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128アースホール再び(朱音)

 

 グローリーホールを下ったときと同じように、今はあたしたちは、妖精さんの作った透明な膜に包まれて、ついにアースホールを下っていきます。


 グローリーホールとは違うのは足元の風景、グローリーホールでは足元は何も見えない暗闇、だけど、このアースホールでは、まわりは真っ暗闇であっても足元でうっすらと虹色に染まった空間が揺らいでいます。

 そして、周りの雑音がありません。


「おい。これ見るか?」

「あ、ありがとうございます。」


 そう言って、タツヤさんが手渡してくれたのは高度計でした。

 見れば盤面の針がすごいスピードで逆回転し、数字がどんどんと低下しています。今の数値は-11万mを示しています。


「すごいです。ドンドン数値が低くなっています。」

「当たり前なのです。ほぼ自由落下しているのです。」

「おい、アリエル、殺す気か!」「アリエルちゃん、ちょっと待って!」

「でも、まぁ、大丈夫なのです。そんな死にそうになるような雰囲気はなさそうです。」

「おい、虫が。雰囲気で俺たちを殺すな。」

「でも、自由落下しているには不思議ですね。そんな落ちている感覚がないです。」

「たぶん、あれじゃないか。周りが真っ暗だから、落ちている感覚がなくなっているとか。」

 。。。



 最初は、そんな他愛のないことを話していました。

 でも、ふと、気づけば、いつの間にか、会話もなくなり、ただひたすらに膜に包まれてこの大穴をさらに奥へと進んで行きます。


 そして、今、タツヤから渡された高度計はついに深度500万mを超えています。


「これが地下500万m。。。」


 ふと、周りを見まわします。

 もう穴に飛び込んでそれなりの時間が経過したと思います。穴に飛び込んだこんだときには、真っ暗ではるか先に虹色に染まった空間がみえてました。

 でも、今は、真っ暗ではなく、黄、赤、青、紫、緑、とゆるやかに色が変化していくのです。

 美しく、まるで、ここが地下であることを忘れさせてくれます。


 周囲は何もない空間で、ただ、周囲の色だけがゆったりと華麗に変化する美しい空間。まるで時間を過ぎていくのを忘れるほどに、うっとり見蕩れさせられてしまいます。


 あたしは、他の人たちを見渡します。他のみんなもこの美しい空間に見蕩れてしまっているのか、ただ、口をポカンと開けながらも、ただ、時間が過ぎるのをまち、そのままアースホールのさらに深部へと進めていくのです。

 まるで、何かの催眠にかかったかのように、うっとりと、意識が遠のいて。。。ダメ!


 あたしは、ベベルに会う。そのために、あたしはここまで来た。妖精さんはすでに寝落ちしているようですが、あたしは意地でも意識を保ちます。


 そして、どれだけの時間が経過したのでしょうか。


 ふと気づけば、妖精さんも霞さんもタツヤさんも寝落ちしている。。。意識を保っているのは自分だけ。

 妖精さんが作ってくれた透明な膜もすでに消失していて自由落下しています。

 幸いでしょうか、ここへ飛び込む前にタツヤさんが互いを縄で結んでくれたおかげでバラバラになるのは避けられているようです。


 高度計を見ます。


「うえっ。」


 タツヤさんが渡してくれ高度計を見ようとしたのですが、腕がまるで骨折したかのように、ぐにゃりと曲がって見えたのです。

 びっくりしました。でも、すぐに気づきましたよ。

 あたしは両手を自分の顔に向けてみますが、どうも自分の腕はなくて空間が歪んで見えています。

 タツヤさんが、前に教えてくれましたが、地下へ行くほど重力が強く、光が曲がって見えるのだとか。


 そんな状況で改めて高度計を見ますが、すでに1200万m、凄いことになってます。そして、針が逆方向へと高速で逆回転を続けています。

 あれ?そういえば、地球の直径って、、、これもタツヤさんに前に教えてもらいました。このアースホールは深さは、地球の直径よりも深いとか、意味の分からんことになっているのだとか。

 そんなことを考えているうちに、もうすでに高度計の示す値は地球の直径の1270万m超えています。


 これが、この風景が、地球の直径よりも深い場所。

 空間がねじれて左右上下もわからない、そして、色とりどりの変化に富んだ美しい場所。


 そして、強烈な眠気。意識を保てないほどの眠気。

 でも、あたしは耐えます。720時間不眠不休で働いたことはありますが、それよりもはるかに強烈な眠気。

 瞼が今にも、閉じそうになる。

 でも、あたしは、ベベルに会う!!


 閉じそうになる瞼をカッと見開き耐えるのです。


 そして、どれだけ時間が経過したことでしょうか。

 閉じそうになる瞼と何度格闘したことでしょう。

 失いそうになる意識をどれだけ昂らせたことでしょう。


 そして、はっ、と、ふと気づいたのです。

 周りの様子が今までと違う。漆黒の闇、何も見えない。でも、縄はつながっていて、見事に熟睡しているけども、タツヤさんも、霞さんも、妖精さんもいます。

 ここは、、、どこ?


 あたしは、腰に巻いた縄を手繰り寄せ、妖精さんを叩き起こします。


「むにゃ、むにゃ、もっと、もっと、巻いて。。。むにゃむにゃ。」


 う、うん。なんか、ダメそうなので、霞さんとタツヤさんを手繰り寄せて叩き起こします。


「むにゃ~、むにゃ~、おかね~。。。。」

「グガーグガー。」


 なんか、全くダメです。さて、どうしたものかと、そのまましばらく暗闇の中を進んでいきます。

 なんとなくですが、周囲は暗闇ですけども、その遥か先に、白く光る球のようなものが見えては通過しているような気がするんですよね。いったいなんでしょうか、と考えながらも、ぼーっとしています。

 そうしているうちに、頭の中が空っぽになるのです。

 もう、どうでもいいなような。。。でも、ダメ、絶対!


 だって、あたしはベベルに会いたい!そのために、ここまで来たのです。


 そう思ったときに、周囲で白く光る小さな球、その中の一つが徐々にこちらへとやってくるようです。

 その球に、そっと手を近づけると、脳裏にある風景が描かれます。

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