130世界はこんなにも青かった。(霞)
あたしはどうやって生まれて、どこで育ったのかもわからない。何者なのかもわからない。
話によれば、あたしは何度も転生を繰り返したらしいけども、過去の記憶なんてな持ち合わせてないの。
ふと、気づいたら、このラビリンスで普通に生活していたのよ。でも、あたしはそれでもよかったのよ。毎日が楽しければね。
でもね、生きるためにはお金が必要なのよ。だから、、、気づけば、金を稼ぐことが生きがいになっていたのかもしれない。お金を稼ぐということに楽しみを見出していたのかもしれない、ってあたしは今、そう思ったの。
あたしは、偶然にも、タツヤと妖精さん出会って、いろいろあったけども、比較的に楽をしながら、こうしてラビリンスの大迷宮の地下深くにまで来ることができた。そして、そこには、レッドダイヤの巨大結晶な結晶でしょ。それはそれで、あたしには大満足だったわよ。こうして、すごい財宝に出会えたんだもん。でも、こんな財宝に大した労力もかけずに出会えたのは、単なる偶然が重なっただけなのかもしれないわね。
生きがいっていうのは人によって違うでしょ。
中には、自分の生きがいを達成するために、人知れずに、自らの人生を、その生きがいのために、捧げた人だっているわけでしょ。
多分、その人は、相当の努力をしたのでしょうね。あたしと違って、たまたま偶然に人生の目標を達成したとは大きく違うのでしょう。
その目標のために、目標を達成できるかどうかもわからないのに、あらゆる困難を乗り越えて、我慢して、我慢して、我慢して、我慢をし続けて、、、そうして、ついに目標を達成することが出来たというならば、どれだけ嬉しいことでしょうね。
だって、今、目の前にいる女の子は、あたしと違って、ある人にもう一度会うことを生きがいとしていた。人生の目標としていた。
そして、その目的のため、再び会えるかどうかもわからない、でも、可能性がゼロではないならばと、自ら進んで超絶ブラック企業として有名な会社に入社したことを、あたしは知ってします。
日々のパワハラ、720時間の不眠不休の連続勤務、毎日、上司からの罵倒、部下からの罵倒、ケガしたときですら休むことすら許されず、気づけば、書類が天井を突き抜けたことだってあった、って聞きました。
それだけ、過酷な環境にもかかわらず、彼女は決して逃げなかった。
そこに可能性があるならばと、そのわず可能性を願い、ひたすらに耐えた。
再び会える可能性なんて、わずか、まるで遥か遠くから針の穴に糸を通すことができるかどうかぐらいのほんのわずかな確率でしょう。
でも、運命は彼女に味方したんです。
彼女はあたしたちに出会い、こうして、ラビリンスの地下深く、そして、アースホールという摩訶不思議な穴を抜け、彼女の想いで、この世界まで来ることが出来たのです。
あたしは知ってます。彼女が、彼女の望む人に会うために必死であったこと。そのために、あの過酷な環境を必死に、必死に、必死に耐え抜いたこと。
彼女は、あたしとは違います。あたしと違って、彼女は偶然に目標を得たのでありません。
彼女は、自らの努力によって、自らの力で、それを得たのです。
だから、、、、だから、、、これほどまでに、何かの目的を達成しようと必死に、必死に必死にもがいて、ついに達成した人を目の当たりにすると、これほどまでに感動するのでしょう。
さっきから、涙が止まりません。
彼女は、想いを寄せた人に会いたいと切に願った。
彼女は、願いを叶えるために、行動した。それで決して会えると決まったわけではない。
だけど、会える確率はゼロじゃない。
だから、彼女は努力した。必死に必死に努力した。会えない可能性だってある。むしろ会えない可能性のほうが遥かに大きい。
でも、その努力は決して裏切らなかった。偶然にもあたしたちと出会い、行動し、ついに、、、、彼女は願いを叶えたのです。
「ベベル、、、、ぅヴェル、、、ぅヴぇる、、、」
もはや、声になってません。だけど、その声は、間違いなく、彼女の想い。
そして、すぐ側にいるガタイのいい、長髪の男は、そっと彼女を抱きしめてあげるのです。
そのすぐわきに見知らぬ剣士と、如何にも魔女という感じのとんがり帽子を被った女性がいます。その人たちも、今はこの二人を温かく見守ります。
彼女は見事に、彼女の夢を達成したのです。叶うかどうか、わからないかもしれないその願い、その願いは彼女は、彼女自身の手で、自らその願いを実現させたのです。
それは彼女の夢、彼女の夢が叶った瞬間。それは彼女自身の問題。
あたしには直接は関係のないこと。
でも、なんででしょう?あたしまでもが嬉し涙を流さずにはいられません。
良かった。本当に良かった。
「ぐすん、、、ねぇ、ベベル、グローリーホールの地下に財宝はありましたね。」
「財宝?レッドダイヤのことか?あぁ、あったさ。すっごい財宝があったさ。けどな、その程度のちっぽけな財宝で満足しちまったのか?」
その情報を聞いた瞬間、あたしは二人の間に身を乗り出すのです。
「えっ、他にもっとすごい財宝があんの?」
「おい、霞!邪魔すんな。」
とタツヤに止められたけども。
「見ろよ。この風景を。ラビリンスも広かった。だけどな、地上はこんなにも広いんだ。この一面の青い空、そして、眼下の青い海に緑と黄土色の大地。これだけでも十分な財宝だ。だがよ、見ろよ。この上をよ。」
ベベルは指をある空の一点に向けて差します。
「そうね。だから冒険っていうのは辞めらないのよね。」
「まったくびっくりだ。。。」
と魔女と剣士セイイチがこぼす。
ベベルの指さした先には、入道雲。今いる高さよりも遥か高くまで雲が発達している。
けども、いたって普通。ただの入道雲。朱音ちゃんも首をかしげています。
「えっ、、、、入道雲??」
「違うわよ。よ~く見なさいな。」
と魔女は指摘する。
よく見ると、その入道雲の影に隠れて、何か影が見える。
うん?影?
いや、、、、あれは?えっ、そんな?
そのとき、その場にいたあたしも、タツヤも、朱音ちゃんも、思わず同じように叫んだのよ。
「島だ!」「島じゃない!」「え、島!」
そう、小さな島が入道雲の陰に隠れて浮いたのです。
「な?どうだ。冒険ってのは面白いだろ!だから、冒険は辞められないんだ。」
その飛空艦から見える風景には、その入道雲に見え隠れする空を飛ぶ島を背景にしながらも、青い空はどこまでも続き、遥か彼方に白い雲が浮かんでいます。
どこまでも続く青い空、透き通るほどの青い海、どこまでも青い青い風景。。。
不思議ですね。あたしは気づいたらラビリンスにいました。
地上の世界なんて知らないはず。なのに、なぜかこの世界がどことなく懐かしい気がします。




