかも、空飛ぶ巨大な船に乗って現れたのだ。


 驚いたのはそれだけじゃない。ベベルゼルドの仲間はセイイチと魔女との三人だ。だが、今、目視で確認できる人数は四人、一人多いんだ。

 そのもう一人を見たときに自分の目を疑った。あの赤い髪、そして、RGF社の兵士の服。まさかと思ったよ。

 あれはどう見ても、あの社畜社員として有名なRGF社の赤髪ではないか。


 あぁ、そうだ。あの赤髪もグローリーホールを前に、会社を辞めるとか辞めないとかで揉めていて、あのタツヤという冒険者と一緒にグローリーホールに飛び込んじまったのだ。


 これは、凄いことだ。

 だって、今までグローリーホールに飛び込んで帰還した者なんていなかったのだ。

 それが、こんなにも多くの帰還者がいたのだ。それも地上にだ。

 しかも、なぜか、ベベルゼルドたちと一緒に居る。いったい、あのグローリーホールの奥に何があったとでもいうのか。あぁ、まったく興味は尽きないね。


 これは、もしかすると、グローリーホールの歴史が変わるかもしれない。


 そうこうしているうちに、ノヴァリスの飛空艦の離発着場に着いたようだ。空を飛んでる島から飛び出しているのが発艦場のブリッジなのだろう。そこへと接岸したようだ。


 おや?

 いずれ奴らも来ると思っていたが、ちょうどここで来るとはな。

 地上を見ると、グレゴリーたちの大隊だ。


 たぶん、あの空飛ぶ乗り物を追っかけて、あのラビリンスへつながる洞窟の入り口からここまで歩いてきたのだろう。

 歩くとはいっても、ここは一面を草木に覆われた廃墟、それに距離もかなり遠い。

 ここまで来るのはそう簡単じゃなかったはずだ。


 けど、どうやら、あんまり関係ないらしい。

 みんな、顔を真っ黒しながら、ここにきて、空飛ぶ島を目の前にして、みんな、同じように口を開けている。

 そりゃ、驚くだろう。

 こんな空飛ぶ島なんて映画とかアニメにしか出てこなかったんだから。


 ノヴァリスは空飛ぶ島だが、ちゃんと地上へと降りる小型の飛空艦みたいなものがあるようだ。

 地上にいるグレゴリーたちに気づいたのか、小型の飛空艦が島から降りてきた。


 その小型の飛空艦から誰が出てきたかと思えば、あの大ぼら吹きの有名人、ベベルゼルドときた。


 それは、みんな驚いたように、また口を開けてしまうな。


 どうやら、ベベルゼルドはここに到着したグレゴリーたちに気づいて、小型の飛空艦を出してくれたようだ。


 ベベルゼルドは、グレゴリーに近づき、笑顔で手を差し伸べる。

 グレゴリーも、その手を受け、握手をしたようだ。


 ちょっと、ここからは遠いから何を喋っているのか、よく聞こえない。でも、ベベルゼルドは声が大きいから、ここからでもなんて言ったのかは察しがつく。


 ベベルゼルドは、おそらくグレゴリーたちにこう言ったんだ。


「ようこそ、地上へ。」


 そして、あの後、こうも言ったな。


「グローリーホールの地下には、財宝があったぞ。」


 ベベルゼルドのやつ、いい笑顔じゃないか。

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