135だから、辞められない(ベベルゼルド)
その後、しばらく会話をする者は誰もいねぇ。長い長い沈黙が続いたさ。
みんな、飛空艦の甲板の上に並んで、眼下をただただ見下ろしていたよ。
最初に口を開いたのは俺だ。
「お、おい、嘘だ、ろ。。。あんたら何者だ?。。。」
眼下には、真っ二つになった飛空艦が黒煙もあげながらも地上へと墜落していく。
そして、真っ二つになった空気の層に向けて、激しく風が巻き起こっていた。
さらに、時間差で放たれた真空の層が海面に到達すると、海が割れたんだ。
そして、さらに遅れて海の割れる轟音が響いてくる。。。
わずか一瞬の直後の出来事、気づいたときには、既にその光景になっていた。
一体何をした?
おそらく、その構えからは、その短刀で居合を放ったのであろう。
過去に超高速に居合で真空の層を作り出し、相手を斬る、というやつは見たことがあった。
だが、それはS級の伝説の冒険者だったんだ。
それに、こいつは何だ?敵機まで、数マイルはまだあるんだ。そんな遠方を斬るどころか、こいつは、はるか遠くの地上の海を斬った。
あり得ねぇ。
あり得ねぇ、といえば、連れの女のほうもだ。ここは地上、それも空の上、魔術を発するための気はどうしても弱くなる。
あのラビリンスで最恐と恐れられた魔女ですらあの程度だったんだ。
それが、なんじゃこりゃ、さっきまでの一面の雲海が綺麗に晴れてやがる。
あり得ねぇ、あり得なさすぎる。
「ただの冒険者さ。アースホールを抜けてこられるほどのな。」
「。。。」
ただの冒険者?そんなわけねぇだろ!とは思ったが、『アースホールを抜けてこられるほど』ときた。
なるほどな。
納得しちまったよ。こいつらは、あのグローリーホールを抜けて、そして、アースホールまでを抜けてきた冒険者たち。男は胸にはDランクのプレートをつけているようだが、そんなの関係ねぇな。そんなのラビリンスのギルドが勝手に決めた、ちっぽけなルールだしな。
再びの沈黙。。。その間をおいて、段々面白くなってきた。
「ははは。」
思わずに笑っちまったさ。それに、魔女も同じことを考えたんだろうな。魔女も笑ってやがる。
「ふふふ。」
セイイチ、あいつは笑い声は出さないんだが、あの顔だ、あれは笑っているな。
これまでも、何度も何度も俺たちの人智を超える現象があったんだ。
戦禍を逃れ、みんなで逃げだ洞窟。だが、その洞窟はとんでもなく大きかった。
そして、今では巨大地下迷宮都市ラビリンスとかいう、地下の大都市になっちまった。
それに、地下深くの洞窟には、魔獣とか呼ばれる動物がいれば、提灯虫などと呼ばれる不思議な虫がいた。
さらに深くまで行けば、地上では見たことのないレア鉱石が採掘できた。
最奥まで目指せば、そこには底の知れぬ巨大な大穴グローリーホール、
やっとのことで、その大穴を抜ければ、レッドダイヤの大結晶に、地下にある逆さの城、
重力は歪み、光も歪む、そして、あのアースホールだ。
アースホールを抜けた先は、すべての空間、時間の歪んだ世界で、それを利用すれば転移することすらできた。
そして、久しぶりに地上に出たと思えば、巨大な船が縦横無尽に空を飛び、
空には人工島が宙に浮かんでやがる。
もう、十分すぎる程に俺たちの人智を超える現象があったんだ。
そのたびに俺たちは歓喜し、新たな発見を喜んだんだ。
そして、次はと思えば、とんでもねぇ冒険者たちと不思議な羽の生えたペットが一匹。
「なぁ、お前たち?。。。すげーよな。こんなすげー奴らがいるなんてな!」
おれは、セイイチと、魔女に問いかける。
「ふふ、面白いわね。」
「あぁ、面白い。」
「面白いな。」
やっぱり、みんな同じことを考えてやがる。
「だから、冒険は辞めれねぇ!」
「だから、冒険は辞めれないな。」
「だから、冒険は辞めれないわね。」




