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133少女との約束(ベベルゼルド)

 

 みんな、この風景には驚嘆したようだな。

 すこし、落ち着くと、俺に抱き付いてきた少女は話を続けたさ。


「ねぇ、覚えてますか?あのときの約束。」

「あ?、あ、あぁ、すまん。約束してたな。あそこで会おうってな。」

「そうですね。大量を財宝を持って帰るって約束ですけど、さすがにこの財宝は持って帰れませんね。」

「まぁ、そうだな。」

「だから、あたしから会いに来ちゃいました。」


 まだうっすらと目に涙を浮かべながらも、めっちゃいい笑顔をするじゃねえか。

 約束?そんなもん覚えてるわけねぇだろ。ただ、だいたいどの女性にも「また会おう」的な約束はしていたからな。まぁ、問題ないさ。魔女には「死ね、クズ」とか言われそうだがな。


 と俺は誤魔化しながらも、顎をかく。


「クスッ。ねぇ、ベベル知ってますか?ベベルの癖。」

「癖?」

「ベベルって、嘘をつくと、必ず顎をかくんです。すぐにバレてわかりやすいですよ。」

「ゲホッ!」

「いいんです。あたしって、意地悪ですね。ベベルがいろんな女性に声をかけていたことも、いろんな女性に『また会おう』って約束しているのも、あたしは全部知ってます。ベベルってモテますからね。それを知ったうえで、それでもあたしはベベルに会いたかったんです。これは、あたしの勝手なわがままです。あたしの勝手なわがままですけど、こうして、ベベルと会うことができました。そして、ベベルもあたしの勝手なわがままにも関わらず、あたしのわがままに合わせてくれました。もう、十分すぎるほどあたしは幸せ者です。ベベル、、、ベベルさんって優しすぎですよ。。。ベベルさん、ありがとう。」


 そう言って、少し顔を横に傾けてニコッとする。なんて可愛いのか。天使か。


 ズッドーン!!


「痛ってぇ!!」


 そのとき、思いっきり背中を叩かれた。振り返れば、悪魔の魔女がいた。それに、セイイチと赤髪の女の連れが数人と、宙を飛んでいる虫がいる。


「おい、クズオ!」

「男のクズだな。」

「確かに、クズね。」

「クズ虫なのです。」


 クズオって呼んだのは魔女だろう。だが、セイイチまで。しかも、赤髪の連れと、よくわからん羽の生えた虫にまでクズ虫って言われたわ。

 少女の連れのオッサンだけが、俺の肩をポンポンと叩き、俺に同情してくれているじゃないか。


 まぁ、わかっちゃいたことなんだがな。


「みなさん、いいんですよ。ベベルが最低のクズなのは知ってます。」

「いや、ちょっと待てって。」

「そのうえで、あたしはベベルに会いたかっただけなのですから。あたしは本当にベベルに勇気づけられたんです。ベベルがいなければ、ここまで来ることもできませんでした。つい先ほどだって、アースホールのほとりにベベルの手紙がありました。あの手紙の裏側に普通の人にはわからないように、わざと古代文字で『そんなところでウジウジしてるんじゃねぇ、自ら飛び込め。』って書いてありましたよ。正直、直前まで自分は挫折してました。タツヤさんたちについてきたわけですけど、その技量の差に呆然としていて、挫折していたんです。でも、あの手紙の裏の、その言葉であたしはアースホールへ飛び込む勇気が出てきたんです。これもベベルのおかげです。」


 俺は、頭をかきながらセイイチに話しかける。


「そんなもん書いたっけか?」

「そうだよ、書いただろ。お前が負けたんだから。」

「そうだったけか。あぁ、あれな。そういえば、罰ゲームで書いたな。すまんが、あの手紙はまったく意味はないんだ。ただの罰ゲームだ。古代文字で恥ずかしいことを書いてみるっていうな。」

「ぷっ、ふふふ。そんなもんだとは思ってました。でも、嘘でも、意味はなくても、あたしはあの言葉に動かされたんです。あの一言がなかったら、あたしは、そのまま挫折のしたままでした。たとえ、意図してないものであっても、ベベルのあの言葉にあたしは救われたんです。ベベル、ありがとうございます。」


 彼女は頭を垂れた。


 ドッカーン!!


「痛ってぇ!!」


 魔女が再び俺の背中を思いっきり叩いたんだ。なんか、さっきよりも殺気がこもってるのは気のせいか。


「ちょっと、ベベル!なんて純粋でかわいい子じゃないの。こんな子をたぶらかすなんて、許せいないわね。。。。ねぇ、えっと、朱音ちゃんだっけ?今度ベベルに何かされたら、あたしに言ってね。代わりにぶっ殺すから。」


 と、魔女。発言がおばちゃんだな。まったく、まいったわ。

 だけどな、本当に良くここまで来てくれた。あのグローリーホールを抜けて、アースホールまで抜けて、俺に会いに来てくれた俺の大切なファンだ。こんな女たらしのために、わざわざ来てくれた冒険者、朱音。泣けてくるじゃねぇか。


 そこへセイイチが提案をしてくれた。


「そんなクズ男のことより、せっかくここまで来てくれたんだ。疲れているだろ。とびっきりの食事を用意するから、みんな一緒にどうだい?旅の話を聞かせてくれないかい?」


 クズ男は余計だが、セイイチの料理は凄いんだ。きっと驚くぜ。

 セイイチの案内で、みんな、ぞろぞろと船の居住区の奥へと入っていく。けども、そこで俺はなぜか思いがけず声をかけてしまったんだ。


「朱音、と言ったか、一つ聞いていいか?」


 朱音は怪訝な顔をしながらこちらへ振り向いた。


「これからはどうするつもりだ。」

「特に決めてません。タツヤさんのおかげで来れました。だから、しばらく一緒に行動してお手伝いするつもりです。」


 タツヤっていうのはあの連れのおっさんのことだろうな。


 俺は女たらしのどうしようもない男。だから、俺がこんなことを言ったところで、また、いつものことと思われちまうだろう。


 だけどな、なぜか、俺の口が勝手に動いちまうんだ。

 ま、俺の悪い癖だな。


「なぁ、俺と一緒に来いよ。」

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