122再びアースホールへ(タツヤ)
完全に忘れていたが、あいつは自称最高血種というバンパイヤだった。
一応は、ああいう怨念とか対処できるらしいが、朱音の血を吸ったとはいえ、本調子までには回復しなかったらしい。というのが奴の言い訳らしいが、、、本当かどうかは知らんが、もう、終わったこと、別にどうでもいい。
そのあと、俺たちは、アイギスの城を出発した。玉座に座っていたアイギスだが、あんまりこちらを直視してこなかった。そりゃ、そうだろうな。あんだけ、啖呵切って、格好までつけて、倒せませんでした、とか、プー、思わず、思い出し笑いをしてしまう。
さて、アイギスの城を出てからしばらく、この地下を進んでいく。
次第に視界が広がり、無数のレッドダイヤの巨大結晶が散りばめられた大迷宮が視界に入ってくる。そう、これこそが、深層10万mの世界だ。
「ちょ、ちょっと、この光景は。。。前も見たけれど、これは凄いことよ。このダイヤを持って帰れたら、もう一生働かないで暮らせるわね。」
「。。。」
霞は隣にいる朱音に話しかけたようだが、元気がないようで反応がない。
あの黒い靄に相当やられたのだろうか。少し心配だが。。。
一方、霞は対照的に元気だ。そりゃ、この光景をみれば、はしゃぎたくなるわな。といっても、俺たちも来るのは2回目なんだがな。
まぁ、正直なところ、俺はあまり宝には興味ない。霞がそこに行きたければ、一緒にそこへ行く。それだけのこと。
だが、過去に何度も転生していた中で、宝というものに出会うことは何度もあったが、これほど豪華な宝に出会ったのも、これが初めてだろう。
「見て。断崖よ。」
あぁ、そうだ。確かに前回、ここに来たときも、この断崖があった。断崖の淵に立ち見下ろせば、この地下の世界がどれだけ広いかわかる。光苔の照らす薄い明かりが見事に綺麗な陰影をつけ、複雑な地形の広がりと、どこまでも続くレッドダイヤの結晶が見て取れる。
そして、その奥。真っ黒に口を広げているものそれがアースホールだ。
「ねぇ、朱音ちゃん。あそこよ。あの奥の黒くてぽっかり開いている穴がアースホール。そして、その脇にテントっぽいものが見えるでしょ。そこであたしたちは、手紙を見つけたのよ。」
「。。。」
朱音は反応がないわけでないが、反応が遅い。朱音は、目を細める。せっかくのキレイな顔立ちだというのに、目を細めるせいで皺が寄っている。もったいない。
きっと、俺と同じで近眼に違いない。
「、、、うん、確かに?テント?がありますね。」
うん、こいつ、絶対に見えてないけど、適当に見えたって言ってるな。
「でも、ここからだと、随分と対岸まで距離がありますね。まだまだ、遠そうです。」
そうなんだ。ここから先が長い。距離があるだけでなく、平坦な場所なんてどこにもない。
前回は、アリエルの魔術で透明な膜で包んでもらって飛ぼうとしたが、ここは重力のかかる方向が場所によってめちゃくちゃ。おかげさまで、三半規管が狂いそうになって、何度吐きそうになったことか。
当然作戦中止、かなりの時間を要して、ひたすら歩き続けた。
ふとこそに、羽をバタつかせて宙を飛んでいるアリエルが現れる。
「だったら飛べばいいじゃない。」
と、アリエルは羽をバタつかせ、宙を飛びながらに言う。
俺は目を細めて訝しげにアリエルを見つめる。このシチュエーション、デジャブなんかじゃない。前回とまったく同じだ。嫌な予感しかしない。
「あたしの魔術ならば、みんなを飛ばせるのです。」
ほら、きた。また、あの地獄を味わうなんてごめんだ。
が、しかし、
「。。。なるほど、わかりました。」
と、朱音は相変わらず、元気はなさそうではあるが、言ってしまった。
俺も、霞もお互いを見ながら青ざめる。
「いや、ちょっと待て。わかってないだろ。」
「あたしはこれでも元RGF社の社員です。そう、一応は、、、返事は『Yes , sir』意外に認めれてないのです。。。まぁ、この程度なんとかなりますよ。」
朱音はあまり元気がなさそうだが、無理くり笑顔を作って、こちらを振り向いてくれた。
だが、そこじゃないんだ。
「いやいやいやいや、絶対わかってないだろ。ここは重力の向きが変わって、スピード出してここを飛ぶと、ジェットスターに乗ってるかのようになって、三半規管がやばいんだ。」
「。。。そのぐらいは問題ないでしょう。出来る、出来ないは関係ありません。RGF社の社員であれば、、、そう、RGF社の社員であれば、、、『やる』か『やる』かの違いしかないのです。」
「いやいやいやいや、『やる』か『やる』って『やる』しか選択肢がないだろ。」
「アリエルさん、、、行きましょう。。。。」
朱音はやはり、元気がなさそうだ。
だが、元気がないなら、お願いだから、『Yes』なんて言うな。
「はい、なのです!」
といってアリエルは俺たちの周りに透明な膜で包むと、ふわりと地面が足が離れてそのまま、対岸へと一直線に進んでいくのだ。




