129その先へ…(朱音)
一面の青い世界、それがどこかはよくわかりません。ただ、その中に一隻の船?でしょうかね、それが見えたのです。
船、、、昔、人が地上にいたころに、海をという一面が水の世界を移動するための道具であったことは本で知っています。ですが、あたしが本で見たのとは少し違うようで、いくつもの巨大なプロベラがついてるようです。
ラビリンスで生まれ育ったあたしには実物の船を見たことがありません。だから、それが本当に船なのかを確証する手段はないのです。
ただ、脳裏に映る視界は、徐々にその船へと近づいていきます。
そして、甲板でしょうか。そこに複数人の人がいるのが見て取れます。
一体誰でしょうか。。。。あっ、その一人は女性です。いかにもというほどの、とんがり帽子を被ったまるで、、、、魔女。。。。って、え、まさか、、、、
もう一人の男は、剣を持った男、どこかで見たことがあります。
そして、となれば、、、もう一人は、、、、
ドクン!
その瞬間だけで大きく心臓が波打ちました。
だけど、わからない。後ろ姿は、あの人に似ている。だけど、振り返ってくれないので、あの人かどうかがわからない。。。。
でも、でも、ですよ。
どう見ても、魔女に、多分、あのもう一人の優男はセイイチです。となれば、、、、
あたしの胸の高まりは大いに昂ぶります。
行きたい、、、あの場所へと行きたい!そう、その先の世界へと。
あたしは強くそう望みます。そして、そこへ行きたいという想いが手を伸ばし、その白い球体の奥深くへと手をかざすのです。
―――
視界が明るくなると、そこは真っ青な世界でした。
上も下も右も左も、、、ぜ~んぶ真っ青な世界。まるで、先ほど、脳裏に見えた風景と同じ。。。いや、おそらくはその風景そのものなのかもしれません。
「ねぇ、ここはどこ?」
とあたしは後ろにいたはずのタツヤたちに話しかけたはず。。。でした。だけど、なにしろ、あの強烈な睡魔です。互いにロープで体を結んでいるので、バラバラにはなっていませんが、みんな熟睡です。
けど、タツヤさんだけは、なんと起きてくれたようです。
「う、うん、ここは?うん?海?空?」
タツヤさんは、まだ寝ぼけているようです。そして、あたしは霞さんの顔をトントンと顔を叩きます。
「ほえ??」
霞さんも、まだ、寝ぼけているようですが、意識はあるようですね。次に、グルグル巻きになっていると妖精さんです。
くかぁー。
こちらは霞さんと同じく、よだれをもろに垂らしながら完全に寝入ってます。あたしは、可愛い妖精さんの顔をトントン、と顔を叩きますが、起きる気配がまったくありません。
ふと、そこへタツヤさん、
バシン!!
と、思いっきり妖精さんを叩きました。
「ほえ??」
「虫はこうでもしないと起きないんだ。」
。。。
少しドン引きしましたが、皆さん、ちゃんと起きてくれたようです。
「地上の世界だな。。。」
「そうね、久しぶりの地上ね。何年ぶりかしら、って、あたしたち、空に浮いてない?」
「あたしは魔術は使ってないのです。」
「えっ。これが。。。」
あたしは、地上というものを知りません。ラビリンスで生まれ、ラビリンスで育った。だから、初めて見た地上は美しかった。
真っ青な世界ですが、おそらくはこれが空と海というものなのでしょう。写真で見たことがあります。よく見れば、水平一直線の境界線が見えます。おそらく、それが空と海とをわける境界線なのでしょうか。
頭上には、白く輝く球体のようなものがあり、そこから熱さを感じます。これが太陽と呼ばれれているものでしょう。直視できないほどまぶしくて、思わずまぶたを半分閉じてしまいます。
多分、だけど、きっとこれが先ほどまでに脳裏に浮かんだ世界なのでしょう。だとすれば、、、この世界のどこかに、、、、。
その眼下、青い世界の中にいくつかの点となっている物体が見えます。
どうやら、理屈はよくわかりませんが、空の上を浮いているようです。あたしがその点のような物体に近づきたいと思えば、近づくことが出来るようです。
あたしたちはそこへと向けて近づくと、それが点ではなくて、人工的な物であることが徐々にわかってきます。
「ねぇ、あれはなんでしょう?」
「俺も初めて見た。ラビリンスに移住する前はこんなもんなんてなかった。」
そこにあったもの。それは船でした。
でも、海に浮かんでいる船ならあたしでも写真で見たことがあるけど、この船はそうじゃなかったのです。
無数のプロペラをつけて空を自由に飛び回る船。
いうならば、巨大なヘリが無数についた巨大な船型のヘリコプター。つまりは、————飛空艇。
いや、この船をさらによく見ると、大砲やレーダなどという武器や近代装置まで装備されています。
言うならば――――飛空艦。
何がどうなってるのか、よくわからないです。。。
でも、多分がこれが先ほど脳裏に浮かんだ世界と同じ世界なのでしょう。でも、だとすれば、きっとあの船に、あの人がいるに違いありません。
「ねぇ、行きましょう!あの船に。」
あたしは願いました。
そう願った途端に、あたしたちはその船を目がけて急降下するのです。
風があたしの髪を流れていきます。風が耳元をすり抜け、髪が空中で舞い上がります。
目の前の船は段々と大きくなり、まるで手を伸ばせば届きそうな距離に感じられていきます。——その瞬間、あたしの心は躍り、体は自由に空を駆けるのです。
だって、私の願いが叶うまで、あと少しです。ここで止まってなんていられませんので。




