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140帰り道のはなし(タツヤ)

 

 朝が来た。

 どうやらそのまま眠ってしまったようだった。

 少し肌寒いかもしれないが、朝日が飛空艦の甲板の上を照らしてまぶしい。

 欄干まで歩みを進めると、一面の雲海だった。地上はきっと天気悪いのかもしれないが、さすがの空の上、まったく天気は悪くない。


「ふぁ~、おはよう。」


 と霞も起きて、俺の隣に立つ。


「今日は雲海が綺麗ね。ふぁ~。」


 と大きなアクビをしながら、半分寝ぼけなまこの霞に声をかける。


「霞、戻ろう。」

「戻る?ふぁぁ~、うん?、戻るって?」


 霞は寝起きがめちゃくちゃ悪い。寝ぐせもどこかの仙人かと思うほどに酷い。

 手櫛で髪を整えながらも、口にゴムを加えて、髪をまとめている。実は、こういう仕草に男は弱かったりする。


「アースホールだよ。俺にもわからないけれど、あそこなら、真実がわかる気がしたんだ。」

「そ、そう。。。え?アースホール?どうやって戻るの?まさか、地上に降りて洞窟を通ってラビリンスに戻って、そこから大迷宮を通って、グローリーホールを通って、アースホールまで戻るわけじゃないでしょうね?」


 驚いたのか、それまで、手でまとめていた髪をほどいてしまって、髪が風で舞いあがる。


「そのつもりだが。。。回り道かもしれないけれど、だが、夢のためだ。」

「。。。いや、ごめん。あたし、ここに残るから。」

「え。」

「ごめん、昨日は流れで一緒に行くとか言ったけど無理。じゃ。頑張って。応援してる。♡」


 いやいや、その最後のハートマークいらないから。そういえば、どこかの誰かが言っていたな。女は心変わりが早いから気を付けろってな。


「あら。おはよう。」


 とそんなときに、魔女とベベル、セイイチの三人組と、俺のペットがやってきた。


「ペットじゃないのです。妖精なのです。」

「別にいいだろ。」


 とアリエルだ。そこへ遅れて朱音がやってくる。


「タツヤさん、霞さん、おはようございます。あたし、少し考えたんですけど、ベベルさんのチームにしばらく残ろうと思うんです。ベベルさんたちと少しお話しました。あたしは初めてこの地上に来ました。地上についてあたしはいろいろとわからないことだらけです。わからないことは追及するのが冒険者ですからね。それに、地上は昔の地上とは大きく変わってます。この飛空艦だって、ノヴァリスという未来都市で新しく作られた乗り物です。夢は尽きませんね。」


 と、いい笑顔でニコッと笑う。まるで天使の少女のようだ。

 あのグローリーホールにいた頃とはまったく表情が違うではないか。

 そこへ魔女、こと、アイリスが補足してくれる。うん、いつ見てもそのとんがり帽子は魔女にしか見えない。


「朱音ちゃん、安心してね、ベベルが、ほかの女に手出したらあたしがぶっ殺すから。あ、あと、襲われても大丈夫なように朱音ちゃんに物理バリアの魔術を構築しておいてあげるわね。」

「おい、アイリス!」


 と、ベベルゼルドの突っ込みでどっと笑いが起きる。なんて平和な世界なのか。ずっと、暗い大迷宮の中で、ひたすら孤独にいたから、こんな大勢で笑いあうなんて忘れてしまっていたのだろう。こうやって笑いあうのも、自分が転生して以来かもしれない。


「タツヤさん、霞さんはこれからどうするんですか?」


 セイイチが俺たちを気遣ってか、話をふってくれた。なんとも気遣いのできるイケメンだ。


「いや、俺たちはアースホールに戻ろうと思うんだ。」

「ちょっと待って、『俺たち』って何よ。あたしは、ここから地上に出て、洞窟を通って、ラビリンスに戻ってから、グローリーホール通って、、、とか無理よ。」

「。。。霞、アースホールにはレッドダイヤがあるぞ。」

「うっ、、、それは、、、惜しい。」


 さすが、霞、金目の物には弱い。


「あら、あなた、アースホールに戻るの?」


 と声をかけてくれたのは魔女さんだ。


「ここから戻るのは大変よね。地上からラビリンスに至る洞窟なんて、今は誰も使ってないの。それこそ、大迷宮攻略するのと、同じぐらいの労力を要するわよ。優しいお姉さんがアースホールまで戻してあげるわよ。」

「え?」

「あたしを誰だと思ってるの。高名な魔術師、アイリス=クロニエルよ。空間転移の魔術なんて余裕よ。そこに立ってて。」


 俺も、ここからラビリンスに戻って、アースホールまで戻るのは、正直なところしんどかった。こうして、空間魔術で戻れるのは非常に助かる。


 ただ、その背後でベベルゼルドとセイイチが、


「お姉さんじゃなくて、ババアだろ。」

「おい、ベベル、しーっ!。本当のこと言ったら殺されるぞ。」


 とか言ったせいで、少し会話は中断となる。


「ちょっと待っててね。ちょっと、処刑してくるから。。。」


 といって、魔女はベベルとセイイチをどこか見えないところに連れて行った。

 どこか、遠いところから、「俺は言ってないだろ」とか、悲鳴に近い声が聞こえたのだが目をつむることにする。


「ごめんね、お待たせしたわね。いいわ、あたしが転移させてあげるわよ。」

「それは助かります。」


 魔女は俺たちにむけて手を向ける。そして、集中し、しばし、経過する。すると、魔女の手先が光り始めた。


 ボフッ。


 が、手先から煙を上げたようだった。失敗か?


「あらら。ふふふ。そうね、高度な魔導士であっても、たまには、失敗することもあるのよ。ふふふ。」

「おい、魔女、笑って誤魔化すな。地上では十分が気が足りないからだろ?他の魔術は使えても、空間転移のような高度な魔術になると、お前のような魔女でも魔力が足りないのかもしれないな。」


 とそこへ、連行されたはずのセイイチが戻ってきて冷静に突っ込む。

 というか、セイイチさん、髪の毛から煙が出てるぞ、おい。


 たぶん、ここは地上だから気、つまり魔力が薄くなっているのだろう。それに、この場所は空の上。魔術の発動はより難しくなるのだろう。


 それを聞いて、隣でポカンとアホ面しながら宙を浮かんでいる自称妖精を見つめる。


「な、何よ。」

「おい、アリエル、最近、出番ないだろ。」

「可愛いらしい妖精というのは、いるだけで十分。。。」

「アイリスさん、こいつの他の人間から気を吸い取ってることができるんですけど、利用できないでしょうか?」

「おい、コラ、話を聞くので、、、」

「あら、可愛いペットだと思っていたけれど、そういうことに利用するのね。なら、その羽虫さんから魔力をもらうことにするわ。」


 ふと、そこに頭から黒い煙がもくもくと上がっているベベルが現れた。


「まぁ、そう急ぐなって。せっかくだ。ノヴァリスを案内してやるから、そこで、のんびり気を集めてからでもいいだろう。」


 何だろうか。とてつもなく説得力がないのは気のせいだろうか。

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